キャスティング

ストレートダーク

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第8話 五人の試練

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 撮影初日の惨敗から数日。
 それぞれのキャストは、自分の壁にぶつかっていた。


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古場 青 ― 増量の地獄

 太丸を演じるため、彼はひたすら食べ続けていた。ケーキ、ラーメン、ハンバーガー、油まみれの唐揚げ。
 鏡に映る自分の体が日に日に膨らんでいく。
 SNSでは「アイドルが壊れた」「太った偶像」と叩かれ、雑誌には「終焉」という見出しが並んだ。
 それでも青は呟いた。
 「太丸をやり切れば……俺は本物の役者になれる」


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不破 修 ― 炎上の包囲網

 現場へ向かうたびに、週刊誌の記者とカメラが群がった。
 「不倫俳優が正義を演じる?」と嘲笑が飛び交う。
 だが不破は台本を抱きしめ、ハッカーEPEPの台詞を何度も反芻した。

> 「俺の人生はバグだらけだ……でも最後くらい修復してやる」



 その一行が、彼の心を支えていた。


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ガブリエラ・リーン ― 言葉の壁

 現場では日本語のセリフを拒み、英語で演じ続けた。
 だが共演者の真剣さに触れ、ある夜ホテルで辞書を開いた。
 十年前、倉木に伝えたあの言葉を思い出す。

「ユメ……しんじて」

 震える日本語だったが、心に再び火が灯った。
 「私は……日本語で演じる」


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ミニッツ田代 ― 贖罪の演技

 ネットには「獅子狼を汚した芸人」と罵倒が並んでいた。
 彼は夜の稽古場で銃のレプリカを構え続けた。
 「笑いを取るためじゃない……命を守るために引くんだ」
 汗まみれのその姿を見た相方は、言葉を失った。


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大神社 秀 ― 自信の喪失と原点

 主演でありながら、セリフが出ない。
 「俺なんかが颯でいいのか」――夜の公園で立ち尽くす。
 そこに現れた倉木が静かに言った。
「君を見て、俺は颯を描いた。だから颯は君自身だ」

 その言葉に、秀の胸に眠っていた火が再び燃え始めた。


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 こうして五人は、それぞれの試練を抱えながらも少しずつ役に近づいていった。
 バラバラだった魂が、ゆっくりと「律」の五人として重なり始めていた。
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