転生したら史上最強の猫ちゃんでした~唸れ肉球伝説~

岸谷 畔

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魔王アムダール復活編

第14話

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「お前達は…僕が止める!!」

アルフォンスは手袋を装着し、冒険者達とホムンクルスに対峙した。

「あーあ、お前死んだな。魔族の味方なんかして。ヴァイスちゃんもお前を殺すって言ってるし」

「黙れ!!僕が焼き尽くしてやる!!極大炎撃(フィアンマゲイト)!!」

アルフォンスは手で印を組み、魔法を放った。それは、ゲイト系呪文と言われる、属性攻撃魔法の中でも最大級の威力を持つ攻撃魔法だった。アルフォンスの眼前に出現した魔法陣からは特大の炎が放たれる。その威力は、オラクルハイトの猫達が使う炎の魔法を遥かに凌駕したものだった。

が、その炎撃も、ヴァイスがマントで炎を防ぎ、弓矢を直接刃物のように炎に向かって振り下ろし、炎をかき消した。

「な….」

「お前結構やるじゃん。ゲイト系魔法を使えんのな。いやー、俺みたいな半端者は危うく消し炭になるところでしたわー」

ヴァイスは涼しい顔で立っている。その影に隠れる軽薄な男は、なんとも言えない顔でニヤニヤしていた。

「封印の弓(ズィーゲル・ベラーゲルング)」

「!!」

ヴァイスの竪琴のような弓矢から、大量の真空中の矢が周囲に向けて放たれる。アルフォンスは防御魔法でその矢を防いだ。

「盾(スクトゥム)!!」

アルフォンスと爆睡しているパトリック達の周囲に、光の盾が出現する。盾は真空中の弓矢を防いだが、そのうちの一つがアルフォンスの右手の甲を掠めた。

「えー、なんだよ。お前出来る奴だな。防御魔法も使えんのかよ。」

「そうだ!魔法は一通り習得している!」

「ふーん。でもね、今のヴァイスちゃんの技、あれ防ぐモンじゃなくて避けるモンなんだよね」

「何…どういう意味だ?」

アルフォンスは違和感にすぐに気づく。それはーー

「な…」

光の盾が強制的に解除されていた。

「僕はまだ盾を解除してない筈だ…!何故…!」

「あははは!!これがヴァイスちゃんの恐ろしさだよ!ただの真空中の矢を発射するだけじゃなく、その矢に少しでも当たった奴は自らの魔法や能力を長時間封印されるんだ!!もちろんそれは人狼も例外じゃねえよ?お得意の身体強化の魔法も、狼の姿への変身も出来なくなっちまう!」

ヴァイスの矢は、ジーリオだけではなく、パトリック、エドガー、シェーンの片脚を正確に掠めていた。

「そんな….!」

「で、何だっけ?お前の名前。アル中だっけ?最後のチャンスをやるよ。この場から消えろ。お前は人間だし才能もあるから助けてやるよ」


「断る!!僕はお前達には屈しない!!」

「あ、そう?折角最後のチャンスをあげたのになー。死ね」

「痛哭の調べ:光速(フェイルノート・ベロシティ)」

収束された真空の矢は、高速を超え、アルフォンスの胸部を貫いた。

「….はっ….」

アルフォンスはヴァイスに心臓を撃ち抜かれ、地に臥した。

「アレンー!!そっちは終わった?」

「おー、リナじゃんか。終わったぜ。なんか人間が邪魔してきたんだけど、ヴァイスちゃんが片付けてくれたし問題ねえよ」

「そっか!こっちはね、シュバルツさんが人狼を200人くらい殺したとこ!今ね、魔石を体内から抉り取ってる♪」

「やっぱホムンクルスはすげーや!人狼並の強さの魔族も瞬殺できるんだからな。いやー、毎日毎日C級がーって馬鹿にされてたけど、それでも希望を捨てないで良かったー!エデン魔術協会にも感謝だぜ!」

「なんかね、人狼の奴らかなりしぶとくてさ、胸部貫かれたくらいじゃ死なないの!今頃まだ辛うじて生きててのたうち回ってるよきっと!」

「ははは、そこそこ強い魔族だし、簡単に死ねないっつーデメリットがあるからな。恨むなら中途半端に頑丈な自分の身体を恨めって話だよな!さて、この4人の人狼も殺すか」

「さ….せない」

「ん?誰だよ?」

「パト…も。長も。シェー…ンも。ジーリ….オも。殺….させ…な….い」

「何何、瀕死の人狼が集まってきてんじゃん。やだー、ゴキブリみたいに。ヴァイスちゃん、完全に息の根止めちゃってー」

「かしこまりました」

ヴァイスは着実に、周囲に群がってきた人狼達の息の根を止めていく。重なる人狼達の躯。それをアレンは踏み付けて嘲笑する。

「魔族風情が調子に乗ってんじゃねえよ?クオリアス教を信仰してた奴らもいたみたいだけどな、お前らみたいな闇の存在はな、神の救いなんか来ねえんだよ!」

しかし、その時、集落でまだ辛うじて生きていた人狼達は祈った。それは人狼種の生存本能からくる祈り。目の前の冒険者を殺して欲しい殺意。優れた個体であるパトリックを生かしたいという思い。そんな複数の思いが、一つの祈りとなる。

その想いが、どこに届くかまでは想像もしないままでーー

『良かろう。契約はここに成立したーーー』

虚空から聞こえる、低くて不気味な声。その声は、冒険者達にも届いた。

「あ?何よ今の気持ち悪い声はーーって、なんだよこれ?」

アレンが周囲を見渡すと、黒いオーラが人狼達の躯に纏わりついていた。そのオーラは、人狼達の魔石を、躯を。食らっていくーー

「人狼共が…飲み込まれていく…?」

「は?魔石吸収してんの?おいおい、俺達の取り分がなくなっちまうじゃねえのよ!!ヴァイスちゃん、あの空中に浮かんでる澱みをかき消して!」

「御意」

ヴァイスは空中の黒い澱みに向かって真空の矢を放つ。しかし、その矢も澱みに吸収された。

「は?」

「対処不可能。申し訳ありません」

「いやいやいや!何とかしてよ!何のために3億アトロもかき集めて君を雇ったと思ってんの!?」

『我が名において、貴様らの願いを叶えよう。代償として、貴様らの全てを貰い受ける』

人狼達の肉体や魔石を飲み込んだ澱みから、一滴の滴が零れ落ちた。それは明らかに聖なるものではない、邪悪を煮詰めた何か。神を、天使を冒涜するものーーー

「長き封印より貴様ら人狼を依代としてここに我は蘇った。我が名をその魂に刻み込め。我は魔王アムダール。現世に蘇りし魔王である!!」

ヴァイス達の眼前に、身長が3メートルはある巨大な人狼が姿を現した。黒く、闇夜の帳のような色の人狼は、ヴァイス達が仕留めた人狼とは明らかに違う邪悪なオーラを放っていた。

「ま…魔王…様….?」

アムダールと名乗った人狼の近くに倒れ伏していた瀕死の人狼が、魔王に這いつくばり駆け寄る。希望とも、安堵とも取れるような表情を浮かべながら。

「ああ、俺は魔王だ。もうじきお前は死ぬが、俺の中で生き続けるが良い」

アムダールはそう言うと、身体から黒いオーラを出し、その人狼をオーラの中へと吸収した。

「人狼が…人狼を食べてる…!?それに、魔王アムダールって、シャルロット・クローリーに斃されたっていうあの….?」

「ククク、そうだ。全盛期程とまではいかないが、人狼という中々に強靭な肉体を持つ魔族を依代に出来たことは幸運だった。さあ、お前らの命を貰い受けるぞ」

アムダールはそう言うと、アレンとリナの足元から黒い澱みを出現させた。

「なんだっ….なんだよこれ!?痛え、痛ええええええ!!!」

「きゃああああ!!私の肉が抉られて食われていくううう!!!」

その澱みは蛇のような形状になり、アレンとリナの身体を喰らい始めた。

「うむ。不味い。所詮人間の肉など取るに足りんな」

「やめろ!!やめろっつてんだろぉ!!死ねえ!!」

アレンは腰からナイフを取り出し、自らが使える支援魔法で強化してアムダールに投げつける。しかし、アムダールはそのナイフを手で何事もなかったかのように受け止め、再びアレンとリナの身体を食らい続ける。

「無駄。この程度の支援魔法しか使えんとは芸の無い」

「あああ!!ああああ!!!」

「ああ、一つ聞くが」

「何よ!?何なのよおおお!!」

「お前達は餌が、家畜が食べるのを、殺すのをやめてくださいって言ったらやめるのか?」

「ああああああ!!!!クソッタレがー!!!!」

アレンとリナは呪いの言葉を吐きながら、アムダールに捕食された。

「ふう、食事も終わった。さて、次だがーー」

アムダールはヴァイスを見つめる。

「お前を喰らうとしよう」

「退避します。冒険者の皆さんにお伝えします。お疲れ様でした。後は自力での対処をお願い申し上げます」

ヴァイスはそう言うと、マントに姿を包み、いつの間にか消えてしまった。

「フン、逃げたか。あのホムンクルスを喰らえば賢者の石のエネルギーを蓄えられたものをーーーむ?」

アムダールは横腹に違和感を感じて触る。そこにはヴァイスがいつの間にか打ち込んだ真空の矢による出血を伴う傷ができていた。

「チ、あのホムンクルスが…まあいい。さて、他にも冒険者達がいるみたいだな。俺の魔力感知がそう告げているーーまずはそれを喰らうとするか。不味い肉だがな」

アムダールは残りの冒険者達の殲滅に向かった。
 
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