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【第二章】赤い地球
第八十話……反乱鎮圧
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マールボロ星系の支配者はシェリオ伯爵無き今、フェンリル侯爵の統治領の一つとなっていた。
侯爵の代官が赴任して統治していたが、この度のリーゼンフェルト中将の物資調達の件で臨時の重税を課したところ、星系内で民衆の暴動が各地で発生。
行政施設には次々に火が放たれ、統治機構は完全に機能不全を起こした。
また、代官はこの混乱で行方不明になってしまった。
3日後には、現地の民衆の代表たちによる反帝国政府が樹立された。
……度重なる戦役の為の重税に、民衆が耐えかねた結果と言ってよかった。
しかし、マールボロ星系で勃発した反乱は、帝国中央とエールパ星系等との連絡線を遮断した格好になった。
それは貿易航路や兵站の遮断をも意味していた。
例えば、現代のわが国はエネルギーの90%と食料の60%を海外からの輸入に頼っている。
……つまりは、この世界の住民生活においても非常に不味いということだった。
☆★☆★☆
「ヴェロヴェマ君! 何とかしたまえ!」
「……し、しかし……」
超光速ビデオチャットにてイラつくリーゼンフェルト中将閣下。
私は現在、辺境星域であるレオナルド星系におり、とても今すぐ関与できる距離では無かった。
「……まぁ、ワシはこれから帝都のパーティーに出るから、その間にこの反乱を鎮圧しておきなさい」
「……は、はぁ」
「わかったね?」
「はっ!」
軍隊とは絶対的な縦の関係である。
『NO』と言える上官の命令など存在しなかった。
……ビデオチャットを切り、一息つく。
「……ふう」
「困りましたわね」
「困ったポコ」
今度の相手は軍隊ではなく、怒れる民衆のようだった。
凄く厄介な相手かもしれなかった……。
私は辺境連合国家への物資供出外交案件を一時棚上げし、ラム星系で人員と艦船を揃え、急ぎマールボロ星系へ向かうことにした。
☆★☆★☆
ハンニバルがマールボロ星系についた時には、更なる混乱を呈していた。
怒れる民衆達が現地政府の公益関係のインフラ施設を次々に壊した結果。
それに関係する電力や食料などの供給も止まってしまったのだ。
その後、物資不足に陥った住民たちは、住民たち同士で物資や食料を求めて争う結果となってしまっていた。
あちこちで暴動や犯罪行為が起こり、破壊活動がなされていた。
もはや、一種の内乱である。
一度破壊された公益システムの復旧は厳しい様相を呈していたのだった。
☆★☆★☆
「是非、物資や公益プラントの供与をお願いしたい!」
「……はぁ」
ビデオチャットにて、反帝国現地政府の代表の要求に生返事をする私。
なにしろ、私は彼らの反乱を鎮圧しに来ていたのだ。
……いわば、私は彼らの敵のはずなのだ。
しかし、彼らはさも当然のように膨大な要求を突き付けてきた。
「とんでもない量クマ!」
「無理ですわね」
反帝国現地政府から要求された発電プラント24基だけでも大変な金額だった。
他にも宇宙港の再建。
食料プラントの修復や道路などの修理。
とてもハンニバル開発公社だけでは賄えない。
「……ちょっと、その件は難しいようなのですけど」
「お前たちは何しに来た!? この役立たず!!」
無理だと伝えると、現地政府のリーダーに罵倒された。
……あんたらが壊したのが不味いのだと思うのだが。
こういう相手には、ハンニバルの強力な武装は何一つ役に立たなかった……。
☆★☆★☆
「……で、如何いたしましょうか?」
「ふむう」
上官である第五管区軍団長リーゼンフェルト中将にビデオチャットでお伺いを立てる。
もはや、私に出来うることはなさそうだった。
「……では、衛星軌道上から無差別爆撃してはどうかね?」
「!?」
……上官殿が何を言っているのかが分からない。
「いっそ、うるさい愚民どもを皆殺しにしてしまえ! 食料問題も一気に解決しよう……」
「……は、はぁ」
私は生返事をして、一度通信を切った。
流石にこの発言には付き合いきれなかった。
「どういたします?」
「どうするポコ?」
「……」
「ぐ、軍を辞めるか……?」
「……いや、病気になろう! 今日から私は病人だ!」
「仮病ニャ♪」
「ずる休みポコ♪」
「良い考えですわね♪」
……私は、その日。
軍に療養願いを提出し、再び予備役になった。
☆★☆★☆
私の療養願いは受理されたが、反乱鎮圧に失敗したので降格処分。
無能者のレッテルを張られ、階級は准将に戻った。
リーゼンフェルト中将はその後、無差別爆撃を行った後、惑星地上軍師団を多数投入。
強硬手段に訴えて反乱を見事鎮圧した。
現地の惨状を知らないカリバーン帝国総司令部はリーゼンフェルト中将の反乱鎮圧の功を褒めた称え、彼を大将に昇進させた。
リーゼンフェルトの義父のクレーメンス公爵元帥はこれを好機ととらえ、人事に次々に圧力をかけた。
この圧力により、高齢のパウルス上級大将は勇退。
この帝国軍の名将パウルスの突然の引退劇に、敵国であるグングニル共和国は狂喜した。
帝国総司令部は一気に人事の若返りを図り、リーゼンフェルト派の若手の参謀たちも次々に昇格した。
……その二日後。
新しい帝国軍宇宙艦隊司令長官はリーゼンフェルト大将に内定した。
……この宇宙には更なる混乱と混迷が待ち受けようとしていた。
侯爵の代官が赴任して統治していたが、この度のリーゼンフェルト中将の物資調達の件で臨時の重税を課したところ、星系内で民衆の暴動が各地で発生。
行政施設には次々に火が放たれ、統治機構は完全に機能不全を起こした。
また、代官はこの混乱で行方不明になってしまった。
3日後には、現地の民衆の代表たちによる反帝国政府が樹立された。
……度重なる戦役の為の重税に、民衆が耐えかねた結果と言ってよかった。
しかし、マールボロ星系で勃発した反乱は、帝国中央とエールパ星系等との連絡線を遮断した格好になった。
それは貿易航路や兵站の遮断をも意味していた。
例えば、現代のわが国はエネルギーの90%と食料の60%を海外からの輸入に頼っている。
……つまりは、この世界の住民生活においても非常に不味いということだった。
☆★☆★☆
「ヴェロヴェマ君! 何とかしたまえ!」
「……し、しかし……」
超光速ビデオチャットにてイラつくリーゼンフェルト中将閣下。
私は現在、辺境星域であるレオナルド星系におり、とても今すぐ関与できる距離では無かった。
「……まぁ、ワシはこれから帝都のパーティーに出るから、その間にこの反乱を鎮圧しておきなさい」
「……は、はぁ」
「わかったね?」
「はっ!」
軍隊とは絶対的な縦の関係である。
『NO』と言える上官の命令など存在しなかった。
……ビデオチャットを切り、一息つく。
「……ふう」
「困りましたわね」
「困ったポコ」
今度の相手は軍隊ではなく、怒れる民衆のようだった。
凄く厄介な相手かもしれなかった……。
私は辺境連合国家への物資供出外交案件を一時棚上げし、ラム星系で人員と艦船を揃え、急ぎマールボロ星系へ向かうことにした。
☆★☆★☆
ハンニバルがマールボロ星系についた時には、更なる混乱を呈していた。
怒れる民衆達が現地政府の公益関係のインフラ施設を次々に壊した結果。
それに関係する電力や食料などの供給も止まってしまったのだ。
その後、物資不足に陥った住民たちは、住民たち同士で物資や食料を求めて争う結果となってしまっていた。
あちこちで暴動や犯罪行為が起こり、破壊活動がなされていた。
もはや、一種の内乱である。
一度破壊された公益システムの復旧は厳しい様相を呈していたのだった。
☆★☆★☆
「是非、物資や公益プラントの供与をお願いしたい!」
「……はぁ」
ビデオチャットにて、反帝国現地政府の代表の要求に生返事をする私。
なにしろ、私は彼らの反乱を鎮圧しに来ていたのだ。
……いわば、私は彼らの敵のはずなのだ。
しかし、彼らはさも当然のように膨大な要求を突き付けてきた。
「とんでもない量クマ!」
「無理ですわね」
反帝国現地政府から要求された発電プラント24基だけでも大変な金額だった。
他にも宇宙港の再建。
食料プラントの修復や道路などの修理。
とてもハンニバル開発公社だけでは賄えない。
「……ちょっと、その件は難しいようなのですけど」
「お前たちは何しに来た!? この役立たず!!」
無理だと伝えると、現地政府のリーダーに罵倒された。
……あんたらが壊したのが不味いのだと思うのだが。
こういう相手には、ハンニバルの強力な武装は何一つ役に立たなかった……。
☆★☆★☆
「……で、如何いたしましょうか?」
「ふむう」
上官である第五管区軍団長リーゼンフェルト中将にビデオチャットでお伺いを立てる。
もはや、私に出来うることはなさそうだった。
「……では、衛星軌道上から無差別爆撃してはどうかね?」
「!?」
……上官殿が何を言っているのかが分からない。
「いっそ、うるさい愚民どもを皆殺しにしてしまえ! 食料問題も一気に解決しよう……」
「……は、はぁ」
私は生返事をして、一度通信を切った。
流石にこの発言には付き合いきれなかった。
「どういたします?」
「どうするポコ?」
「……」
「ぐ、軍を辞めるか……?」
「……いや、病気になろう! 今日から私は病人だ!」
「仮病ニャ♪」
「ずる休みポコ♪」
「良い考えですわね♪」
……私は、その日。
軍に療養願いを提出し、再び予備役になった。
☆★☆★☆
私の療養願いは受理されたが、反乱鎮圧に失敗したので降格処分。
無能者のレッテルを張られ、階級は准将に戻った。
リーゼンフェルト中将はその後、無差別爆撃を行った後、惑星地上軍師団を多数投入。
強硬手段に訴えて反乱を見事鎮圧した。
現地の惨状を知らないカリバーン帝国総司令部はリーゼンフェルト中将の反乱鎮圧の功を褒めた称え、彼を大将に昇進させた。
リーゼンフェルトの義父のクレーメンス公爵元帥はこれを好機ととらえ、人事に次々に圧力をかけた。
この圧力により、高齢のパウルス上級大将は勇退。
この帝国軍の名将パウルスの突然の引退劇に、敵国であるグングニル共和国は狂喜した。
帝国総司令部は一気に人事の若返りを図り、リーゼンフェルト派の若手の参謀たちも次々に昇格した。
……その二日後。
新しい帝国軍宇宙艦隊司令長官はリーゼンフェルト大将に内定した。
……この宇宙には更なる混乱と混迷が待ち受けようとしていた。
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