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タタリガミのミカ
1.センターからの外出
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-----------------------------------------------------------------------------
---回る。
時間は回る、回っていく。
大きい針と小さい針がクルクルと動き、時間が巡って行く。
目を閉じて、空気を吸い込めば十秒経過。ついでに髪もいじっていると、一分経過する。
私の時間は過ぎていく。
ゆっくりと、ゆっくりとだが私は時の流れに巻き込まれる。
止まること無く、揺らぐこと無く、時は流れる。
動かなくなってしまえばいい、動けなくなってしまえばいい。
私は、こんな身体は欲しくなかった。時の狭間に落ち込み、動けなくなってしまえばいい。
私はミカ。ただのミカ……。
そうじゃないのが恨めしい。変えるものなら変えたい。
今の私を、今のすべてを。どうして? 答えは無い、答えをくれる相手もいない。
……誰も、いない。だれも。
-----------------------------------------------------------------------------
「---もう一度、言って」
私の読書時間を福祉センターの偉い人は邪魔をした。
ちょっと不機嫌になりながらも、さっきの言葉を私は聞き返す。
「あなたが欲しい、っていう人が居るの……」
この人は、センターの管理をやっている人だったと思う。
長い髪をだらだらと垂らし、香水をちらつかせては、男の人と遊びに出かけているらしい。
詳しくは知らないけど。好きではないが嫌いでもない、そんなところだ。
「……誰?」
「この間、見学に来た三原さんて方。知ってる?」
「知らない……」
「ミカちゃん。詳しい話は、またするね……」
名前もよく知らない女性は、足早に帰っていった。
なんだか、本を読む気も失せてしまう。今日は珍しく、絵本なんて読んでいたからよけいだ。
私は、小さい時から少し大人びていた。今の年は五歳だが、あまり実感もない。
けど、漢字が書けるくらいで大人達が騒ぐと知っているので、普段は子供らしく過ごしている。
さっきみたいに、あほらしい絵本なんて読んでたりもしなくてはならないので、いい加減イヤになってきた。
「私が欲しい、ね……」
何が気に入ったのか、何がいいのか私には理解できなかった。
親が誰なのか私は知らない。これから親が出来たとしても、親とは思わないだろう。
ミカという名前を持って、気がついたら私はここに居た。
親が残したらしい紙と、ペンダントを手に、長い黒髪を揺らす。
それだけなら、親を求めていた寂しい五歳児だったかもしれない。
困っている。というよりイヤだ。そう、私の後ろ。彼が私を困らせるのだ。
たぶん、私がこの世に生を受け、目を覚ました時から居たのだろう。
人は彼のことを、昔はこんなふうに呼んでいたらしい。
---タタリガミ。
だから私は、彼のことをタタリガミと呼んだ。
誰がそんな名前を付けたか、昔とはいつの頃からなのか。自分としては、少し興味があったのだが、タタリガミは何も話さないので、私も聞かない。
性別は男らしい。私が呼ばない限り彼は話さないし、何もしてくれないので、そんなことも私はよく知らないで居る。
「タタリガミ……」
試しに呼んでみれば、機械音のような少し耳障りな声が頭に響く。これが彼の言葉だ。
考えてみれば、彼が居るせいで私は子供らしくないのかもしれない。
---まあ、どうでもいい事なんだけど。
私は再び、先ほどの絵本に目を通した。
読めば読むほど、おかしな話だ。現実には考えられないような現象がまるで魔法でもかけたかのように起こる。
2ページぐらい読むと、早くも眠くなってきた。
目をこすりつつ、ページをめくるが限界のようで、手が重くなってきた。
いい加減飽きてしまった私は、絵本を元の場所にしまい、図書室のクッションにもたれる。
いい感じで目を閉じようとすると、先ほどの女性が慌てた様子で戻ってきた。
「行きましょう、ミカちゃん……」
---回る。
時間は回る、回っていく。
大きい針と小さい針がクルクルと動き、時間が巡って行く。
目を閉じて、空気を吸い込めば十秒経過。ついでに髪もいじっていると、一分経過する。
私の時間は過ぎていく。
ゆっくりと、ゆっくりとだが私は時の流れに巻き込まれる。
止まること無く、揺らぐこと無く、時は流れる。
動かなくなってしまえばいい、動けなくなってしまえばいい。
私は、こんな身体は欲しくなかった。時の狭間に落ち込み、動けなくなってしまえばいい。
私はミカ。ただのミカ……。
そうじゃないのが恨めしい。変えるものなら変えたい。
今の私を、今のすべてを。どうして? 答えは無い、答えをくれる相手もいない。
……誰も、いない。だれも。
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「---もう一度、言って」
私の読書時間を福祉センターの偉い人は邪魔をした。
ちょっと不機嫌になりながらも、さっきの言葉を私は聞き返す。
「あなたが欲しい、っていう人が居るの……」
この人は、センターの管理をやっている人だったと思う。
長い髪をだらだらと垂らし、香水をちらつかせては、男の人と遊びに出かけているらしい。
詳しくは知らないけど。好きではないが嫌いでもない、そんなところだ。
「……誰?」
「この間、見学に来た三原さんて方。知ってる?」
「知らない……」
「ミカちゃん。詳しい話は、またするね……」
名前もよく知らない女性は、足早に帰っていった。
なんだか、本を読む気も失せてしまう。今日は珍しく、絵本なんて読んでいたからよけいだ。
私は、小さい時から少し大人びていた。今の年は五歳だが、あまり実感もない。
けど、漢字が書けるくらいで大人達が騒ぐと知っているので、普段は子供らしく過ごしている。
さっきみたいに、あほらしい絵本なんて読んでたりもしなくてはならないので、いい加減イヤになってきた。
「私が欲しい、ね……」
何が気に入ったのか、何がいいのか私には理解できなかった。
親が誰なのか私は知らない。これから親が出来たとしても、親とは思わないだろう。
ミカという名前を持って、気がついたら私はここに居た。
親が残したらしい紙と、ペンダントを手に、長い黒髪を揺らす。
それだけなら、親を求めていた寂しい五歳児だったかもしれない。
困っている。というよりイヤだ。そう、私の後ろ。彼が私を困らせるのだ。
たぶん、私がこの世に生を受け、目を覚ました時から居たのだろう。
人は彼のことを、昔はこんなふうに呼んでいたらしい。
---タタリガミ。
だから私は、彼のことをタタリガミと呼んだ。
誰がそんな名前を付けたか、昔とはいつの頃からなのか。自分としては、少し興味があったのだが、タタリガミは何も話さないので、私も聞かない。
性別は男らしい。私が呼ばない限り彼は話さないし、何もしてくれないので、そんなことも私はよく知らないで居る。
「タタリガミ……」
試しに呼んでみれば、機械音のような少し耳障りな声が頭に響く。これが彼の言葉だ。
考えてみれば、彼が居るせいで私は子供らしくないのかもしれない。
---まあ、どうでもいい事なんだけど。
私は再び、先ほどの絵本に目を通した。
読めば読むほど、おかしな話だ。現実には考えられないような現象がまるで魔法でもかけたかのように起こる。
2ページぐらい読むと、早くも眠くなってきた。
目をこすりつつ、ページをめくるが限界のようで、手が重くなってきた。
いい加減飽きてしまった私は、絵本を元の場所にしまい、図書室のクッションにもたれる。
いい感じで目を閉じようとすると、先ほどの女性が慌てた様子で戻ってきた。
「行きましょう、ミカちゃん……」
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