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第二章 エルフのルーコと人間の魔女
第79話 課題だらけの今とこれからの私
しおりを挟む依頼を終え、拠点に戻ってからはや三日、私は今回の戦いを振り返り、自分の至らなさと、リオーレンに言われた言葉についてを考えていた。
「取り返しがつかなくなる、か……」
今回の戦い、もしあの場にリオーレンがいなければ確かに私は死んでいた。
しかも敵からの攻撃ではなく自身の魔術……『魔力集点』によってだ。
使わなければ全滅していた場面、使わないという選択肢がなかったのは事実。だけど、そういう状況になるまでの過程でどうにかできなかったのかを考えるのは大事な事だろう。
「……でもどう考えても私の魔力が途中で尽きるのを避けられない」
学習能力の脅威と数、そしてキングの膂力や速度に対処しようとしたらどうしたって私の魔力が足りなくなってしまう。
やっぱり魔力量が問題か……もうここまでくると平均的っていうのも怪しくなってくるね。
エルフの中で平均というのはあくまで自分目線での話だから、もしかすると私の魔力量はそれよりも少ないのかもしれない。
「……しかも私の課題はそれだけじゃない。魔力不足を起因とする広範囲魔法の不得手、強化魔法と他の併用ができない事で決定打に欠ける戦闘方法、切り札に関しても詠唱に時間が掛かる上に使った後は戦闘不能になるし……本当にどうしようかな」
何より問題なのは課題自体は山積みで見えているのにそれらを解決する手段がないという現状だ。
広範囲魔法の取得は魔力不足、併用に関してはどうにもならないから決定打の部分も改善は難しく、切り札の方も今の状態で効果と誓約がぎりぎり成り立っているため、手を加えづらい。
……それに切り札って言っても魔力不足を補うためのものだから、それに加えて何かをしないといけないのも考え物だしね。
使用後、全ての魔法の威力や効果が跳ね上がるものの、結局それを当てるためには併用の壁が立ち塞がり、私は強化魔法か、普通の魔法かの二択を迫られる事になる。
それに言ってしまえば『魔力集点』を使用している時に威力や効果が上がるのは、全開で魔力を絞り集めて開放しているから込める量が増えているだけであって、極論、魔力量が多ければ同じ事ができるのだ。
実際、今回の戦いで使った魔術、『凄風の天獄穿』も魔力さえあればあんな綱渡りをしないでも問題なく使えてしまう。
「魔力量は一朝一夕で増えるものでもないし……うーん、後は武器を持つくらいしか思いつかないけど……」
この間買った短剣は今回の戦いで折れてしまったし、もう一度購入しても結局は戦力的に変わらないため、武器自体を選び直す必要が出てくる。
……でも私の戦い方にあった武器だから、他のものを選ぶとなると戦い方自体を改める必要が出てくるし、今、慣れた戦い方を捨てるのは正直に言って怖い。
それに剣や槍、斧などの武器を使うとなると、今まで以上に魔法使いらしからぬ戦い方になるのは明白で、魔法使いの頂点である〝魔女〟を目指すのにそこからさらにかけ離れるのはどうにも本末転倒な気がしてしまう。
「……即席で魔力を補充できればいいんだけど、そんな都合のいい手段はあるわけもないからねぇ」
誰もいない場所で天を仰ぎ、独り言ちる。
一応、魔力回復薬というものがあるにはあるが、それは高価な上に飲んでも自然に回復する量が少し増えるといった代物で、主に自然回復力の落ちた人の治療に使われるらしい。
……そもそも私の回復力が低いわけでもないからそれを飲んでも意味はないけどね。
個人差はあるけど、魔力は基本的に一日もあれば全快する。
まして魔力の多くない私なんかはもっと早く、半日と少しあれば回復してしまうほどだ。
魔法の修練をするには少し便利に見えるけど、よくよく考えれば魔力量が多ければそれだけ長く続けられるから結局、変わらないんだよね……。
どんどん課題の改善とは関係ない方向に思考がずれているのを自覚しつつ、ぼーっと考えを空回りさせる。
いっそ使わない魔力をどこかに溜めておければなぁ……。
魔力はその性質上、魔法や魔術に変換しなければ大気中に霧散して消えてしまう。
剣士や戦士が強化や武器に付与しているのも言ってしまえば魔法の一種に分類されるので、魔力そのもの排出する技術は例外なく存在していない。
まあ、規格外の魔力量で無理矢理撃ち出せば霧散する前に形を為すかもしれないが、結局それを保存とかはできないし、攻撃に使えるかもしれないけど、そんな事をするくらいなら魔法なりなんなりを使った方が確実に強いだろう。
「……どっちにしても魔力の少ない私には関係のない話だけどね」
そもそも少ない魔力を工夫してどうにかしようと考えていた筈が、規格外の魔力で無理矢理……なんて思考に至った辺り、自分でも迷走しているのが良く分かる。
「…………一応、試してみようかな――――っ!?」
ほんの気まぐれ、できないと分かり切っているけど、魔力操作の練習にでもなればいいやくらいの軽い気持ちで、少しの魔力を指先に集めて放出してみようとしたその瞬間、ごっそり力が抜けていく感覚が全身を襲い、咄嗟に操作を手放す。
「今のは……」
操作を手放した事が功を奏したのか、集めた魔力は何事もなく霧散し、さっきの感覚が嘘だったかのように、身体にはどこの異常も見られない。
さっきの感覚……『魔力集点』を使った時と似た感じがした……動かそうとした魔力の量はほんの少しなのにどうして……。
『魔力集点』という魔術を編み出し、扱ってきた関係上、私の魔力操作技術は普通よりもあると思っている。
剣士であるトーラスが使った部分強化のように戦闘中に素早くみたいな使い方こそできないけど、それでも全体の流れを把握して動かすくらいなら失敗する筈がなかった。
「……もしかして魔力をそのままの形で出力するのって相当難しい?」
もしくは少しだとしても出力すること自体がそれだけ消耗する行為なのか、どっちにしても得られるものがない割に危険で難しいならこんな事は誰もやらないし、これに関する資料がないのも頷ける。
これがもし魔力操作が難しいだけなら練習すればどうにかなるって事?でも構造上の問題なら練習するだけ意味ないし、仮にできたとしても霧散してしまう以上は何もならない……でも…………。
意味のない行為だと頭で理解しているけど、不思議とできなかった事がどうしても引っ掛かる。
「うう……どうにもやもやする。こうなったら合間に少しずつ練習しようかな……」
本当なら無意味な練習をするのはよくないのだが、それでもこのもやもやを放置するよりはいいだろうと判断してこれからの修練にそれを組み込み考える。
「……よし、ひとまず考えるのは終わり。そろそろ魔法の練習を始めようっと」
両手で頬を軽く叩いて思考を切り替え、練習を始めるべくゆっくり立ち上がる。
この時の私は知る由もないが、無意味な練習に時間を割くと決めたこの判断が意外にもこの先の道を広げる事に繋がっていくのだった。
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