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第2話 月夜の出会い
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ナアト王国の南部に広がるこの広大なジャングルは、ナアト王国と隣国の間にまたがっており、隣国との国境にもなっている。
そんなジャングルに、僕は手ぶらで何の後ろ盾もない状態で放り出されたのである。
これからどうしよう。何をすればいいのだろう。時刻はもう夜だ。食べるものもなく、空腹だ・・・。
僕は途方に暮れながら、模倣属性の魔法によって習得した、弱めの火を放つ火属性の魔法を、そのあたりから適当に拾ってきたそれなりに柄の長い木の棒の先端に灯し、松明にした。
その松明を持ち、闇が広がる森の中を進む。しばらく進むと、大きな泉のある森の湖畔に到着した。満月を鏡のように映すその泉に、一人の人影が目に入った。
「あれは・・・人間かな・・・?」
僕は静かに獣化し、獣人へと姿を変えた。獅子獣人はネコ科の獣人の為、夜は目が利く。獣人の姿になると、そういった視力のような点も含めて身体能力が増す。僕はその人影の正体を確かめる為に、茂みに隠れながらある程度まで距離を縮めた。
「あ・・・あれは・・・!!」
それは僕と同じか、少し年下くらいの少女だった。正確な年齢を言うと、14~15歳くらいだろうか。その少女は、裸体で湖に入り、沐浴をしていた。
その姿を見て、僕は慌てて茂みの中に入り、必死で息を殺す。僕は今15歳。思春期真っ盛りだ。あのような異性の姿を見て、興奮しないはずがない。そして、ついうっかり気になってしまい、股間を触ってしまった。
「くっ・・・やっぱり・・・・!」
立っていた。アレが立っていた。平静を装っていても、やはりアソコは正直である。また、獣人の姿、いくら顔は獣で体は毛で覆われていても、アソコの形状は人間とほぼ変わらない・・・というか、何を思っているんだ僕は。
茂みにひっそりと隠れながら、30分ほどが経過した。なんでこのジャングルの中に女の子が夜に一人でいるんだという疑問からか、色々と考えてしまった結果、この場に思いもよらずとどまってしまったが、とりあえずはこの場を離れよう・・・と思った瞬間、後ろから声がした。それは柔らかく、春のそよ風のような声。
「あの」
「ひゃあっ!!??」
僕はつい、叫び声をあげてしまった。そして後ろを振り返る。するとそこにいたのは、さっきまで湖で沐浴をしていたと思われる少女だった。沐浴はもう終わったのか、彼女はもう全裸ではなく、襟や袖の部分に三角形が噛み合った模様があしらわれた、黒い衣装を身にまとっていた。
「あ・・・あ・・・・」
僕は再びギンギンになったアソコを手で覆い隠しながら、何かを言わなければと必死で言葉を紡ごうとする。も、何も出てこない。
「ふふ、そんなに緊張をなさならなくても良いのですよ?わたしはこの森に暮らす者です。・・・あら?」
その女の子は僕の下半身を見て、全てを察したようだ。
「ふふっ、やっぱりあなたは男の子なのですね・・・もしかしてわたしの沐浴の姿を見ていたのですか?」
「え!?いや違うよ!!みみみ見てません!!!」
必死で僕はごまかし続ける。が、彼女にはすべてお見通しだったようだ。
「・・・嘘をつかなくても良いのですよ。あなた様が今日ここに来て、わたしの沐浴を覗く、ということも、全てわかっています。そして、あなたが王族を追放されたということも」
「・・・・え」
僕は頭を傾げた。僕が王族を追放されたという事実は、不必要な問題を防ぐために、公にはしていないはずだ。それを何故、彼女が知っている?僕は少し不思議になって訊ねる。
「あの・・・僕が王族を追放されたということを何で君が知ってるの?・・・もしかして、僕が何者なのかということにも気づいているの?」
「ええ。あなた様は、ナアト王国の第9王子、シン。人と獣の二つの姿を持つ者にして、模倣というこの世界において唯一無二の属性を持つ者ーーーー」
「君は・・・一体・・・・」
「わたしはリヤ。元、ナアト王国の司祭にして、今は単なるしがない森に住む占い師です。わたしには未来を見通す力があります。だからこそ、今日、あなたがここに来るということがわかっていたからこそ、ここでお待ちしておりました」
「僕を待っていただって?・・・君は何が目的なんだ?」
「今、時代は改革の時を迎えています。ナアト王国・・・いや、シャンドラ大陸に根付いた、生まれた時から全てが決まるという悪しき考え。それらを断ち切る力を、あなた様は持っています。わたしと共に、国を作りましょう。・・・今日はもう夜も更けました。わたしの住む家がある場所まで案内します。続きはそこでお話ししましょう」
リヤと名乗った女の子はにっこりと笑い、僕の手を引いてゆっくりと歩き出した。それにしても、僕は今獣人の姿なのに、よく怖がらないな。こんなことって始めてだ。
かくして僕は、このリヤと出会い、彼女の居住している場所を目指して森の湖畔を後にした。
そんなジャングルに、僕は手ぶらで何の後ろ盾もない状態で放り出されたのである。
これからどうしよう。何をすればいいのだろう。時刻はもう夜だ。食べるものもなく、空腹だ・・・。
僕は途方に暮れながら、模倣属性の魔法によって習得した、弱めの火を放つ火属性の魔法を、そのあたりから適当に拾ってきたそれなりに柄の長い木の棒の先端に灯し、松明にした。
その松明を持ち、闇が広がる森の中を進む。しばらく進むと、大きな泉のある森の湖畔に到着した。満月を鏡のように映すその泉に、一人の人影が目に入った。
「あれは・・・人間かな・・・?」
僕は静かに獣化し、獣人へと姿を変えた。獅子獣人はネコ科の獣人の為、夜は目が利く。獣人の姿になると、そういった視力のような点も含めて身体能力が増す。僕はその人影の正体を確かめる為に、茂みに隠れながらある程度まで距離を縮めた。
「あ・・・あれは・・・!!」
それは僕と同じか、少し年下くらいの少女だった。正確な年齢を言うと、14~15歳くらいだろうか。その少女は、裸体で湖に入り、沐浴をしていた。
その姿を見て、僕は慌てて茂みの中に入り、必死で息を殺す。僕は今15歳。思春期真っ盛りだ。あのような異性の姿を見て、興奮しないはずがない。そして、ついうっかり気になってしまい、股間を触ってしまった。
「くっ・・・やっぱり・・・・!」
立っていた。アレが立っていた。平静を装っていても、やはりアソコは正直である。また、獣人の姿、いくら顔は獣で体は毛で覆われていても、アソコの形状は人間とほぼ変わらない・・・というか、何を思っているんだ僕は。
茂みにひっそりと隠れながら、30分ほどが経過した。なんでこのジャングルの中に女の子が夜に一人でいるんだという疑問からか、色々と考えてしまった結果、この場に思いもよらずとどまってしまったが、とりあえずはこの場を離れよう・・・と思った瞬間、後ろから声がした。それは柔らかく、春のそよ風のような声。
「あの」
「ひゃあっ!!??」
僕はつい、叫び声をあげてしまった。そして後ろを振り返る。するとそこにいたのは、さっきまで湖で沐浴をしていたと思われる少女だった。沐浴はもう終わったのか、彼女はもう全裸ではなく、襟や袖の部分に三角形が噛み合った模様があしらわれた、黒い衣装を身にまとっていた。
「あ・・・あ・・・・」
僕は再びギンギンになったアソコを手で覆い隠しながら、何かを言わなければと必死で言葉を紡ごうとする。も、何も出てこない。
「ふふ、そんなに緊張をなさならなくても良いのですよ?わたしはこの森に暮らす者です。・・・あら?」
その女の子は僕の下半身を見て、全てを察したようだ。
「ふふっ、やっぱりあなたは男の子なのですね・・・もしかしてわたしの沐浴の姿を見ていたのですか?」
「え!?いや違うよ!!みみみ見てません!!!」
必死で僕はごまかし続ける。が、彼女にはすべてお見通しだったようだ。
「・・・嘘をつかなくても良いのですよ。あなた様が今日ここに来て、わたしの沐浴を覗く、ということも、全てわかっています。そして、あなたが王族を追放されたということも」
「・・・・え」
僕は頭を傾げた。僕が王族を追放されたという事実は、不必要な問題を防ぐために、公にはしていないはずだ。それを何故、彼女が知っている?僕は少し不思議になって訊ねる。
「あの・・・僕が王族を追放されたということを何で君が知ってるの?・・・もしかして、僕が何者なのかということにも気づいているの?」
「ええ。あなた様は、ナアト王国の第9王子、シン。人と獣の二つの姿を持つ者にして、模倣というこの世界において唯一無二の属性を持つ者ーーーー」
「君は・・・一体・・・・」
「わたしはリヤ。元、ナアト王国の司祭にして、今は単なるしがない森に住む占い師です。わたしには未来を見通す力があります。だからこそ、今日、あなたがここに来るということがわかっていたからこそ、ここでお待ちしておりました」
「僕を待っていただって?・・・君は何が目的なんだ?」
「今、時代は改革の時を迎えています。ナアト王国・・・いや、シャンドラ大陸に根付いた、生まれた時から全てが決まるという悪しき考え。それらを断ち切る力を、あなた様は持っています。わたしと共に、国を作りましょう。・・・今日はもう夜も更けました。わたしの住む家がある場所まで案内します。続きはそこでお話ししましょう」
リヤと名乗った女の子はにっこりと笑い、僕の手を引いてゆっくりと歩き出した。それにしても、僕は今獣人の姿なのに、よく怖がらないな。こんなことって始めてだ。
かくして僕は、このリヤと出会い、彼女の居住している場所を目指して森の湖畔を後にした。
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