番じゃない僕らの恋~俺の唯一だった君~

伊織

文字の大きさ
39 / 50
最終章

6 嘘の向こうにあるもの

 何で俺に嘘をついたのか、ずっと考えていた。

 筆箱のことは、俺に怒られると思った?
 いや、陽はそんなことで、嘘をつく奴じゃない。
 ……もしかして、俺が知ったら“困ること”があったんじゃないか?

 忘れ物をよくしていた、というのも気になった。
 陽は勉強は得意じゃないけど、忘れ物はあまりしない。
 そういうところは、しっかりしていた。

 忘れたんじゃなくて、無くした?
 誰かに、隠された…とか。いや、まさかな。

 でも、陽を良く思ってない女子やオメガが同じクラスにいたことも確かだ。
 でも、何の証拠もない。

 もっとよく思い出さないと…。
 休む直前、何があったか…。

 そういえば、夜道で突き飛ばされたことはあったけど、あれは関係ないよな?

 体操服を洗ってたこともあったけど、それは泥を落とすためって言ってたし。
 でも、その転んだってのが、誰かに転ばされてたとしたら…?
 これは、同じクラスの青木と福田に聞いてみよう。

 他にも、何かあったかな…?

 でも、どれも「俺に会いたくない」理由には繋がらない気がした。
 もしかして、本当に俺のことが嫌いになっただけなんだろうか?

 でもそう考えるのは、悲しすぎてやめた。
 今は陽に何があったのか、探ってみよう。
 その中で、俺への気持ちの変化も分かるかもしれない、多分。

「あぁ、1回派手に転んだことあったな」

 俺は再び陽のクラスに来ていた。
 福田が、陽が転んだ時のことを覚えていた。

「なんていうか、転んだ陽のことを、女子たちが馬鹿にするように笑ってたんだよな。
 なんかそれ見て、女子こわって思ったの覚えてる」

「あったな、そんなこと」

「それ、わざと転ばされたってこと無いよな?」

「うーん、そこまでよく見てたわけじゃないからな…」

「俺も覚えてないな…。ごめんな、御門」

「いや、いいんだ。ちなみに、陽は練習でよく転んでた?」

「いや、その1回くらいじゃないか?なぁ、青木?」

「そうだな。それに陽はそん時怪我してたから、ほとんど見学だったしな」

「そっか、ありがとう」

 おかしい。陽の言ってたことと少し違う。
 でも、福田と青木の記憶も曖昧だから、本当に違うのかは、まだ分からない。
 それと、もしわざと転ばされたとしても、証拠がない。

 俺は、陽が体操服を洗っていた水道の所に来ていた。
 ここで、陽が体操服を洗ってたのを、2回見かけた。
 2回目は派手に転んでないから、青木たちは気付かなかっただけなのか?

 体操服か…。
 そういえば、荷物からアルファの匂いがした時も、体操服の話をしたな。
 あの時、陽は何て言ってたんだっけ…。

「アルファにプレゼントはもらって無い」
「参加できる練習には、参加してる」

 …あれ?今の、陽のクラスにはアルファはいないよな?

 じゃあ、どこでアルファの匂いなんて付いたんだ?
 あれは、伊吹のフェロモンではなかったし…。
 まさか、アルファに襲われてないよな?

 いや、でも陽自身からアルファの匂いはしなかったし…。
 それとも、本当はアルファから何かもらってて、それも嘘をついた?
 やっぱり、分からない。あの時すぐに荷物を確認すればよかった…。

 結局、分からないまま数日が過ぎた。

 ****

 登校中、学校の近くに来ると桜庭の姿があった。

 友人達と一緒で、皆オメガのようだった。
 何か分かるかもしれない。
 そう思って、俺は近づいた。

「陽のおかしかったこと? 別に…」

「何でも良いんだ」

「朝倉君て、たまにアルファの匂いさせてたよね?」

「確かにしてた! 御門君の匂いとはちょっと違うかも…」

「朝倉君、御門くんと付き合ってるのかなと思ってたけど、違ったのかなって。
 ごめんね、2人は幼なじみだよね」

「うん…、そうだね」

 まだ陽は俺と恋人だと周りに言ってないと、そう言ってたので、正直に答えられなかった。

「じゃあ、そのアルファの恋人と何かあったんじゃないのかな?」

「そっか…」

 他のアルファと会っていたのか?匂いが付くほどの距離で?
 自分以外のアルファの存在に胸がざわつく。
 でも…と、今までの陽を思い出す。

 陽は俺だけと言ってくれたじゃないか。
 陽を信じたい…。

「陽って、怪我してたけど、体育祭の練習には参加してたんだよね?」

「ううん、してないよ。ずっと見学してた」

「1度も?」

「怪我してからは、そうだね。僕、体育祭の実行委員だったから。
 その、…練習に参加しない人は、気になっちゃって…。
 朝倉君は怪我もあったから、仕方ないけど…」

「そうだったんだ。教えてくれてありがとう」

 陽の嘘を、また見つけた。
「大丈夫そうなのは、参加してる」
 そう言ったのは、どうしてだったんだろう?

 体操服を持ち帰るため?
 体操服を使ってないなら、わざわざ持ち帰る必要は無いよな?

 でも、体操服は陽の手元にあるし、今更、確認はできない。
 陽は、休む前日も体操服を洗ってたよな?

 体育祭の練習じゃない。
 参加してないから汚れが付くはずはない。
 でも、洗ってた。あの時の体操服って、泥…ついてたか?

 誰かに汚されたんだろう、ということは分かった。
 そして、体操服の入った荷物からしたアルファの匂い。
 あの時、陽は手を怪我してたから、洗いたくても洗えなかったのかもしれない。

 陽を良く思ってなかった女子やオメガの仕業なのか?
 それとも、陽に好意を持った変態アルファ?

 俺は、もう一度、陽のクラスに行くことにした。
感想 0

あなたにおすすめの小説

庶子のオメガ令息、嫁ぎ先で溺愛されています。悪い噂はあてになりません。

こたま
BL
男爵家の庶子として産まれたサシャ。母と二人粗末な離れで暮らしていた。男爵が賭けと散財で作った借金がかさみ、帳消しにするために娘かオメガのサシャを嫁に出すことになった。相手は北の辺境伯子息。顔に痣があり鉄仮面の戦争狂と噂の人物であったが。嫁いだ先には噂と全く異なる美丈夫で優しく勇敢なアルファ令息がいた。溺愛され、周囲にも大事にされて幸せを掴むハッピーエンドオメガバースBLです。間違いのご指摘を頂き修正しました。ありがとうございました。

オメガ大学生、溺愛アルファ社長に囲い込まれました

こたま
BL
あっ!脇道から出てきたハイヤーが僕の自転車の前輪にぶつかり、転倒してしまった。ハイヤーの後部座席に乗っていたのは若いアルファの社長である東条秀之だった。大学生の木村千尋は病院の特別室に入院し怪我の治療を受けた。退院の時期になったらなぜか自宅ではなく社長宅でお世話になることに。溺愛アルファ×可愛いオメガのハッピーエンドBLです。読んで頂きありがとうございます。今後随時追加更新するかもしれません。

繋ぎの婚約を契約通り解消しようとしたら、王宮に溺愛軟禁されました

こたま
BL
エレンは子爵家のオメガ令息として産まれた。年上のアルファの王子殿下と年齢が釣り合うオメガ令息が少なく、他国との縁組も纏まらないため家格は低いが繋ぎとして一応婚約をしている。王子のことは兄のように慕っており、初恋の人ではあるけれど、契約終了時期か王子に想い人が現れた時には解消されるものと考えていた。ところが婚約解消時期の直前に王子宮に軟禁された。結婚を承諾するまでここから出さないと王子から溢れるほどの愛を与えられる。ハッピーエンドオメガバースBLです。

学内一のイケメンアルファとグループワークで一緒になったら溺愛されて嫁認定されました

こたま
BL
大学生の大野夏樹(なつき)は無自覚可愛い系オメガである。最近流行りのアクティブラーニング型講義でランダムに組まされたグループワーク。学内一のイケメンで優良物件と有名なアルファの金沢颯介(そうすけ)と一緒のグループになったら…。アルファ×オメガの溺愛BLです。

のほほんオメガは、同期アルファの執着に気付いていませんでした

こたま
BL
オメガの品川拓海(しながわ たくみ)は、現在祖母宅で祖母と飼い猫とのほほんと暮らしている社会人のオメガだ。雇用機会均等法以来門戸の開かれたオメガ枠で某企業に就職している。同期のアルファで営業の高輪響矢(たかなわ きょうや)とは彼の営業サポートとして共に働いている。同期社会人同士のオメガバース、ハッピーエンドです。両片想い、後両想い。攻の愛が重めです。番外編をちょこちょこ追加しています。

運命の番と出会ったら…幸運な再会でした

こたま
BL
春川茜(あかね)はオメガ男子だ。ベータの姉、藍(あい)と帰国子女として仲良く大学に通っている。茜は、父の赴任で米国滞在中に診断不能の不全オメガと言われていた。二次性徴も発情期も正常に訪れ、血液検査ではホルモンもフェロモンも正常に反応している。しかしどんなアルファに対しても魅力を感じず、嫌悪感を覚える。そしてアルファもまた茜をどこか近寄りがたい誰かの物であるように知覚するのだ。一人で生きていこうと努力をしていた茜に訪れた出会いとは。同じ年のアルファ×オメガ。ハッピーエンドBLです。

貧乏子爵のオメガ令息は、王子妃候補になりたくない

こたま
BL
山あいの田舎で、子爵とは名ばかりの殆ど農家な仲良し一家で育ったラリー。男オメガで貧乏子爵。このまま実家で生きていくつもりであったが。王から未婚の貴族オメガにはすべからく王子妃候補の選定のため王宮に集うようお達しが出た。行きたくないしお金も無い。辞退するよう手紙を書いたのに、近くに遠征している騎士団が帰る時、迎えに行って一緒に連れていくと連絡があった。断れないの?高貴なお嬢様にイジメられない?不安だらけのラリーを迎えに来たのは美丈夫な騎士のニールだった。

大好きな婚約者を僕から自由にしてあげようと思った

こたま
BL
オメガの岡山智晴(ちはる)には婚約者がいる。祖父が友人同士であるアルファの香川大輝(だいき)だ。格好良くて優しい大輝には祖父同士が勝手に決めた相手より、自らで選んだ人と幸せになって欲しい。自分との婚約から解放して自由にしてあげようと思ったのだが…。ハッピーエンドオメガバースBLです。最後におじいさまの番外編を追加しました。