魔王討伐までがチュートリアル〜廃ゲーマーが異世界転移したので最弱からやりこんでみた〜

ちくわぶ太郎

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1章 チュートリアル

26話 土蛇使い、ダイフィルト

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 疲れをほとんど感じさせない魔王。しかし、その体は痛々しい傷で埋め尽くされていた。

「貴様らを少しみくびっていたようだ。ここまでするとはな、めてやろう」

 そう、魔王は笑った。

「我も少し疲れてきた。ゆえに、そろそろ終わりにしようではないか」

 そう、魔王は笑った。狂気をはらませて。

 一瞬で周囲の温度が下がった。

 その場の全員が魔王から距離を取り、身構える。

 直後、魔王の周りに紫色の光が無数に現れた。

「おい、兄ちゃんら。あの光には絶対触れんなや」

 ダイフィルトが突然そんな事を言い出した。

「アレにさわるとたましいが別のモンにうばわれるぞ」

「…は?」

「わしは…というかわしと仲間はアレに全滅させられた。とにかく絶対触れるな」

「…わかった。もうちょい早く言って欲しかったけど、情報助かるわ。危ねぇ…」

 気を引きめ直して、相手の出方をうかがう。

「兄ちゃんら、ちょっと荒い戦闘にさせてもらうで」

 そう言うと、ダイフィルトは左手の大鉈を地面に突き立てた。

 すると、地面が波の様にうねりだした。

「広い場所に移動できてむしろ助かったわ」

 波は少しすると二つに分かれ、意思を持った様に冬志とウル太郎に向かってくる。2人の足元まで来た瞬間、地面が盛り上がる。

「元グルデン名物、ダイフィルトの『土蛇つちへび』じゃい!」

「お、おぉ!なにこれ、すご!」

「ガッハッハッハ、兄ちゃんら振り落とされんように気ぃつけや!」

「...え?うわぁあああ!」

 突然、2人を乗せた土蛇が高速で魔王へ突っ込んでいった。魔王もそれを見て近づく冬志達へ光を飛ばす。

 なんとか体勢を立て直す。その目の前に光が迫る…

 瞬間、冬志と光の間に土の壁が現れた。

 光は壁にはばまれ、消える。壁も粉々になり、改めてその威力に冷や汗をかく。

 無数の光をくぐり抜け、時には壁でふせぎながら恐ろしい速さで魔王へ近づく。

「殺されかけた相手に命任せんの、自分でもどうかと思うわ」

 つぶやき、苦笑くしょうらすが、言葉とは裏腹うらはらにダイフィルトと土蛇には安心感がある。

「…ウル太郎!周りの光は気にせず魔王だけに専念せんねんするぞ!」

 ウル太郎がうなずき、魔王へ構える。

 魔王は眼前に近づき、その首へ剣を振るう。魔王はそれを片腕で防ぐ。ウル太郎の乗っていた土蛇が魔王を上から押しつぶす…
 
 が、光と相殺そうさい。魔王には当たらない。ウル太郎は即座に魔王の死角しかくへ入る。

 背中を切る感覚に、魔王が後ろへ裏拳うらけんを振るう。しかし、そこにいるはずのウル太郎が見当たらない。

「!?」

 『闇撃やみうち』による攻撃だ。ウル太郎は先ほど破壊され、魔王の頭上にとどまっていた土蛇を蹴り、速度を上げつつ魔王の左腕に斬りかかる。

「…なかなかやるではないか。下等の魔物風情ふぜい分際ぶんざいで」

 魔王の左腕、ひじから下が地面に落ちる。すきを見逃さず、すかさず冬志がもう一度首目掛けて剣を振るう。

 …一瞬、魔王が笑った。

 今までで一番濃厚のうこうな死の予感に2人は後ろへ飛び退く。直後、目の前が紫色に染まる。巨大な光の球が冬志目掛けて飛んでくる。

 …あぁ、死ぬのか。
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