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第五章 贅を尽くされた部屋
セレンティアの憂鬱(2)
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「ご準備は、整っておいでのようですね」
「ええ、夫人のサロンへ参りましょう。今日は私のお披露目との事ですし、皆さまにお会い出来るのが楽しみです」
差し出された肘に手を添えて、なるべく音を立てないように廊下を歩いていく。
ここに来てからだと、貴族の令嬢として着飾った姿で出歩くのは初めてだったので、セレンティアは胸や肩の重みを強く感じ取った。
「——正直に申し上げますと。今日ここに来るまでの間にセレンティア様がサロンを辞退され、ご実家に戻られるのではと、失礼にも考えてしまいました」
「私が、そんな不義理な娘に見えまして? いえ、そう思われても仕方ないわね……。セレンティア・リグレットは、臆病な令嬢の気分が抜けていないのかもしれないし」
しばらく進んでいくと、公爵家の庭園が姿を見せた。サロンの場所までは知らなかったので、カースティの進むままにセレンティアは向かっていく。
明るい白薔薇の小道を抜け、煉瓦の壁に不自然に取り付けられた取っ手にカースティが手を差し込み、入り口の扉らしい引き戸を開けた。
「…このサロンでは、著名な音楽家や画家を密かに招く事もございますので、普段は入り口の扉も見えないように草木で隠されております」
室内はガラス張りの天井に囲われており、精密な壁細工と目の眩むような美術品に囲われた居室と、いくつかの小部屋が備えられていて、屋敷内とは思えない別の空間に居るようにさえ感じられた。
常駐していた外套預かり係に手荷物を預け、奥の扉を開くと、レイチェル夫人らしき声が聞こえてきた。
既に、公爵家の定期サロンは始まっているようで、隙間からは談笑する夫人たちの姿と、公爵家専属の楽士による演奏が遠くに見えた。
「さて、合図が有るまでは、控えの部屋で待つ事に致しましょう。ご婦人方の談笑を遮らないように、会話の切れ目を待つのも令嬢の仕事ですからね」
「……わかりました」
ドレッサールーム程度の小さな控え室には、幾つかの椅子だけが並んでいた。部屋に入ると給仕係がシャンパンの入ったグラスを台に置き、丁寧なお辞儀をして扉を閉めていく。
今日の役割はエスコート役のため、いつもは立ち姿のカースティ補佐官も椅子に腰掛けたので、セレンティアもそれに習って座り、甘いシャンパンをひと口だけ飲み干した。
「このお披露目をもって、屋敷の者や来賓の皆さまに、セレンティア様が将来の公爵家の女主人としてお認めになられるでしょう。
それは大変な栄誉で有ると共に、重荷を背負わせられる出来事となります。流されるままの侍女の時とは異なり、今度は屋敷の者たちを使って指導しなければなりません。テオルース様以外の者には弱い所を見せず、常に気高く過ごすのです」
「それは、わかっていますわ。でも、どこか不安ななのです…」
カースティ補佐官はセレンティアの髪を優しく撫で、手の甲に口付けて彼女を落ち着かせていく。
「簡単なテストを致しましょう。セレンティア様が快楽に流されないように、気丈なまま振る舞うための最終試験です。この控え室から出た時には、私どもは指導する立場から脱して、セレンティア様が自由に動かせる駒となります。
奥様たち以外に、敬称も必要ございません。貴方が当家の次期クイーンとなられるのですから、気に入らない侍女には鞭を、職務を疎かにした従僕には針を与えられる権限を持つのです。もちろん、それは私やレイン侍女長に対しても同じこと…」
「……ぁ、…くっ、んっ…」
ロングパニエの隙間に、カースティ補佐官の指先が差し込まれた。座った姿勢のままで秘芯は蹂躙され、緊張していたはずの身体が熱くなっていく。
突然の愛撫に声が溢れ出てしまいそうになり、唇をつぐんで必死に抑えたが、何度か吐息が漏れ出てしまった。
流されてはいけない、そう言われたばかりなのに快楽の波に酔わされてしまいそうになる自分が居た。
「ええ、夫人のサロンへ参りましょう。今日は私のお披露目との事ですし、皆さまにお会い出来るのが楽しみです」
差し出された肘に手を添えて、なるべく音を立てないように廊下を歩いていく。
ここに来てからだと、貴族の令嬢として着飾った姿で出歩くのは初めてだったので、セレンティアは胸や肩の重みを強く感じ取った。
「——正直に申し上げますと。今日ここに来るまでの間にセレンティア様がサロンを辞退され、ご実家に戻られるのではと、失礼にも考えてしまいました」
「私が、そんな不義理な娘に見えまして? いえ、そう思われても仕方ないわね……。セレンティア・リグレットは、臆病な令嬢の気分が抜けていないのかもしれないし」
しばらく進んでいくと、公爵家の庭園が姿を見せた。サロンの場所までは知らなかったので、カースティの進むままにセレンティアは向かっていく。
明るい白薔薇の小道を抜け、煉瓦の壁に不自然に取り付けられた取っ手にカースティが手を差し込み、入り口の扉らしい引き戸を開けた。
「…このサロンでは、著名な音楽家や画家を密かに招く事もございますので、普段は入り口の扉も見えないように草木で隠されております」
室内はガラス張りの天井に囲われており、精密な壁細工と目の眩むような美術品に囲われた居室と、いくつかの小部屋が備えられていて、屋敷内とは思えない別の空間に居るようにさえ感じられた。
常駐していた外套預かり係に手荷物を預け、奥の扉を開くと、レイチェル夫人らしき声が聞こえてきた。
既に、公爵家の定期サロンは始まっているようで、隙間からは談笑する夫人たちの姿と、公爵家専属の楽士による演奏が遠くに見えた。
「さて、合図が有るまでは、控えの部屋で待つ事に致しましょう。ご婦人方の談笑を遮らないように、会話の切れ目を待つのも令嬢の仕事ですからね」
「……わかりました」
ドレッサールーム程度の小さな控え室には、幾つかの椅子だけが並んでいた。部屋に入ると給仕係がシャンパンの入ったグラスを台に置き、丁寧なお辞儀をして扉を閉めていく。
今日の役割はエスコート役のため、いつもは立ち姿のカースティ補佐官も椅子に腰掛けたので、セレンティアもそれに習って座り、甘いシャンパンをひと口だけ飲み干した。
「このお披露目をもって、屋敷の者や来賓の皆さまに、セレンティア様が将来の公爵家の女主人としてお認めになられるでしょう。
それは大変な栄誉で有ると共に、重荷を背負わせられる出来事となります。流されるままの侍女の時とは異なり、今度は屋敷の者たちを使って指導しなければなりません。テオルース様以外の者には弱い所を見せず、常に気高く過ごすのです」
「それは、わかっていますわ。でも、どこか不安ななのです…」
カースティ補佐官はセレンティアの髪を優しく撫で、手の甲に口付けて彼女を落ち着かせていく。
「簡単なテストを致しましょう。セレンティア様が快楽に流されないように、気丈なまま振る舞うための最終試験です。この控え室から出た時には、私どもは指導する立場から脱して、セレンティア様が自由に動かせる駒となります。
奥様たち以外に、敬称も必要ございません。貴方が当家の次期クイーンとなられるのですから、気に入らない侍女には鞭を、職務を疎かにした従僕には針を与えられる権限を持つのです。もちろん、それは私やレイン侍女長に対しても同じこと…」
「……ぁ、…くっ、んっ…」
ロングパニエの隙間に、カースティ補佐官の指先が差し込まれた。座った姿勢のままで秘芯は蹂躙され、緊張していたはずの身体が熱くなっていく。
突然の愛撫に声が溢れ出てしまいそうになり、唇をつぐんで必死に抑えたが、何度か吐息が漏れ出てしまった。
流されてはいけない、そう言われたばかりなのに快楽の波に酔わされてしまいそうになる自分が居た。
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