転生したら史上最強の猫ちゃんでした~唸れ肉球伝説~

岸谷 畔

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魔王アムダール復活編

第11話

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エデン魔術協会。それは、オラクルハイトに本拠地を置く数多く存在する魔術協会の中でも有力な組織である。

国籍、ジャンルを問わず魔術師達によって作られた自衛、管理団体。魔術を管理し、その発展を担うのが魔術協会の役目である。

イレイン王国の外敵に対する武力と、魔術の更なる発展の為の研究機関を有し、魔術による犯罪の防止法も敷いているのが、エデン魔術協会である。

魔術展覧会の後、チェス達と別れてからそのエデン魔術協会に所属したエマは、魔術協会での仕事に明け暮れていた。

「エマさん、この書類を3日後までに仕上げてください」

「はい、かしこまりました」

エマは魔術協会で書類作成や整理といった仕事に携わっていた。理解が早く、要領のいい彼女はテキパキと仕事をこなす。

そして、あっという間に今日も一日が終わった。

「ふう…今日のお仕事もこれで終わり」

「エマちゃん、お疲れ様!」

「あっ、クロエさん。お疲れ様です」

「まだ10歳なのに本当に要領がいいね君は!もう明日の分の仕事も終わらせたのかい?」

「はい、魔術協会に身を置く者として、中途半端な仕事は出来ないなって」

「くう~、かっこいいねえ!良かったらこの後一緒に飲みに行かない?」

「はい!喜んで!….と言ってもわたし、まだ10歳なのでお酒は飲めませんが…それでも良いですか?」

「もちろんさ!ソフトドリンクもある店にしよう!」

「クロエ、エマ。ちょっと良いか?」

クロエとエマの会話に割って入る者が1人。金髪の、身長175cmほどの青年だった。

「あなたは…錬金術科のヨセフさんですよね?どうしてここに」

「ちょっと二人に見せたいものがあってな。少し時間をくれないか」

「えー!今エマちゃんと飲みに行こうって誘ったところなのにー!!」

「僕の研究成果が遂に完成したんだ。人造人間(ホムンクルス)を造る事に成功したんだよ」

「えっ!あの研究が進んでたやつ?」

「ああ。資料保管室にて保管してあるんだ。良ければ二人共見に来てくれないか」

「それなら行くよ!エマちゃんもいいよね?」

「はい。ホムンクルスを見てみたいです」

「それじゃあついておいで」

エマとクロエはヨセフの後をついていった。

♢♢♢

資料保管室。そこは魔術協会が創造したマジックアイテムや魔造生物などを保管しておく部屋のことである。一般には秘匿されており、限られた者達しか入れない。エマはまだ魔術協会に属して日が浅いが、優秀な業績を収めているのと、ヨセフという研究テーマ主任が立ち会う事でクロエと共に入室が許可されている。

「見えるかい。あの培養槽が」

エマが仄暗い部屋の中で目を凝らすと、そこにはオレンジ色の培養液の中に佇む人影があった。

「あれが…ホムンクルス?」

「そうだよ。僕らのチームが作った対魔物、対魔族の兵器さ」

「凄いな…外見はほとんど人間と変わらないじゃないか」

「ああ。ホムンクルスを形成するのは一般的な魔造人形や魔造生物を形成する魔石とは違って、賢者の石を使ってるからね。今は休眠状態にあるけど、眠りから覚めたら意思疎通もできるんだ」

「凄い….!それってイルミナさんやユーディットさんが魔術展覧会で作ったあのシャルロットさんの人形みたいなものですか?」

「違うね。全然違うよ、エマ。あれは人工の魔石で造られた魔造人形(ゴーレム)だ。賢者の石を核に作られたホムンクルスとは訳が違うのさ」

「そうなんですか…」

「そうそう。だからあんな三流の人形なんかと一緒にしないでほしいな。この最高傑作、ヴァイスとはね」

ヨセフは培養槽のガラスに触れ、うっとりとヴァイスと呼ばれたホムンクルスを見つめた。

「このホムンクルス、ヴァイスって名前なの?」

「そうさ。美しき白という意味だ。素敵だろう?」

「そうだね。でも、良いの?錬金術は人を作るなっていう掟があるんじゃなかったっけ?」

「ああ、それは過去の話さ。もう何百年の前のね。錬金術はさ、日々進歩してるんだよ」

「そっか…」

エマとクロエは神妙な顔で培養槽に入ったヴァイスを見つめる。

「で、完成はいつなの?」

「ああ、もう工程は最終チェックに入ってる。動作とかのチェックね。後は1週間もあれば完成するさ」

「発表はするんですか?」

「それに関してはね、発表はしない。秘密裏にクライアントに魔物とか魔族退治に貸し出して、どこまで戦えるのかをテストするのさ」

「そのクライアントって…?」

「冒険者達だよ。あいつらは金に困ってる。強靭な肉体、膨大な魔力を持つこのホムンクルスを巨額の金で貸し出せば、冒険者達は強力な力を持つ魔物を退治できる。そうしたら冒険者達も大きな魔石や魔物の持つマジックアイテムを入手できて、それを売り捌けばランクC以下の三流冒険者でも一気に富を得られる。僕らはそれを狙っているのさ」

「要は結局金の為、か…エデン魔術協会も腐ったもんだね」

「あの、聞きたいことがあるのですが…」

「何かな?」

エマが少し萎縮しながらヨセフに対して問いを投げかける。

「このホムンクルス…ヴァイスさんを構成する賢者の石って何から出来ているんでしょうか…?」

「ああ、それはね、大勢の魔物や魔族達の魔石から作られてるのさ。大昔、賢者の石は古代の時代には罪人みたいな人間の魂を使って造られてたらしいけど、今は例え犯罪者だろうと人間を素材に使うのは禁忌とされていてね、コボルトみたいな魔物とか魔族の魔石を体内から取り出して、それを大量に使用して賢者の石を作り出しているんだ」

「魔石って、魔物とか魔族みたいな、人間ではない人ならざる者達の臓器みたいなものですよね?それを取られた魔物とか魔族ってどうなるんですか…?」

「死ぬね」

「え….」

「当たり前じゃないか。魔石は魔物や魔族にとっては心臓みたいなものだ。それを取られたら死ぬに決まってるよ。心臓とか脳がない人間が生きられないのと同じさ」


「何でそんな酷い事を…!?」

「エマ、君は甘いよ。個人が独占する富とは多大なる犠牲の上に成り立つものだ。こればっかりは仕方ない犠牲じゃないか。それに、君だって魔族に父親を殺されたんだろう?恨みは抱いていないのかい?」

「確かにわたしは魔族にお父さんを殺されて、その魔族に恨みを抱いています。ですが、それとこれとは話は別です。魔物や魔族だって全てが人間に害を及ぼす種族というわけではありません。ただみんな平和に暮らしたいだけです。その平穏を踏み躙ってまで富を得たいのですか?」

「そうだよ。そして、このヴァイスを3億アトロで借りたいっていうC級の冒険者達が大勢いてね。抽選で貸し出すつもりさ。そして、次のターゲットが見つかった。ヴァイスが初陣で何の種族を狩るか、決まったんだよ」

「その種族とは?」

「人狼だよ。人にも狼の獣人の姿にもなれる魔族だ。あいつらは魔族の分際で高度な知能、文明を有している。その人狼の隠れ里が見つかったんだ。隠密魔法のマジックアイテムとか、魔族に特攻を発揮する武器、そしてこのホムンクルス、ヴァイスを貸し出して、ボクらは巨額の富を得るという訳さ」

「人….狼….」

その時、エマは思い出していた。齢5歳の頃、目の前で実の父の命を奪った人狼という魔族の事を。

「エマちゃん、どうしたんだい?」

「…..」

エマは目の前のヨセフに対する恐怖と、人狼を許したいという気持ち、そして、人狼なんて皆死んでしまえという怨嗟の葛藤に揺られていた。小さな身体は震えている。

「すみません、少し席を外します…」

「いいよ。ただ、君が意見をしても人狼の隠れ里への侵攻は変わらないけどね」

「…..っ」

エマは走り出し、資料保管室を後にした。

「ちょっと、エマちゃん!」

クロエが呼び止めるも、エマはその声を無視して遠くへ走って行ってしまった。

「まあ、彼女はまだ10歳だしショックを受けるのもわかるよ。ちょっと言いすぎたね。反省っと」


「ヨセフ、私も席外すね。今日は….これでさよなら」

クロエもなんとも言えない表情で資料保管室を去っていった。

「フフ…魔術協会は日々進歩し、研鑽を続ける…そしていつか、魔物や魔族を滅ぼすんだ….あははははは!!」

残されたヨセフは、資料保管室で一人、不気味な高笑いをした。

 
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