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第四十五話……異次元潜航艇ケツアルコアトル
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人間たちが居なくなった空間。
それは思ったよりも、無機質で静かなものではない。
厨房からは鍋を振る音が聞こえ、いい匂いがしてきた。
「オ待チドウサマ!」
「ありがとう」
晴信の前に、水耕栽培で育てられたと思われるネギがたっぷり入った炒飯が提供される。
美味しそうな湯気が上がり、スプーンですくうと香ばしい脂の香りが鼻を抜けた。
「御馳走様」
晴信は炒飯を食べ終え、水を飲む。
「ここには君しかいないの?」
「エエ、皆、動カナクナリマシタ。私ハヒトリボッチ。ソレヨリ貴方ハ何ヲシニ、コノアタリマデキタノデスカ? ココノマワリハ危険ナ宙域ナノニ……」
「ええっとね、ちょっと特殊な部品を探しに来たんだ」
晴信はこのロボットにサーペントの脅威を伝え、それに対する備えとして異次元潜航艇が欲しいと説明してみた。
それは、全く何かを期待するものでは無かったのだが……。
「……ナラバ、付イテキテクダサイ」
ロボットは晴信についてくるようにいう。
それに従い、晴信はおとなしくついていくことにした。
二つの部屋と三つの廊下を通った先は、大きな屋内ドックであった。
そこにはドレッドノートより一回り大きい宇宙船が停泊していた。
外殻部より、その接合部分は見当たらず、又、くまなく対レーザー用の鏡面装甲が施されており、素晴らしい技術で作られていることが一目で判った。
「凄い!」
「凄イデショウ! コノ船ハ【ケツアルコアトル】。異次元ニモ潜レマスヨ」
「!?」
晴信は思わず息をのんだ。
「コノ船ハサシアゲマスカラ、アノ、ロボットヲクダサイ」
「ディーのこと?」
「ハイ」
「それは出来ないよ。彼は大切な僕の友達なんだ」
晴信がそう言うと、ロボットは意外なことを言った。
「私ニモ友達ガ、欲シイ……」
「えっ? じゃあ僕と一緒に来たらいいよ! そうしない?」
「私ハ、コノ施設ノ料理人。外ニハ出ラレナイ仕様ナノデス」
「うーん、困ったなぁ……、とりあえず、ディーに会わせてよ」
「コチラデス」
ロボットは晴信を連れ、施設内の地下室へ案内する。
階段を降りると、格子戸の部屋の中にディーは閉じ込められていた。
「……あ、晴信! 助けて!」
「下手ニ動クト、施設ゴト爆破シマスヨ!」
ロボットは警告を鳴らしてきたが、思ったより晴信は冷静だった。
「……ねぇ、ディー、彼もいっしょにここを出る方法はないかな?」
晴信はロボットが一人で寂しい事。
よって、一緒に連れ出したいが、でもここを出られないことを説明した。
「私モ、外ノ世界ニ出タイ」
「困ったねぇ~」
その話を聞いて、ディーは幾分気分が落ち着く。
自分も一人で、こんなところに長い事いたら、とても寂しいだろうと思うからだ。
「ところで君の名前はなんていうの?」
晴信は思い出したように、ロボットに名前を聞いてみた。
「私ハ、R886-DZXデス」
ひょっとして名前がないのではないかと思ったが、名前はきちんとあった。
というか、多分それは型番というのだろうが……。
「じゃあ、今日から君はアールだ」
「私ノ名前ガ、アール?」
「そうだよ。気に食わない?」
「イエ、アリガトウゴザイマス。デスガ、ディーサンハ、返シマセンヨ」
晴信は何かを求めた訳では無かったが、アールは常に警戒感を露にする。
……ところが、そのアールから突如、焦げ臭いがしてきた。
「アア、嗚呼、アア……」
訳の分からないことを呟くアール。
どうやら、どこかの配線がショートしているようだ。
つまり、経年劣化の為の故障のようであった。
晴信は急いで地下室の階段を駆けあがった。
アールがここを研究所と言っていたから、彼を修理するキットなりなんなりが用意されているはずだった……。
「あった!」
晴信は緊急用の修理キットを見つけた。
それをもって大急ぎで地下室に戻る。
「アールしっかりするんだ!」
「アア、嗚呼、アア……」
晴信は急いでアールの外殻部を剥がし、焦げ臭い部位を探した。
だが、故障していた部位は、人間の脳下垂体にも当たる重要部で、晴信には手の施しようがなかった。
他にも多数の修理痕があった。
きっとそれは、今まで自分で修理してきたのだろう……。
……嗚呼、ワタシガ終ワル。
ツマラナイ一生ダッタ。
アールは臨終の間際、そう思った。
だが、彼は数時間後に目を覚ますことになった。
「おはよう。目が覚めたかい?」
アールの眼の前。
若しくは視覚認知機器の前にはディーの姿があった。
「アレ? 私ハ壊レテシマッタノデハ?」
「……うん、壊れたんだけど、記憶メモリーは無事だったんだよ。でね、すぐに移植先を探した結果、ここになったんだ」
「ココハ、知ッテイルゾ!」
「そうだよ。アールが案内してくれたケツアルコアトルの艦橋コンピューターに移植したんだ。これからも宜しくね!」
晴信はそう言いにっこりと笑う。
「何しろ、アールがいないとこの船の動かし方も分からないからねぇ~」
ディーがランプを点滅させながら、そう続けた。
「皆サン。アリガトウ……」
異次元潜航艇【ケツアルコアトル】。
この日、晴信の手により、未知の研究所を発進。
一路、ゲルマー星系を目指した。
それは思ったよりも、無機質で静かなものではない。
厨房からは鍋を振る音が聞こえ、いい匂いがしてきた。
「オ待チドウサマ!」
「ありがとう」
晴信の前に、水耕栽培で育てられたと思われるネギがたっぷり入った炒飯が提供される。
美味しそうな湯気が上がり、スプーンですくうと香ばしい脂の香りが鼻を抜けた。
「御馳走様」
晴信は炒飯を食べ終え、水を飲む。
「ここには君しかいないの?」
「エエ、皆、動カナクナリマシタ。私ハヒトリボッチ。ソレヨリ貴方ハ何ヲシニ、コノアタリマデキタノデスカ? ココノマワリハ危険ナ宙域ナノニ……」
「ええっとね、ちょっと特殊な部品を探しに来たんだ」
晴信はこのロボットにサーペントの脅威を伝え、それに対する備えとして異次元潜航艇が欲しいと説明してみた。
それは、全く何かを期待するものでは無かったのだが……。
「……ナラバ、付イテキテクダサイ」
ロボットは晴信についてくるようにいう。
それに従い、晴信はおとなしくついていくことにした。
二つの部屋と三つの廊下を通った先は、大きな屋内ドックであった。
そこにはドレッドノートより一回り大きい宇宙船が停泊していた。
外殻部より、その接合部分は見当たらず、又、くまなく対レーザー用の鏡面装甲が施されており、素晴らしい技術で作られていることが一目で判った。
「凄い!」
「凄イデショウ! コノ船ハ【ケツアルコアトル】。異次元ニモ潜レマスヨ」
「!?」
晴信は思わず息をのんだ。
「コノ船ハサシアゲマスカラ、アノ、ロボットヲクダサイ」
「ディーのこと?」
「ハイ」
「それは出来ないよ。彼は大切な僕の友達なんだ」
晴信がそう言うと、ロボットは意外なことを言った。
「私ニモ友達ガ、欲シイ……」
「えっ? じゃあ僕と一緒に来たらいいよ! そうしない?」
「私ハ、コノ施設ノ料理人。外ニハ出ラレナイ仕様ナノデス」
「うーん、困ったなぁ……、とりあえず、ディーに会わせてよ」
「コチラデス」
ロボットは晴信を連れ、施設内の地下室へ案内する。
階段を降りると、格子戸の部屋の中にディーは閉じ込められていた。
「……あ、晴信! 助けて!」
「下手ニ動クト、施設ゴト爆破シマスヨ!」
ロボットは警告を鳴らしてきたが、思ったより晴信は冷静だった。
「……ねぇ、ディー、彼もいっしょにここを出る方法はないかな?」
晴信はロボットが一人で寂しい事。
よって、一緒に連れ出したいが、でもここを出られないことを説明した。
「私モ、外ノ世界ニ出タイ」
「困ったねぇ~」
その話を聞いて、ディーは幾分気分が落ち着く。
自分も一人で、こんなところに長い事いたら、とても寂しいだろうと思うからだ。
「ところで君の名前はなんていうの?」
晴信は思い出したように、ロボットに名前を聞いてみた。
「私ハ、R886-DZXデス」
ひょっとして名前がないのではないかと思ったが、名前はきちんとあった。
というか、多分それは型番というのだろうが……。
「じゃあ、今日から君はアールだ」
「私ノ名前ガ、アール?」
「そうだよ。気に食わない?」
「イエ、アリガトウゴザイマス。デスガ、ディーサンハ、返シマセンヨ」
晴信は何かを求めた訳では無かったが、アールは常に警戒感を露にする。
……ところが、そのアールから突如、焦げ臭いがしてきた。
「アア、嗚呼、アア……」
訳の分からないことを呟くアール。
どうやら、どこかの配線がショートしているようだ。
つまり、経年劣化の為の故障のようであった。
晴信は急いで地下室の階段を駆けあがった。
アールがここを研究所と言っていたから、彼を修理するキットなりなんなりが用意されているはずだった……。
「あった!」
晴信は緊急用の修理キットを見つけた。
それをもって大急ぎで地下室に戻る。
「アールしっかりするんだ!」
「アア、嗚呼、アア……」
晴信は急いでアールの外殻部を剥がし、焦げ臭い部位を探した。
だが、故障していた部位は、人間の脳下垂体にも当たる重要部で、晴信には手の施しようがなかった。
他にも多数の修理痕があった。
きっとそれは、今まで自分で修理してきたのだろう……。
……嗚呼、ワタシガ終ワル。
ツマラナイ一生ダッタ。
アールは臨終の間際、そう思った。
だが、彼は数時間後に目を覚ますことになった。
「おはよう。目が覚めたかい?」
アールの眼の前。
若しくは視覚認知機器の前にはディーの姿があった。
「アレ? 私ハ壊レテシマッタノデハ?」
「……うん、壊れたんだけど、記憶メモリーは無事だったんだよ。でね、すぐに移植先を探した結果、ここになったんだ」
「ココハ、知ッテイルゾ!」
「そうだよ。アールが案内してくれたケツアルコアトルの艦橋コンピューターに移植したんだ。これからも宜しくね!」
晴信はそう言いにっこりと笑う。
「何しろ、アールがいないとこの船の動かし方も分からないからねぇ~」
ディーがランプを点滅させながら、そう続けた。
「皆サン。アリガトウ……」
異次元潜航艇【ケツアルコアトル】。
この日、晴信の手により、未知の研究所を発進。
一路、ゲルマー星系を目指した。
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