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最終章 貴族院への道
花奴隷との戯れ(3)
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「女王か、その伴侶になれば居城で住まうことになる。そうなれば、公爵家も手出しは出来ないだろうね…。僕たちの元居たロイヤルアゼールが花奴隷を育て始めたきっかけは、居城の従僕に成り代わるため……。この国は、母なる女神とやらが作り出してその子孫が王家の一族と言われている。だったかな…?」
「ええ、始祖神さまが作り出した大地から零れ落ちた者とされているわ」
王家を正当化させるための作り話、とも言われているが。赤い瞳や紫の髪という色を持った少女が何らかの力を秘めて生まれることが有るのは、過去の災害鎮圧などからもよく知られている事実だ。
「君は、この国の王位継承権が少しでも有ると言っていたね……。だったら、君の価値はとても大きな物だ。王女の元に向かわなくても、レイチェル夫人は君を始末したりしない。セレンティア。これはごく一部の者にしか知らされてない事だが、国王の決め方は前国王の意志が尊重される…。もちろん、選定には元老院が関わってくるが、前国王に指名された段階で戴冠式を済ませたのと同じ扱いになる」
「……王の決まり方が、指名制。それでは、カスティア王女は」
現在の国王は高齢で、高い継承権を持つ第一王女のカスティアもそれなりの歳を経ている。それが、いつまでも退位する事なく、玉座が入れ替わらないと言うことは、王の意志で譲位すべきでは無いと判断された…。
「カスティア王女は、女王になりたいのね…。それに、ターニアやレイチェル夫人は協力している」
侍女の不始末を公爵家に任せ、サロンで晒し者にした挙句に爪を剥がして処刑する女王。そんな気狂いに王位を渡せるはずもなく、国王は居城に籠ってしまわれた…?
「……セレンティア。もしも君が、貴族院である程度の地位を持ち、現国王に認められる事が出来れば、……君だって、将来の女王となる可能性がある。
それに、隣国との戦が収まれば第一王子のランベルウィラストンが王位を継ぐ事になるだろうけれど、彼の唯一の娘。エリヴァルイウス姫は子爵家の娘で家格が低く、後ろ盾がない。美しい蜜色の髪をした少女、とは聞いているけどね」
「カスティア王女が女王になれればよし、無理ならエリヴァル姫の代理人として中継ぎに即位して、彼女を傀儡とすればいい…。そして、私も傀儡の候補者。まさかとは思うけれど、隣国との争いって…」
デンドルムは口元を押さえ、次の言葉を告げないように首を振る。大国であるロイヤルアゼールが後ろで隣国と繋がっていたならば、ランベル王子が戦で命を落とすのは保証されたようなものだ。
「この話をしても、セレンティアの決意が曲がる事はないだろうね…。でも、せめてもの贈り物だけはさせてくれ。リーリャ。彼女に覆いを外して顔を見せておあげなさい」
小脇に控えていた花びとがベールを外し、焦げ茶色の髪と瞳を覗かせた。背丈が少し低い事を除けば、セレンティアと眼差しがよく似ていて、髪や肌の色を整えたらそっくりだった。
「君に惹かれたのは、育てていた花ひとのリーリャによく似ていたからでもある…。次の花奴隷として、幼い頃から大切に教育してきたからね。彼女を貴方にあげるよ。王宮で命を奪われそうになった時の影武者として、拷問を受けた際の代理人として…」
花びとのリーリャは優美な会釈をしてから、セレンティアの前に跪いて恭順さを示した。
デンドルムの好意がレイチェル夫人からの指示という事も考えられなくはなかったが、自分の姿形によく似た少女を大切にしてきたのは嬉しかったし、何より心強かった。
王宮に向かった先では、誰一人として自分の味方は居ないだろう。頼れる相手や気持ちを許せる者もいない、漆黒の闇のような所。
ターニアに手紙を送り、助力を請う。レイチェル夫人の傀儡のふりをして淑女として振る舞う。
昨夜の眠気がゆっくりと訪れてきて、セレンティアはデンドルムに抱かれたまま瞳を閉じた。
やっと訪れた、僅かな期待と大きな不安。目まぐるしく動き出す日々に呪いの言葉を投げつけながら、今はただ甘い夢と肌の温かさに酔わされていった。
「ええ、始祖神さまが作り出した大地から零れ落ちた者とされているわ」
王家を正当化させるための作り話、とも言われているが。赤い瞳や紫の髪という色を持った少女が何らかの力を秘めて生まれることが有るのは、過去の災害鎮圧などからもよく知られている事実だ。
「君は、この国の王位継承権が少しでも有ると言っていたね……。だったら、君の価値はとても大きな物だ。王女の元に向かわなくても、レイチェル夫人は君を始末したりしない。セレンティア。これはごく一部の者にしか知らされてない事だが、国王の決め方は前国王の意志が尊重される…。もちろん、選定には元老院が関わってくるが、前国王に指名された段階で戴冠式を済ませたのと同じ扱いになる」
「……王の決まり方が、指名制。それでは、カスティア王女は」
現在の国王は高齢で、高い継承権を持つ第一王女のカスティアもそれなりの歳を経ている。それが、いつまでも退位する事なく、玉座が入れ替わらないと言うことは、王の意志で譲位すべきでは無いと判断された…。
「カスティア王女は、女王になりたいのね…。それに、ターニアやレイチェル夫人は協力している」
侍女の不始末を公爵家に任せ、サロンで晒し者にした挙句に爪を剥がして処刑する女王。そんな気狂いに王位を渡せるはずもなく、国王は居城に籠ってしまわれた…?
「……セレンティア。もしも君が、貴族院である程度の地位を持ち、現国王に認められる事が出来れば、……君だって、将来の女王となる可能性がある。
それに、隣国との戦が収まれば第一王子のランベルウィラストンが王位を継ぐ事になるだろうけれど、彼の唯一の娘。エリヴァルイウス姫は子爵家の娘で家格が低く、後ろ盾がない。美しい蜜色の髪をした少女、とは聞いているけどね」
「カスティア王女が女王になれればよし、無理ならエリヴァル姫の代理人として中継ぎに即位して、彼女を傀儡とすればいい…。そして、私も傀儡の候補者。まさかとは思うけれど、隣国との争いって…」
デンドルムは口元を押さえ、次の言葉を告げないように首を振る。大国であるロイヤルアゼールが後ろで隣国と繋がっていたならば、ランベル王子が戦で命を落とすのは保証されたようなものだ。
「この話をしても、セレンティアの決意が曲がる事はないだろうね…。でも、せめてもの贈り物だけはさせてくれ。リーリャ。彼女に覆いを外して顔を見せておあげなさい」
小脇に控えていた花びとがベールを外し、焦げ茶色の髪と瞳を覗かせた。背丈が少し低い事を除けば、セレンティアと眼差しがよく似ていて、髪や肌の色を整えたらそっくりだった。
「君に惹かれたのは、育てていた花ひとのリーリャによく似ていたからでもある…。次の花奴隷として、幼い頃から大切に教育してきたからね。彼女を貴方にあげるよ。王宮で命を奪われそうになった時の影武者として、拷問を受けた際の代理人として…」
花びとのリーリャは優美な会釈をしてから、セレンティアの前に跪いて恭順さを示した。
デンドルムの好意がレイチェル夫人からの指示という事も考えられなくはなかったが、自分の姿形によく似た少女を大切にしてきたのは嬉しかったし、何より心強かった。
王宮に向かった先では、誰一人として自分の味方は居ないだろう。頼れる相手や気持ちを許せる者もいない、漆黒の闇のような所。
ターニアに手紙を送り、助力を請う。レイチェル夫人の傀儡のふりをして淑女として振る舞う。
昨夜の眠気がゆっくりと訪れてきて、セレンティアはデンドルムに抱かれたまま瞳を閉じた。
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