11 / 13
第11話 命を頂くということ
しおりを挟む
僕がリヤやマヘンドラのいる集落に来てから、もうすぐ2ヶ月が経過しようとしていた。僕はこの集落に来てから、集落の民の生活に協力した。
ある日は最初にこの村に来た時のようにアーシャと共に、魔法で作物の成長を早め、それを収穫する農作業に従事したり。
またある日は、マヘンドラをはじめとする戦闘力が高い民と共に、ジャングルに生息する動物を狩りに行ったりもした。
「シン様、見えますか?あれが私達がいつも肉料理を使う際に食材として重宝しているアルミラージという動物です」
「うん。聞いたことあるよ。市場でたくさん売っているのを見かけたこともね。」
アルミラージとは、チャンドラ大陸に生息している、額に角の生えた茶色い毛並みの、体長が50cmほどの野ウサギだ。角の一撃は強力で、自分に危害を加える者に対しては反撃してくるが、基本的には臆病な動物であり、こちらから何かしない限りは手は出してこない。人の気配を察知することに長けており、すぐ逃げてしまう。そのため、捕獲は難しい動物だが、角は薬に、肉は米料理などと炊くと美味しく頂ける食材となる。
「本日は、そのアルミラージの命を頂くための行動を行い、それをシン様にも実行して頂きます。・・・もう何をするのかはおわかりですね?」
僕はゴクリと息をのんだ。そう、マヘンドラがそのセリフを言う前から。僕が今日、これから何をするのか、ということはなんとなくわかっていた。僕はこれから、生き物を。他者を。殺すのだーーーーー
「アルミラージはとても警戒心の強い動物で、これ以上近づくと逃げられてしまいます。ですから、この距離から仕留めたいと思います。まずは私の狩りを見ていてください」
マヘンドラはシンに自分の狩りを見ていろと告げると、アルミラージめがけて短めの槍を放つ。アルミラージとマヘンドラの位置はおよそ20m程度あったが、マヘンドラの放った槍はアルミラージに見事命中し、首と胴体を一瞬で分断した。
「シン様、見ていただけましたか?これがアルミラージの仕留め方です!」
マヘンドラは息一つつかず、僕に対して爽やかな笑みを向けた。生きるために必要な行為であるが、熊の首を切り落とす時同様、僕は恐怖を感じていた。なんだろう、マヘンドラは首を切り落とす趣味でもあるのだろうか。そう思って僕は訊ねてみたが、別にそういった趣味はなく、獲物は最終的に食べるものであり、仕留め方として、首を一瞬で切り落とすと、獲物に対して余計なストレスを与えず、旨味などの成分を落とさずに済むのだそうだ。・・・良かった、マヘンドラがサイコパスじゃなくて。僕はそっと、胸をなでおろした。
「さあ、シン様もやってみてください!私に勝ったシン様であれば、確実にできるはずです!」
僕は新たなアルミラージを見つけ出し、再び20m程離れ、茂みの中からマヘンドラから借りた槍を手に構える。
僕の属性、模倣は魔法による攻撃だけではなく、他人の動きをコピーすることも可能だ。打撃はもちろん、剣術、槍術、そして最近他国から伝わった銃を扱う際の動きなどにも対応している。さっき見たマヘンドラの槍を放つ動きは、既に僕の脳裏に記憶されていた。
そして僕は、気配を遮断し、静かに獣化する。これにより大幅に上がった動体視力で20m程離れたアルミラージを視界にとらえ、そこ向かって槍を放った。
結果は見事アルミラージに、僕の放った槍は命中した。が、いくら模倣属性で他人の動きを吸収するのが早い僕といえども、マヘンドラほどの手練れではないため、流石に一瞬で獲物の首と胴体を分断するほどの技量はない。槍が胴体に刺さったアルミラージに近づくと、どうやらまだ生きているようであった。槍が刺さった傷口からはドクドクと大量の鮮血が溢れ出している。
「・・・どうやらまだ生きているようですな。さあ、シン様、とどめを」
「うん・・・」
僕は心の中でごめんなさいと思いながら、アルミラージの首と胴体を刀で分断し、とどめを刺した。
「・・・よし!これで今日、私が伝えたかったことは全て伝え終わりました。シン様は基本的な狩りの技術もさることながら、命を頂くということが何たることかということもわかっていらっしゃる」
「命を・・・頂くということ・・・」
「そうです。先ほどあなたは、アルミラージを屠ることに対して、躊躇していましたね。その心意気が大切なのです。私もはじめは、この行為に関してはどうしても慣れませんでした。まだ私があなた様くらいの年齢だった頃は、あなた様と同じように、命を奪うということに抵抗がありました」
「しかし、それはこれから頂く命に対して心から感謝の念を送ることが出来るということ。近頃はそれを忘れた輩が多すぎる!しかし、あなた様は違う。あなた様は、全ての命を尊重し、慈しみ、感謝ができる方だ。・・・きっと良い王になれますよ」
僕はマヘンドラのその言葉を聞き、少しだけ自信が湧いてきた。王族として僕に足りなかったのは覇気やカリスマ性、絶対なる力。僕は今まで、暴力こそが全ての力だと思っていた節があった。他者を支配するために、惹きつけるために必要なのは、力。それがない僕は、王族として、人の上に立つ者として、失格だと思っていた。それを彼は今、違うと言ってくれたのだ。僕の家族や民衆にずっと否定されてきた、甘さを肯定してくれたのだ。それだけでーーーー
「・・・・」
「シン様?泣いていらっしゃるのですか?」
僕はいつの間にか、涙を流していた。仮にも王族なのに、みっともない。でも、マヘンドラはそんな僕に対して、再び優しい言葉をかけてくれた。
「シン様、そう気負わずに。シン様にはこれから、里の長ーーーーいえ、リヤ様の予言によれば、大国の主として皆の上に立っていただく存在ではあります。しかし、私達の前では、一人の年相応の者としての姿を見せてくれてもいいのですよ」
「・・・ありがとう、マヘンドラ」
「さあ、行きましょうか、再び狩りへ!・・・次は熊を狩りに行きましょうぞ!前に私が退治した熊の肉は美味だと里の民からも好評でした!」
「うん!」
僕らは再び、狩りへと繰り出した。
一方その頃、集落のちょうど上空。一つの影が、上空から落ちてきていたーーーー
ある日は最初にこの村に来た時のようにアーシャと共に、魔法で作物の成長を早め、それを収穫する農作業に従事したり。
またある日は、マヘンドラをはじめとする戦闘力が高い民と共に、ジャングルに生息する動物を狩りに行ったりもした。
「シン様、見えますか?あれが私達がいつも肉料理を使う際に食材として重宝しているアルミラージという動物です」
「うん。聞いたことあるよ。市場でたくさん売っているのを見かけたこともね。」
アルミラージとは、チャンドラ大陸に生息している、額に角の生えた茶色い毛並みの、体長が50cmほどの野ウサギだ。角の一撃は強力で、自分に危害を加える者に対しては反撃してくるが、基本的には臆病な動物であり、こちらから何かしない限りは手は出してこない。人の気配を察知することに長けており、すぐ逃げてしまう。そのため、捕獲は難しい動物だが、角は薬に、肉は米料理などと炊くと美味しく頂ける食材となる。
「本日は、そのアルミラージの命を頂くための行動を行い、それをシン様にも実行して頂きます。・・・もう何をするのかはおわかりですね?」
僕はゴクリと息をのんだ。そう、マヘンドラがそのセリフを言う前から。僕が今日、これから何をするのか、ということはなんとなくわかっていた。僕はこれから、生き物を。他者を。殺すのだーーーーー
「アルミラージはとても警戒心の強い動物で、これ以上近づくと逃げられてしまいます。ですから、この距離から仕留めたいと思います。まずは私の狩りを見ていてください」
マヘンドラはシンに自分の狩りを見ていろと告げると、アルミラージめがけて短めの槍を放つ。アルミラージとマヘンドラの位置はおよそ20m程度あったが、マヘンドラの放った槍はアルミラージに見事命中し、首と胴体を一瞬で分断した。
「シン様、見ていただけましたか?これがアルミラージの仕留め方です!」
マヘンドラは息一つつかず、僕に対して爽やかな笑みを向けた。生きるために必要な行為であるが、熊の首を切り落とす時同様、僕は恐怖を感じていた。なんだろう、マヘンドラは首を切り落とす趣味でもあるのだろうか。そう思って僕は訊ねてみたが、別にそういった趣味はなく、獲物は最終的に食べるものであり、仕留め方として、首を一瞬で切り落とすと、獲物に対して余計なストレスを与えず、旨味などの成分を落とさずに済むのだそうだ。・・・良かった、マヘンドラがサイコパスじゃなくて。僕はそっと、胸をなでおろした。
「さあ、シン様もやってみてください!私に勝ったシン様であれば、確実にできるはずです!」
僕は新たなアルミラージを見つけ出し、再び20m程離れ、茂みの中からマヘンドラから借りた槍を手に構える。
僕の属性、模倣は魔法による攻撃だけではなく、他人の動きをコピーすることも可能だ。打撃はもちろん、剣術、槍術、そして最近他国から伝わった銃を扱う際の動きなどにも対応している。さっき見たマヘンドラの槍を放つ動きは、既に僕の脳裏に記憶されていた。
そして僕は、気配を遮断し、静かに獣化する。これにより大幅に上がった動体視力で20m程離れたアルミラージを視界にとらえ、そこ向かって槍を放った。
結果は見事アルミラージに、僕の放った槍は命中した。が、いくら模倣属性で他人の動きを吸収するのが早い僕といえども、マヘンドラほどの手練れではないため、流石に一瞬で獲物の首と胴体を分断するほどの技量はない。槍が胴体に刺さったアルミラージに近づくと、どうやらまだ生きているようであった。槍が刺さった傷口からはドクドクと大量の鮮血が溢れ出している。
「・・・どうやらまだ生きているようですな。さあ、シン様、とどめを」
「うん・・・」
僕は心の中でごめんなさいと思いながら、アルミラージの首と胴体を刀で分断し、とどめを刺した。
「・・・よし!これで今日、私が伝えたかったことは全て伝え終わりました。シン様は基本的な狩りの技術もさることながら、命を頂くということが何たることかということもわかっていらっしゃる」
「命を・・・頂くということ・・・」
「そうです。先ほどあなたは、アルミラージを屠ることに対して、躊躇していましたね。その心意気が大切なのです。私もはじめは、この行為に関してはどうしても慣れませんでした。まだ私があなた様くらいの年齢だった頃は、あなた様と同じように、命を奪うということに抵抗がありました」
「しかし、それはこれから頂く命に対して心から感謝の念を送ることが出来るということ。近頃はそれを忘れた輩が多すぎる!しかし、あなた様は違う。あなた様は、全ての命を尊重し、慈しみ、感謝ができる方だ。・・・きっと良い王になれますよ」
僕はマヘンドラのその言葉を聞き、少しだけ自信が湧いてきた。王族として僕に足りなかったのは覇気やカリスマ性、絶対なる力。僕は今まで、暴力こそが全ての力だと思っていた節があった。他者を支配するために、惹きつけるために必要なのは、力。それがない僕は、王族として、人の上に立つ者として、失格だと思っていた。それを彼は今、違うと言ってくれたのだ。僕の家族や民衆にずっと否定されてきた、甘さを肯定してくれたのだ。それだけでーーーー
「・・・・」
「シン様?泣いていらっしゃるのですか?」
僕はいつの間にか、涙を流していた。仮にも王族なのに、みっともない。でも、マヘンドラはそんな僕に対して、再び優しい言葉をかけてくれた。
「シン様、そう気負わずに。シン様にはこれから、里の長ーーーーいえ、リヤ様の予言によれば、大国の主として皆の上に立っていただく存在ではあります。しかし、私達の前では、一人の年相応の者としての姿を見せてくれてもいいのですよ」
「・・・ありがとう、マヘンドラ」
「さあ、行きましょうか、再び狩りへ!・・・次は熊を狩りに行きましょうぞ!前に私が退治した熊の肉は美味だと里の民からも好評でした!」
「うん!」
僕らは再び、狩りへと繰り出した。
一方その頃、集落のちょうど上空。一つの影が、上空から落ちてきていたーーーー
0
あなたにおすすめの小説
魔物に嫌われる「レベル0」の魔物使い。命懸けで仔犬を助けたら―実は神域クラスしかテイムできない規格外でした
たつき
ファンタジー
魔物使いでありながらスライム一匹従えられないカイルは、3年間尽くしたギルドを「無能」として追放される。 同世代のエリートたちに「魔物避けの道具」として危険な遺跡に連れ出され、最後は森の主(ヌシ)を前に囮として見捨てられた。
死を覚悟したカイルが崩落した壁の先で見つけたのは、今にも息絶えそうな一匹の白い仔犬。 「自分と同じように、理不尽に見捨てられたこの子だけは助けたい」 自分の命を顧みず、カイルが全魔力を込めて「テイム」を試みた瞬間、眠っていた真の才能が目覚める。
アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身
にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。
姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
この聖水、泥の味がする ~まずいと追放された俺の作るポーションが、実は神々も欲しがる奇跡の霊薬だった件~
夏見ナイ
ファンタジー
「泥水神官」と蔑まれる下級神官ルーク。彼が作る聖水はなぜか茶色く濁り、ひどい泥の味がした。そのせいで無能扱いされ、ある日、無実の罪で神殿から追放されてしまう。
全てを失い流れ着いた辺境の村で、彼は自らの聖水が持つ真の力に気づく。それは浄化ではなく、あらゆる傷や病、呪いすら癒す奇跡の【創生】の力だった!
ルークは小さなポーション屋を開き、まずいけどすごい聖水で村人たちを救っていく。その噂は広まり、呪われた女騎士やエルフの薬師など、訳ありな仲間たちが次々と集結。辺境の村はいつしか「癒しの郷」へと発展していく。
一方、ルークを追放した王都では聖女が謎の病に倒れ……。
落ちこぼれ神官の、痛快な逆転スローライフ、ここに開幕!
パーティーから追放され、ギルドから追放され、国からも追放された俺は、追放者ギルドをつくってスローライフを送ることにしました。
さら
ファンタジー
勇者パーティーから「お前は役立たずだ」と追放され、冒険者ギルドからも追い出され、最後には国からすら追放されてしまった俺――カイル。
居場所を失った俺が選んだのは、「追放された者だけのギルド」を作ることだった。
仲間に加わったのは、料理しか取り柄のない少女、炎魔法が暴発する魔導士、臆病な戦士、そして落ちこぼれの薬師たち。
周囲から「無駄者」と呼ばれてきた者ばかり。だが、一人一人に光る才能があった。
追放者だけの寄せ集めが、いつの間にか巨大な力を生み出し――勇者や王国をも超える存在となっていく。
自由な農作業、にぎやかな炊き出し、仲間との笑い合い。
“無駄”と呼ばれた俺たちが築くのは、誰も追放されない新しい国と、本物のスローライフだった。
追放者たちが送る、逆転スローライフファンタジー、ここに開幕!
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる