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第3話 業
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リヤと名乗る少女と共に夜の森をしばらく歩いた僕は、彼女の住んでいる場所へと到着した。
「これは・・・・」
そこで僕が目にしたものは、丸太で出来た塀に囲まれた、小さな集落だった。今は深夜のため、明かりが消えているが、それなりの数の家屋が立っており、それぞれ守りを固めるべき場所には番兵らしき人間達も配置されており、警備に勤しんでいた。
「リヤ様、お帰りなさいませ」
「戻りましたよ、マヘンドラ」
「・・・そちらの方は?」
マヘンドラと呼ばれた屈強な男は、僕に対して敵なのかどうかを確かめるため、突き刺すような視線を向ける。しかし、リヤと一緒に居るからなのか、僕を殺そうとするような意思は感じられなかった。
「ふふ、紹介します。このお方こそ、ナアト王国の第9王子、シン様です」
「・・・・!なんと・・・!一週間ほど前にリヤ様が仰っていた、王族の方というのは、あなた様でしたか・・・!」
マヘンドラはざっ、と僕に対して体をかがめた。先ほどまでの威圧感はどこへやら、もはやこれでは僕の従者以外の何者でもない。
「あの・・・えっと・・・リヤ、もしかして僕の事ってもうこの集落に伝わってるの?」
「はい。わたしが予言で見た未来の映像を、水晶玉を通してこの集落の皆さんにはお伝えしてあります。もちろん、わたし達が出会うタイミングも・・・」
「いや・・・そこから先は言わないでいいよ。・・・てゆうか言わないで・・・」
僕はあの湖畔での出来事をまた思い出してしまい、顔を赤らめた。
リヤはその後、僕をある家屋まで案内した。
「着きましたよ。ここが、わたし達がこれから一緒に暮らす場所です」
「うわぁ・・・他の家屋よりも豪華な作りだね・・・」
「ええ。わたしはもうただの占い師でしかないのですが、元々は司祭に属していた人間ということで、この集落の建築家の皆様がこのような作りにしてくれたのです。さあ、中にお入りください」
リヤと共に、僕はその建物の中へと入る。建物の中は2階建てで、ペルシャ絨毯が敷かれていたり、お香の香りが漂っていたりと、外装に違わず豪華な作りになっていた。
「ここがわたし達の寝室です。さあ、今日はもう疲れたでしょう?ゆっくりなさってください」
リヤに案内された部屋は広く、小綺麗な作りだった。ベッドは新しく、ふかふかで、僕一人が寝るには広すぎる大きさでもある。
「ありがとう、リヤ。・・・僕、人からこんなに親切にしてもらったの初めて・・・」
「ふふ、シン様は他者に今まで親切にしてきたから、こうして巡り巡って自分に返ってきたのですよ。いわゆる"業カルマ"というやつです」
「カルマ・・・か。うん、知ってるよ。良い行いをすれば良いことが自分に返ってきて、悪い行いをすれば悪いことが自分に返ってくるってやつでしょ?宮廷でも習ったなぁ」
「そう。業は絶対です。・・・・シン様の過去も、わたしは拝見させていただきました。あなたは家族、それも王族に捨てられました。・・・しかし、あなたを捨てた方々にも、きっと業は返ってくるでしょう。"破滅"という形で―――」
リヤは微笑みながら、僕に向かって業についてを語った。しかし、なぜだろうか、穏やかな表情であるのに確実に王族に対して良い思いを抱いていないというのが伝わってくる。
こうして、リヤと話しているうちに、僕は眠りに落ちていった。
そして時刻は朝に移る。窓から差し込む光で、僕は目を覚ました。そして、リヤに挨拶をし、彼女が作った朝食を食べて、身支度をする。
「シン様、この集落の皆様に是非ともご挨拶をしていただきたいのです」
「うん!さあ、行こっか!」
僕とリヤは、リヤの家を後にした。
「これは・・・・」
そこで僕が目にしたものは、丸太で出来た塀に囲まれた、小さな集落だった。今は深夜のため、明かりが消えているが、それなりの数の家屋が立っており、それぞれ守りを固めるべき場所には番兵らしき人間達も配置されており、警備に勤しんでいた。
「リヤ様、お帰りなさいませ」
「戻りましたよ、マヘンドラ」
「・・・そちらの方は?」
マヘンドラと呼ばれた屈強な男は、僕に対して敵なのかどうかを確かめるため、突き刺すような視線を向ける。しかし、リヤと一緒に居るからなのか、僕を殺そうとするような意思は感じられなかった。
「ふふ、紹介します。このお方こそ、ナアト王国の第9王子、シン様です」
「・・・・!なんと・・・!一週間ほど前にリヤ様が仰っていた、王族の方というのは、あなた様でしたか・・・!」
マヘンドラはざっ、と僕に対して体をかがめた。先ほどまでの威圧感はどこへやら、もはやこれでは僕の従者以外の何者でもない。
「あの・・・えっと・・・リヤ、もしかして僕の事ってもうこの集落に伝わってるの?」
「はい。わたしが予言で見た未来の映像を、水晶玉を通してこの集落の皆さんにはお伝えしてあります。もちろん、わたし達が出会うタイミングも・・・」
「いや・・・そこから先は言わないでいいよ。・・・てゆうか言わないで・・・」
僕はあの湖畔での出来事をまた思い出してしまい、顔を赤らめた。
リヤはその後、僕をある家屋まで案内した。
「着きましたよ。ここが、わたし達がこれから一緒に暮らす場所です」
「うわぁ・・・他の家屋よりも豪華な作りだね・・・」
「ええ。わたしはもうただの占い師でしかないのですが、元々は司祭に属していた人間ということで、この集落の建築家の皆様がこのような作りにしてくれたのです。さあ、中にお入りください」
リヤと共に、僕はその建物の中へと入る。建物の中は2階建てで、ペルシャ絨毯が敷かれていたり、お香の香りが漂っていたりと、外装に違わず豪華な作りになっていた。
「ここがわたし達の寝室です。さあ、今日はもう疲れたでしょう?ゆっくりなさってください」
リヤに案内された部屋は広く、小綺麗な作りだった。ベッドは新しく、ふかふかで、僕一人が寝るには広すぎる大きさでもある。
「ありがとう、リヤ。・・・僕、人からこんなに親切にしてもらったの初めて・・・」
「ふふ、シン様は他者に今まで親切にしてきたから、こうして巡り巡って自分に返ってきたのですよ。いわゆる"業カルマ"というやつです」
「カルマ・・・か。うん、知ってるよ。良い行いをすれば良いことが自分に返ってきて、悪い行いをすれば悪いことが自分に返ってくるってやつでしょ?宮廷でも習ったなぁ」
「そう。業は絶対です。・・・・シン様の過去も、わたしは拝見させていただきました。あなたは家族、それも王族に捨てられました。・・・しかし、あなたを捨てた方々にも、きっと業は返ってくるでしょう。"破滅"という形で―――」
リヤは微笑みながら、僕に向かって業についてを語った。しかし、なぜだろうか、穏やかな表情であるのに確実に王族に対して良い思いを抱いていないというのが伝わってくる。
こうして、リヤと話しているうちに、僕は眠りに落ちていった。
そして時刻は朝に移る。窓から差し込む光で、僕は目を覚ました。そして、リヤに挨拶をし、彼女が作った朝食を食べて、身支度をする。
「シン様、この集落の皆様に是非ともご挨拶をしていただきたいのです」
「うん!さあ、行こっか!」
僕とリヤは、リヤの家を後にした。
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