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【第二章】赤い地球
第七十九話……物資供出命令!
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「新任の星系司令官のヴェロヴェマです!」
「ははは、お帰り!」
少し疲れた顔のエールパ星系の主である蛮王様に、新任の星系防衛司令官として新任の挨拶をする。
……といっても三度目の赴任である。
すぐに打ち解け、現況についての話を聞いた。
「……現在の帝国の方針には、ほとほと参っているのだよ……」
「はぁ」
惑星リーリヤでの蛮王様はご機嫌斜めだった。
ここ半年、地方星系領主にとっては益のない戦乱と、それに伴う苦役ばかりの日々が続いていたようだった。
「新しい第五管区の軍団長、なんといったっけ?」
「リーゼンフェルト中将ですか?」
「そうそう、そいつが今度、食料60万トンを用意しろと言ってきた」
蛮王様は不機嫌そうにテーブルのお茶を啜る。
「む、無償で、ですか?」
「……ああ」
帝国軍は防衛行動の為に、地方星系から物資を徴発する権限がある。
……しかし、それは緊急時というのが不文律であり、簡単に実行されるようなものでは無かった。
第五管区星系はマールボロ、エールパ、アルデンヌの3星系と辺境連合国家が所属しており、リーゼンフェルト中将より各星系へそれぞれ厳しい物資供出命令が出ていた。
その物資は出世の為に、首都星系ツエルベルクに送るに違いない。
……あきらかに、リーゼンフェルト中将は功を焦っているようだった。
蛮王様の愚痴を一通り聞いた後、私は懐かしの衛星アトラスの地を踏んだ。
「ひさびさメェ~♪」
「帰ってきた感がありますわ♪」
「ほう、これが衛星アトラスですか」
一人内政型アンドロイドのヨハンさんだけは、初めてのアトラスである。
彼には内政担当者として、この衛星アトラスだけでなく、衛星ガイアや惑星カイなど、視てもらわねばならない星がいくつもあった。
「とりあえず、養殖池の防疫を致しましょう!」
早速の……、仕事の出来る人であった。
☆★☆★☆
惑星アトラスの地でも慌ただしい。
「修理する船が多すぎるクマ!」
「みんなボロボロポコね」
現在、エールパ星系艦隊の全艦が損傷の為にドック入りである。
幾つか知った船も多数撃沈してしまっていた。
やはり戦力不足は明白であり、ラム星系などから艦船を連れてくる必要があった。
……しかし、辺境連合国家の皆さんに物資提供や戦力抽出をすんなり受け入れてもらえるのだろうか?
それを考えると私は頭が痛かった。
とりあえず、内政と整備要員としてヨハンさんとクマ三郎を衛星アトラスに残し、ハンニバルは物資供出要請をするためにレオナルド星系のアメーリア女王の元へ向かうために出港した。
☆★☆★☆
再びの危険宙域で、巨大アメーバに出合う。
今まで、彼らと何度戦ってきただろうか?
……しかし、もう慣れていた。
アメーバの方が、……である。
「皆さん、餌ですポコ~♪」
砲術長殿がハンニバルの後部ハッチを開き、養殖池などで出た大量の有機廃棄物を巨大アメーバたちに餌やりする。
彼等はきっとハンニバルが来ると餌が貰えると思っているのだろう。
……餌を積み忘れてくると大変な予感もした。
その後、順調に長距離跳躍を果たし、レオナルド星系の外縁につく。
衛星軌道上にて管制システムといつもの挨拶を交わし、ガス状惑星である主星アメーリアに降下した。
港湾設備にハンニバルを停泊させ、宮殿へとむかう私達。
行きかう民草は皆タコ型星人であり、スモッグが多い工業主体の星であった。
☆★☆★☆
「良ク、来タナ!」
「女王陛下にはご機嫌麗しく……」
ここの女王様は薄絹を纏っただけの若い女性の姿である。
いつお会いしても目のやり場に困る。
他の臣民はタコ型なので、姿のギャップが凄いのだが……。
「ヨイヨイ、話ハ徴発ノ件ダナ?」
「憚りながら……」
リーゼンフェルト中将に命令された物資供出の要望書を、アメーリア女王陛下とその重臣たちに恭しく手渡した。
工業部門が得意なレオナルド星系には、民需用と軍需用の併せて6隻の宇宙船と数千台の地上車両の提供が求められていた。
工業が得意と言っても、辺境の貧しい星系国家にとっては十分重荷となる数字であった。
「……コレヲ支払ウ見返リハ何ゾエ?」
「恥ずかしながら、ありませぬ……」
重臣たちの冷たい目線が私に刺さっていた。
従属国家と支配国家の間の中間管理職としての板挟みが辛かった。
結局、物資供出外交案件はしばらく継続交渉となった。
レオナルド星系側も重要な外交案件として、周辺星域であるドラグニル星系やフェーン星系と足並みをそろえる必要があったのだ。
☆★☆★☆
「……疲れたな」
「お疲れ様ですわ」
「お疲れポコ」
ガス状惑星アメーリアのホテルに戻って、皆と休む。
お昼ご飯のキツネうどんを食べ終わって、寛いでいるころ。
……PIPIPI。
テレビのニュースで見たのと、緊急連絡が入ったのはほぼ同時だった。
エールパ星系の隣接星域であるマールボロ星系で反乱が勃発したのだった。
……やはり、リーゼンフェルト中将の要求は各地の星系にとって重すぎたのだ。
その緊張はマールボロ星系のみならず、近隣星系に次々に波及していった。
「ははは、お帰り!」
少し疲れた顔のエールパ星系の主である蛮王様に、新任の星系防衛司令官として新任の挨拶をする。
……といっても三度目の赴任である。
すぐに打ち解け、現況についての話を聞いた。
「……現在の帝国の方針には、ほとほと参っているのだよ……」
「はぁ」
惑星リーリヤでの蛮王様はご機嫌斜めだった。
ここ半年、地方星系領主にとっては益のない戦乱と、それに伴う苦役ばかりの日々が続いていたようだった。
「新しい第五管区の軍団長、なんといったっけ?」
「リーゼンフェルト中将ですか?」
「そうそう、そいつが今度、食料60万トンを用意しろと言ってきた」
蛮王様は不機嫌そうにテーブルのお茶を啜る。
「む、無償で、ですか?」
「……ああ」
帝国軍は防衛行動の為に、地方星系から物資を徴発する権限がある。
……しかし、それは緊急時というのが不文律であり、簡単に実行されるようなものでは無かった。
第五管区星系はマールボロ、エールパ、アルデンヌの3星系と辺境連合国家が所属しており、リーゼンフェルト中将より各星系へそれぞれ厳しい物資供出命令が出ていた。
その物資は出世の為に、首都星系ツエルベルクに送るに違いない。
……あきらかに、リーゼンフェルト中将は功を焦っているようだった。
蛮王様の愚痴を一通り聞いた後、私は懐かしの衛星アトラスの地を踏んだ。
「ひさびさメェ~♪」
「帰ってきた感がありますわ♪」
「ほう、これが衛星アトラスですか」
一人内政型アンドロイドのヨハンさんだけは、初めてのアトラスである。
彼には内政担当者として、この衛星アトラスだけでなく、衛星ガイアや惑星カイなど、視てもらわねばならない星がいくつもあった。
「とりあえず、養殖池の防疫を致しましょう!」
早速の……、仕事の出来る人であった。
☆★☆★☆
惑星アトラスの地でも慌ただしい。
「修理する船が多すぎるクマ!」
「みんなボロボロポコね」
現在、エールパ星系艦隊の全艦が損傷の為にドック入りである。
幾つか知った船も多数撃沈してしまっていた。
やはり戦力不足は明白であり、ラム星系などから艦船を連れてくる必要があった。
……しかし、辺境連合国家の皆さんに物資提供や戦力抽出をすんなり受け入れてもらえるのだろうか?
それを考えると私は頭が痛かった。
とりあえず、内政と整備要員としてヨハンさんとクマ三郎を衛星アトラスに残し、ハンニバルは物資供出要請をするためにレオナルド星系のアメーリア女王の元へ向かうために出港した。
☆★☆★☆
再びの危険宙域で、巨大アメーバに出合う。
今まで、彼らと何度戦ってきただろうか?
……しかし、もう慣れていた。
アメーバの方が、……である。
「皆さん、餌ですポコ~♪」
砲術長殿がハンニバルの後部ハッチを開き、養殖池などで出た大量の有機廃棄物を巨大アメーバたちに餌やりする。
彼等はきっとハンニバルが来ると餌が貰えると思っているのだろう。
……餌を積み忘れてくると大変な予感もした。
その後、順調に長距離跳躍を果たし、レオナルド星系の外縁につく。
衛星軌道上にて管制システムといつもの挨拶を交わし、ガス状惑星である主星アメーリアに降下した。
港湾設備にハンニバルを停泊させ、宮殿へとむかう私達。
行きかう民草は皆タコ型星人であり、スモッグが多い工業主体の星であった。
☆★☆★☆
「良ク、来タナ!」
「女王陛下にはご機嫌麗しく……」
ここの女王様は薄絹を纏っただけの若い女性の姿である。
いつお会いしても目のやり場に困る。
他の臣民はタコ型なので、姿のギャップが凄いのだが……。
「ヨイヨイ、話ハ徴発ノ件ダナ?」
「憚りながら……」
リーゼンフェルト中将に命令された物資供出の要望書を、アメーリア女王陛下とその重臣たちに恭しく手渡した。
工業部門が得意なレオナルド星系には、民需用と軍需用の併せて6隻の宇宙船と数千台の地上車両の提供が求められていた。
工業が得意と言っても、辺境の貧しい星系国家にとっては十分重荷となる数字であった。
「……コレヲ支払ウ見返リハ何ゾエ?」
「恥ずかしながら、ありませぬ……」
重臣たちの冷たい目線が私に刺さっていた。
従属国家と支配国家の間の中間管理職としての板挟みが辛かった。
結局、物資供出外交案件はしばらく継続交渉となった。
レオナルド星系側も重要な外交案件として、周辺星域であるドラグニル星系やフェーン星系と足並みをそろえる必要があったのだ。
☆★☆★☆
「……疲れたな」
「お疲れ様ですわ」
「お疲れポコ」
ガス状惑星アメーリアのホテルに戻って、皆と休む。
お昼ご飯のキツネうどんを食べ終わって、寛いでいるころ。
……PIPIPI。
テレビのニュースで見たのと、緊急連絡が入ったのはほぼ同時だった。
エールパ星系の隣接星域であるマールボロ星系で反乱が勃発したのだった。
……やはり、リーゼンフェルト中将の要求は各地の星系にとって重すぎたのだ。
その緊張はマールボロ星系のみならず、近隣星系に次々に波及していった。
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