転生したら史上最強の猫ちゃんでした~唸れ肉球伝説~

岸谷 畔

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魔王アムダール復活編

第15話

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「あああ!!サム!!サムー!!!」

「うむ。やはり不味いものだな、人間の肉は」

人狼の里を冒険者達が襲撃して早一時間。人狼達はパトリックらを残して2体のホムンクルスの圧倒的な力の前に死に絶えた。が、人狼達は魔王に祈りを捧げた事で、その人狼達の躯を依代に魔王アムダールが復活。2体のホムンクルスはオラクルハイトへと退避し、残された冒険者達は魔王の糧となった。

「さて、これで全員食らいつくしたな。….ああ、死体とはいえ確かアレンとかいう餓鬼を食らった場にもう一体人間の骸があったのを忘れていた。今は復活したばかりの身だ。少しでも栄養分を確保すべきだな」

人狼の姿で舌なめずりをしたアムダールは、アルフォンスの亡骸がある場所へと戻っていった。

♢♢♢

「ん….」

パトリックは夜の深い闇の中、目を覚ました。周囲には微かだが血の匂いが充満している。

「え…ボクは…今まで一体….そうだ!長も、ジーリオも、シェーンも眠って….」

「おはよう」

地の底から響くような不気味な声。その声の主は、パトリックを人狼の姿で見下ろしていた。

「あなたは…誰ですか…?」

「俺か。俺はアムダール。魔王だ。故あって今は人狼の姿をしているがな」

「え….アムダール…?アムダールってあの魔王の…」

「そうだ。そして単刀直入に言う。お前達を除いて人狼は全て死に絶えた。人間共がお前達に強力な睡眠薬を飲ませ、眠らせた隙に強大な力を持つホムンクルスが人狼を殺害していったのだ。お前達の体内に存在する魔石を奪うためにな」

「….え….」

「ちょ、ちょっと待ってください!今日は年に一度のお祭りの日で、人狼と人間が楽しく過ごす日ですよ!?嘘だ!!」

パトリックはエドガー、ジーリオ、シェーンの身体を思い切りゆすって起こした。

「長!ジーリオ!シェーン!起きて!!起きてっ!!」

「ん….長いこと眠ってたの….どうしたんじゃパト…?」

「あれ….わたし….眠って….」

「うー….酔いがまだ覚めねえな」

3人は無事に目を覚ました。

「良かった….みんな無事だ….」

「ククク、3人ともそれなりに薬に対する耐性はあったみたいだな。流石は人狼族といったところか」

「なーんか周りが血生臭えな。あれ、俺、脚の太ももあたりがなんか刺されたみたいな傷できてる。結構血も出てるし。何だこれ?てか….お前誰だ?」

ジーリオはアムダールを見つめて警戒した。半ば臨戦態勢に入っている。

「ああ、別に警戒しなくていい。俺はお前達の敵ではないぞ。まあ、お前達が俺に歯向かわなければの話だが」

「あん?偉そうな口を効くじゃねえか。やるか?」

ジーリオは人狼の姿に変身しようとしたが、力が入らずに拍子抜けする。

「は?力入んねえ。なんだよこれ」

「間抜けめ。まあ、あのホムンクルスの能力を知らなければ無理もないか」

「さっきから何を言ってるんですか…?」

「ああ、説明しよう。ほんの少しショッキングな内容だがな」

♢♢♢

「嘘….じゃあみんな殺されて…!!」

「それでお前が俺達の仲間の身体を依代に呼び出されたって事かよ!?」

「ああ。そして悲劇は連続して起きるものだ。アルフォンスとかいうガキも死んだ」

「は…?」

「俺は虚空から見ていただけだが、最後までお前達の事を庇っていたぞ。人間の身でありながらな。今お前達が生きてるのはアルフォンスのおかげでもある」

「アルフォンスさんのご遺体はどこにあるんですか!?教えてください!!」

「俺が食った」

「…な….」

「喜べ。葬式の手間が省けただろう?」

「ふざけないでください….!」

パトリックは拳を握りしめ、アムダールに詰め寄る。

「アルフォンスさんを返せ!!!」

それは普段温厚なパトリックからは想像もできないような怒りだった。アムダールは胸ぐらを掴まれても涼しい顔をしている。

「ふむ、一応俺の体外にアルフォンスとかいうガキを出す事も出来るのだが、それをやっても意味ないぞ?もう消化されて、辛うじて心臓が残ってるだけだ。ほれ」

アムダールはそう言うと、黒いオーラを眼前に出現させ、そこに手を入れた。再び彼が手を出した時、そこには赤く脈打つ心臓だけが握りしめられていた。

「あ…アルフォンスさん….!!!」

パトリックはアムダールの手からその心臓をひったくり、優しく両手で握りしめた。パトリックの双眸からは涙が溢れていた。

「困るな。心臓や脳は人間にしろ魔族や魔物にしろ一番栄養価が高い部位だから、俺の糧にしたいのだが」

「黙れ!!アルフォンスさんをお前になんか渡すもんか!!」

「ククク、誰に口を聞いている?さあ、その心臓を渡せ。導(リード)」

「え….身体が勝手に….!!」

リード。それは禁忌とされた魔法。対象を誘導し、意のままに操る術である。

「よしよし、いい子だ。さあ、その心臓を喰らってやろう」

アムダールはパトリックがリードの魔法で手元に手繰り寄せたアルフォンスの心臓を再び喰らう。今度はオーラを介してではなく口で噛み砕いた。

「フン、人間にしては中々美味いな。ゲイト系呪文を使いこなせる程だから、魔力もそこそこ補給できる。俺の糧になるがいい」


「あああ….アルフォンスさん….アルフォンスさん….」

パトリックはその場に泣き崩れた。それを見ていた長も、ジーリオも、シェーンも、悲痛な顔をしている。

「ははは、奴は心臓を貫かれていた。あのヴァイスとかいうホムンクルスにな。ほっといても死ぬ命だ。なら俺の糧になった方が良いではないか?」

「黙れよ….!!黙れよ!!!いつかお前を殺してやるからな!!!」

パトリックはレイピアを抜き、アムダールに切っ先を向けた。

「フン、やってみるがいい。お前達が助かったのはこの俺のおかげだというのに。それにこの身体ーー人狼の姿のよしみでお前を生かそうかと思ったが、話が変わった。お前もいつか殺して喰らう。とはいえ、お前はクルースニクと人狼のハーフなのだろう?利用価値がありそうだ。すぐには殺さないから安心しろ」

「利用して、嬲って。飽きたら喰らってやる」

アムダールはパトリックに対して邪悪な笑みを浮かべた。

「しかし、これからどうしたものか….」

「本当に人狼達は全滅したのですか?あんなに強かったのに」

「ああ、全滅したぞ。ホムンクルス2体ごときにな。この里に一帯を見渡せる宮殿があっただろう。そこで見てみるがいい」

そして5人は人狼は宮殿に移動し、そこから人狼族の里を眺めた。そこには、荒涼とした街と、わずかな血痕だけが残されていた。

「やっぱり….!みんなあなたが食べてしまったんですか…!?」

「ああ。魔王の肉体を復活させる為に、俺が食った」

「そんな….お母さんに別れも言えなかった…ううう…」

シェーンは泣き崩れる。それをジーリオとエドガーが宥めた。その様子を見て、アムダールはニヤニヤと嗤っている。

「家族も他人のうちだろう?ましてやお前達は魔族だ。魔族は力が全て。ああ、俺が虚空で鎮座していた千年間でここまで魔族も魔物も軟弱になったか」

「お前なぁ、人の家族の遺体食っておいてよくそんな事言えるな。頭沸いてんじゃね」

「流石に今の発言はわしもいただけませんぞ。いくら魔王様だからといって、思いやりの欠片もないではないか!」

「思いやりだの、忖度だの。隣人を愛せだの。そんなものが何になる?全ては人間基準で作られたこうあるべきという下らぬものだ。さて、この人狼の姿は燃費が悪い。不本意だが、人間の姿になるか」

アムダールは人狼の姿から人間の姿へと姿を変えた。黒髪で金色の目をした青年の姿に。

「ふむ、屈辱だな。人間に殺された俺が人間の姿になる日が来るとは。まあ、これで魔力の消費は抑えられるし、カモフラージュにもなるから丁度いいが」

はあ、とアムダールは吐息を吐いた。まだまだ獲物を食い足りないという表情で。

「あの….これからどうするんですか?わたし達、もう住む場所も、暮らしていける居場所もなくて…」

「ああ。なら奪おうか。これから俺は、いや、俺達はオラクルハイトをはじめとする人間の都市に襲撃する。そして人間達を蹂躙して支配し、魔族の復権を狙う。そしてこの世界を支配する7人の天使達も一人残らず殺す。ククク、お前達にも協力してもらうぞ」

「でも…どうするんですか?わたし達はそれなりには戦えますが、人間達は数が多いです。とてもじゃないけど戦力が足りないし..」

「ああそれなら。人狼の隠れ里はこの里含めて2つあるのだろう?うち一つはカトレア帝国に存在する。カトレアに攻め込み、人狼と人間達を支配下に置く。そして俺の魔術ーーー残留思念を呼び出す魔術で戦力は補給できる。いくらでもな」

「残留思念?それって…」

「ああ、説明しよう。こう言う事だ」

アムダールは地面に手を伸ばし、黒い雫を指から出して大地に染み込ませた。すると、黒い小さな渦が出現した。

「おお、これは….」

その渦は魔族の姿を形成した。そう、それはこの地で殺された人狼の姿を象っていた。

「ふう、今はこんなものか」

「なんだよこいつ?人狼か?突然何もないところから現れやがった」

「これが俺の力だ。残留思念ーーすなわち、場に残った想いや無残にも散った魔族や魔物の魂を再現する魔術だな。この力を使って大量の兵を用意する。そいつらは思念体だから痛みも疲れも感じず、与えられた命令を忠実にこなす。そして、その魔術を行う為に、俺は更に魔力を蓄える。まずはこのイルリットの森一帯を支配している魔物でも喰らって魔力を回復するとしよう」

「ああ、お前らは俺の兵だ。道具だ。拒否権はない。こき使ってやるから安心しろ」

アムダールは邪悪な笑みで4人の人狼を見つめている。そして、高笑いを浮かべた。その笑いは、誰もいなくなった人狼の里にも響いていた。
 
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