孤独な姫君たちの蜜の駆け引き

和泉葉也

文字の大きさ
35 / 52
第四章 懐妊と届かない便りと

心を軽くする薬(3)

しおりを挟む
「こんなに広いとは思わなかったわ…。まるで、川に水浴びに来たみたい」
「この部屋だけは、湯を沸かす機械が備わっているから、冷えてきても水甕を持ってきて貰う必要もないんだ。焔が熱してくれるし、ある程度の温度も調整出来る」

 涙で濡れた服を着替えるついでに湯に浸かる話になり、どうせなら城内で一番広いフレドリクスの部屋のバスルームを借りようとエリヴァルが提案した。

「……どうしたんだい、そんな隅で震えて。ボクたちと一緒に温まらないと、風邪を引いてしまうよ」
「その、僕は、外で待たせて頂いて…」
 部屋の主人であるフレドリクスは、突然愛しい姫君に手を掴まれ、拒絶の意見も聞かないまま服を脱ぎ出されたのだから、たまったものではない。

「一緒に湯に浸かったのが、初めてでもないのだから緊張する事ないさ。それとも、リリスが居てはお邪魔だったかい?」
「そんな事は、決して無いんだけど。目のやり場に、困ると言うか…」

 戸惑うフレドリクスの腕を掴み、脱ぎかけの衣装のままバスタブに押し込む。こうなってしまっては彼も服を脱ぐしか無くなり、少し躊躇った後、不器用にボタンを外していった。

「バスルームを貸して貰うだけなのに、何故、部屋で服を脱ぎ出して、フレドリクスまで湯の中に押し込む必要が有るのよ…」
「大きいバスタブに二人だけで入ったら、湯がもったい無いじゃないか。それとも、ウィードやアキニムも呼んだ方が良かったかい?」

 嘆息し、そう言えばコルセットを外した後の彼女は拘束を解かれた猟犬のように駆けずり回っていた事を思い出し、諦めを悟ったリリスはフレドリクスに丁寧に謝罪してから服に手を掛ける。

「やれやれ、ロイヤルアゼールを訪問したら、エリヴァルは確実に不敬で縛り首になるわね…」
「リリスは、その。僕と湯に入っても、いいのですか…?」
 恥ずかしそうにこちらを見てきたフレドリクスの頭を撫で、庇護欲をそそられたリリスは思い切り同意の笑顔になる。

「未婚の女性にこんな事を言っては失礼だけど、その。リリスは幼い頃に亡くなった母君に、少し似ていて、見られると恥ずかしくて…」
「そう言えば、フレドリクスの母君は前国王の叔父の末娘だったか…。血の繋がりとしては、二人は従姉弟同士になるね。フィンネルから辿ると、再従兄弟はとこになるのか。それでは、似ていても不思議は無いよ」

「ーーリリスは僕の、従姉弟いとこ、だったのですか…。母上の親類はほとんど残って居ないと聞かされてたので、お会い出来て嬉しいです」

 二人の血の繋がりを見て、リリスから辿るとそんなに離れているわけでは無いが、前国王の孫娘というフレドリクスからは随分と離れた血筋に、エリヴァルは軽い嫉妬心を覚えた。

「ち、ちょっとエリヴァル…」
 バスタブに縮こまったままのフレドリクスに口付け、頬に首すじへと愛撫を繰り返していく。何かを察したリリスはそれに習い、二人の姫に身体を触れられたフレドリクスは硬直したまま動けなくなる。

「ボク以外の女性に夢中になるなんて、フレドリクスは酷い人だね。ちょっとだけ、虐めたくなってきてしまったよ」
「……そうね。せっかく婚約候補者同士なのだから、彼とスキンシップしても許されるかもね」

 互いにウインクの合図をして、フレドリクスの両頬に唇が触れていく。
 強く口づけ、そっと胸元に手を這わせられ、エリヴァルとリリスの乳房を寄せられたフレドリクスは、瞼を必死で閉じて湧き上がる感情を必死で抑えようとする。

「ダメ…ですよ、姫君がそんな所に、触れては…」
「どんな所に触れられたら、君は淫らになると言うんだいーー? ボクがこの部屋に入ると、胸が高鳴って性を抑えられなくなるのを知っているのに、何度もわざと誘って。時には、ベッドに無理やり押し込んだじゃないか」

 彼としては自分の部屋に誘って談笑したかっただけでも、エリヴァルには死を誘うような甘い罠でしかない。
 部屋を見るだけで発情し、指先を秘芯に触れさせなくては抑えが効かなくなる調教をされた身体を蹂躙したお返しをするには、ちょうど良いタイミングだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

女の子がほとんど産まれない国に転生しました。

さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。 100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳 そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。 当面は2日に1話更新予定!

【R18】深層のご令嬢は、婚約破棄して愛しのお兄様に花弁を散らされる

奏音 美都
恋愛
バトワール財閥の令嬢であるクリスティーナは血の繋がらない兄、ウィンストンを密かに慕っていた。だが、貴族院議員であり、ノルウェールズ侯爵家の三男であるコンラッドとの婚姻話が持ち上がり、バトワール財閥、ひいては会社の経営に携わる兄のために、お見合いを受ける覚悟をする。 だが、今目の前では兄のウィンストンに迫られていた。 「ノルウェールズ侯爵の御曹司とのお見合いが決まったって聞いたんだが、本当なのか?」」  どう尋ねる兄の真意は……

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

処理中です...