4 / 65
第一章 令嬢だった頃の日々
婚約者とのひと時(2)
しおりを挟む
勤めを果たすという義母との約束から、安易にリグレット家に戻ることも許されない。この婚約を逃す事が有れば、社交界からは追放されてしまう。
亡くなったセレンティアの母は、北方の辺境伯の子女で、王家に連なる血筋。伯爵程度の身分に嫁ぐのは異例の話で、本来なら公爵家にも充分に釣り合う家格。
病弱でさえなければ、相手はすぐに見つかっただろうに、婚約に相応しい年齢を過ぎても見つからず、家柄はかなり劣る伯爵家の父と婚礼を結ぶ事となった。
父は優しい男では有ったが気は弱く、伯爵位としての地位も振るわなかったので、母は手持ちの宝石を手放すしかなく、その事を最後まで恨みながら始祖神の元に旅立った。
リグレット家には侯爵位とその領地が与えられ、自身も将来は公爵夫人となる。
その事に強いプライドを持って、この公爵家で認められなくてはならない。
しかし、同じ第一王女派の派閥同士だと言うのに、何故父はそこまでこの話を止めさせようとしたのだろうか?
セレンティアは何度となく制止され続けた父の必死さと、特別に侯爵位を受けた時の深い諦めの表情を思い起こした。
何をそこまで心配し、公爵家の侍女となる事を不安がって居たのかは最後まで教えて貰えず、それでも公爵家から用意された馬車に乗る時は、涙を流しながら手を振ってくれた。
女学校にさえ通わせて貰えなかった無学の娘が、この国の最高峰に近い公爵家の働き手となる。一年間という期限は在るものの、嫉妬や嫌がらせの類いは多く行われるだろう。
もしかしたら失敗した際には鞭を打たれたり、冷たい水を浴びせられる事も有るかも知れない。
公爵家へ戻る際も愛を囁いてくれるテオルースの心地よい声を耳にしながら、明日への決意と今夜の甘い夢をセレンティアは思い描いた。
一年間公爵家の侍女として勤め上げ、正式な婚約を結び、やがて婚礼を迎えて娘を授かり、将来の女王候補の母と呼ばれる。
頼れるのは背丈の大きめな身体と、良い思い出のない黒髪。財産もなく、家は仮初めの侯爵位で教養も何もない。
手のひらに収められる武器の少なさに、セレンティアは反対し続けていた父の必死な顔を思い出してしまい、少しだけ不安な気持ちを抑えられなくなった。
夕食を終え、夜着を見に纏った所でテオルースがティーセットを手に客間へと入ってきた。
しばらく会えなくなる事と、明日の出発は早朝になるので朝食を一緒になれない非礼を詫びて、それから同じソファーに腰掛けて優しく肩を抱いてくれた。
正式な婚約も済ませていない、仮の間柄では有ったけれど、彼は充分に自分を愛してくれているし、これからの苦難を乗り越えるための証しのような物が、セレンティアは欲しくなった。
「これから君を辱めてしまうけれど、少し時期が早過ぎると君の父君はお怒りになられないかな……?」
「私は、貴方様の者ですわ。何をなさろうとも、咎められる事は有りません。でも、私。挨拶以外の口付けを交わした事もない、知識の少ない娘です。どうかテオルース様、私にご指導なさって……」
現れた侍女達が茶器を片付けていき、テオルースの瞳はセレンティアだけを見つめ続けた。そっと頬に手を当てると深い口付けをされ、口元を淫らにしてから胸元に手を当てがわれた。
まだ幼い胸を震わせると、緊張を解くように首筋や肩へと軽く口付けられていく。
「こんな可憐な君と、毎日逢えないなんて……。早く正式に婚約を結んで、僕の侯爵領に連れて行きたいよ。公爵家は母上のサロンも兼ねているから、侍女服に身を包んだセレンティアの姿は、僕より先に他の貴族達に見られてしまうのが、とても惜しいよ」
「私も、テオルース様のお屋敷で毎日過ごせるようになりたいです。侍女としてのお勤めがアースティ侯爵家だったら、貴方に尽くす事が許されるのに……。その瞳に映るのが私ではなく、他の侍女である事に嫉妬してしまいます」
髪をそっと撫でられてから唇で触れられ、すっかり肌を露わにした乳房の先端を転がされる。強く身体が反応し、秘芯の奥から蜜が溢れ出す。
逞しい腕が産毛を撫で、それから指を這わされながら舌を吸い合う深い口付けを交わした。
「……愛しいセレンティア。君をこのまま屋敷に連れ去って行けない罪は、貴方を思いながら過ごす事で許して欲しい」
行為が終わってもテオルースは優しく抱きとめ、髪を整えて夜着を正してくれる。
ずっと彼と暮らせたらいいのに、と初めての痛みを奥で感じ取りながらも、彼からの深い愛にセレンティアは胸が震えた。
目を覚ました時には、一人だけの自分しか居ない。明日からは行儀見習いも兼ねた侍女としてのセレンティアが始まり、幼かった少女時代とも別れを告げなくてはならない。
帰る事も許されず、気軽に外へ出かける事も出来ない。休みの日が有るのかさえ、教会に祈りを捧げる時間が取れるのかも、何も分からない。
一年後の自分は、婚約者として振る舞えるだけの気品を身につけて居られるだろうか……?
希望や思いを描きながら、令嬢としての時間を終えたセレンティアは深い眠りに就いた。
亡くなったセレンティアの母は、北方の辺境伯の子女で、王家に連なる血筋。伯爵程度の身分に嫁ぐのは異例の話で、本来なら公爵家にも充分に釣り合う家格。
病弱でさえなければ、相手はすぐに見つかっただろうに、婚約に相応しい年齢を過ぎても見つからず、家柄はかなり劣る伯爵家の父と婚礼を結ぶ事となった。
父は優しい男では有ったが気は弱く、伯爵位としての地位も振るわなかったので、母は手持ちの宝石を手放すしかなく、その事を最後まで恨みながら始祖神の元に旅立った。
リグレット家には侯爵位とその領地が与えられ、自身も将来は公爵夫人となる。
その事に強いプライドを持って、この公爵家で認められなくてはならない。
しかし、同じ第一王女派の派閥同士だと言うのに、何故父はそこまでこの話を止めさせようとしたのだろうか?
セレンティアは何度となく制止され続けた父の必死さと、特別に侯爵位を受けた時の深い諦めの表情を思い起こした。
何をそこまで心配し、公爵家の侍女となる事を不安がって居たのかは最後まで教えて貰えず、それでも公爵家から用意された馬車に乗る時は、涙を流しながら手を振ってくれた。
女学校にさえ通わせて貰えなかった無学の娘が、この国の最高峰に近い公爵家の働き手となる。一年間という期限は在るものの、嫉妬や嫌がらせの類いは多く行われるだろう。
もしかしたら失敗した際には鞭を打たれたり、冷たい水を浴びせられる事も有るかも知れない。
公爵家へ戻る際も愛を囁いてくれるテオルースの心地よい声を耳にしながら、明日への決意と今夜の甘い夢をセレンティアは思い描いた。
一年間公爵家の侍女として勤め上げ、正式な婚約を結び、やがて婚礼を迎えて娘を授かり、将来の女王候補の母と呼ばれる。
頼れるのは背丈の大きめな身体と、良い思い出のない黒髪。財産もなく、家は仮初めの侯爵位で教養も何もない。
手のひらに収められる武器の少なさに、セレンティアは反対し続けていた父の必死な顔を思い出してしまい、少しだけ不安な気持ちを抑えられなくなった。
夕食を終え、夜着を見に纏った所でテオルースがティーセットを手に客間へと入ってきた。
しばらく会えなくなる事と、明日の出発は早朝になるので朝食を一緒になれない非礼を詫びて、それから同じソファーに腰掛けて優しく肩を抱いてくれた。
正式な婚約も済ませていない、仮の間柄では有ったけれど、彼は充分に自分を愛してくれているし、これからの苦難を乗り越えるための証しのような物が、セレンティアは欲しくなった。
「これから君を辱めてしまうけれど、少し時期が早過ぎると君の父君はお怒りになられないかな……?」
「私は、貴方様の者ですわ。何をなさろうとも、咎められる事は有りません。でも、私。挨拶以外の口付けを交わした事もない、知識の少ない娘です。どうかテオルース様、私にご指導なさって……」
現れた侍女達が茶器を片付けていき、テオルースの瞳はセレンティアだけを見つめ続けた。そっと頬に手を当てると深い口付けをされ、口元を淫らにしてから胸元に手を当てがわれた。
まだ幼い胸を震わせると、緊張を解くように首筋や肩へと軽く口付けられていく。
「こんな可憐な君と、毎日逢えないなんて……。早く正式に婚約を結んで、僕の侯爵領に連れて行きたいよ。公爵家は母上のサロンも兼ねているから、侍女服に身を包んだセレンティアの姿は、僕より先に他の貴族達に見られてしまうのが、とても惜しいよ」
「私も、テオルース様のお屋敷で毎日過ごせるようになりたいです。侍女としてのお勤めがアースティ侯爵家だったら、貴方に尽くす事が許されるのに……。その瞳に映るのが私ではなく、他の侍女である事に嫉妬してしまいます」
髪をそっと撫でられてから唇で触れられ、すっかり肌を露わにした乳房の先端を転がされる。強く身体が反応し、秘芯の奥から蜜が溢れ出す。
逞しい腕が産毛を撫で、それから指を這わされながら舌を吸い合う深い口付けを交わした。
「……愛しいセレンティア。君をこのまま屋敷に連れ去って行けない罪は、貴方を思いながら過ごす事で許して欲しい」
行為が終わってもテオルースは優しく抱きとめ、髪を整えて夜着を正してくれる。
ずっと彼と暮らせたらいいのに、と初めての痛みを奥で感じ取りながらも、彼からの深い愛にセレンティアは胸が震えた。
目を覚ました時には、一人だけの自分しか居ない。明日からは行儀見習いも兼ねた侍女としてのセレンティアが始まり、幼かった少女時代とも別れを告げなくてはならない。
帰る事も許されず、気軽に外へ出かける事も出来ない。休みの日が有るのかさえ、教会に祈りを捧げる時間が取れるのかも、何も分からない。
一年後の自分は、婚約者として振る舞えるだけの気品を身につけて居られるだろうか……?
希望や思いを描きながら、令嬢としての時間を終えたセレンティアは深い眠りに就いた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる