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三幕四場 ママと母
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「本当に家まで送らなくていいの?」
「うん。岩崎くんに家の場所、知られたくないから」
「あはっ。最後まで辛辣だ」
角を曲がる直前。振り返ると岩崎くんはさよならを交え場所から一歩も動いていなかった。そして目が合うと、また手を振ってくれた。こういうところだろうな、彼がモテる理由。
何となく手を振り返すことなく、前を向いた。
「ただいま」
玄関を開けると、違和感を覚えた。ロボット並の瞬発力とエスパー持つ富沢さんの姿がない。
その理由はすぐ分かった。リビングから漏れる甲高い声と、真っ赤なパンプスのせいで。
「あ、おっかえりー葵ちゃん!」
リビングの戸を開けると、むわっとアルコールの匂いがした。
やはり。ワイン片手に芋臭いジャージを着た女は、とても五十代とは思えない美貌。人は彼女を美魔女と呼ぶ。そして私は、彼女をこう呼ぶ。
「帰ってたんだね、母」
「うん! 帰って来たよー!」
裏表のない無粋な笑顔。それは数十分前まで隣にいた男のこと、酷似していた。
「うん。岩崎くんに家の場所、知られたくないから」
「あはっ。最後まで辛辣だ」
角を曲がる直前。振り返ると岩崎くんはさよならを交え場所から一歩も動いていなかった。そして目が合うと、また手を振ってくれた。こういうところだろうな、彼がモテる理由。
何となく手を振り返すことなく、前を向いた。
「ただいま」
玄関を開けると、違和感を覚えた。ロボット並の瞬発力とエスパー持つ富沢さんの姿がない。
その理由はすぐ分かった。リビングから漏れる甲高い声と、真っ赤なパンプスのせいで。
「あ、おっかえりー葵ちゃん!」
リビングの戸を開けると、むわっとアルコールの匂いがした。
やはり。ワイン片手に芋臭いジャージを着た女は、とても五十代とは思えない美貌。人は彼女を美魔女と呼ぶ。そして私は、彼女をこう呼ぶ。
「帰ってたんだね、母」
「うん! 帰って来たよー!」
裏表のない無粋な笑顔。それは数十分前まで隣にいた男のこと、酷似していた。
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