〝凡才の魔女〟ルーコの軌跡~才能なくても、打ちのめされても、それでも頑張る美少女エルフの回想~

乃ノ八乃

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第四章 魔女のルーコと崩壊への序曲

第147話 お城への召喚と向けられる視線

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 そしていよいよ魔術師認定のために王宮へと向かう日。私達はウィルソンにトーラスとサーニャの三人を宿に残し、王宮の目の前までやってきていた。

「これが王宮……近くで見ると凄く大きいですね……」

 身分確認と身体検査を経て門を通され、見上げるほどに大きな扉を前に私は思わず声を漏らす。

 外の世界に出てきてから色々な建物を見てきたけど、ここまで大きな建造物は流石に初めてだ。

 そもそも私にとって王宮……お城なんて物語の中だけの存在に等しい。

 だから少しだけお話の中にいる気分になってしまい、そんな感想を口にしてしまったのかもしれない。

「まあ、一応この大陸で一番大きな国の中心だからねー。それなりのお城じゃないと示しがつかないんじゃないかな、たぶん」
「ハッ、俺には分からん感覚だな。所詮、愚物共の見栄張りのためだろ」
「……言いたい事は分からなくもないけれど、それは少し暴論が過ぎるでしょう……貴女らしいといえばらしいけど」

 私の漏らした感想にアライアが反応を示す中、その横でレイズとノルンがいつものやりとりを繰り広げる。

……またノルンさんがレイズさんに呆れてる……こうなるのは分かりきってるのにどうしてこの二人を一緒にしたんだろう?

 今場所が場所だけに全員で向かう訳にもいかず、かといって私一人で行かせるわけにはいかないと、みんなが反対して最終的に魔女で師匠でもあるアライアとレイズ、そしてお目付け役としてノルンの三人に決まった。

 決める際にサーニャが一緒に行くと最後まで食い下がったのだが、最後はアライアに諭され、トーラス達と共に宿で待つ事を納得してくれた。

まあ、その代わりに何故か私がサーニャさんと一日買い物する事になったけど、それくらいなら特に問題はないと思う……たぶん。

「……消去法って事なのかな」

 必要最低限の人数、なおかつアライアとレイズが決定しているなら二人が何かをやらかした時、止められる人物でなくてはならない。

 トーラスはアライアに妄信的過ぎて論外。ウィルソンはアライアに対しては物怖じしないかもしれないけど、レイズとは関わってから日が浅く、あまり強くは言えない。

 そしてサーニャはその両方に対して強く出れないから駄目……となると、最終的に残るのはある程度アライアにも意見ができて、レイズにも強くものを言えるノルンだけという事になる。

「んールーコちゃんなにか言った?」

 小さな呟きに反応したアライアへなんでもありませんと返し、一人納得した私はまだ何か言い合っているレイズとノルンの間に入って仲裁つつ、お城の中へと足を踏み入れた。


 大きな扉を潜り、案内役の騎士に誘導された私達は空き部屋に通され、謁見の準備が整うまでの間、待つ事に。

 いきなり謁見の間まで案内されるとは思わなかったから待たされること自体は問題ない……でも、まるで待機している私達を監視するような騎士の視線が物凄く気になる。

 呼ばれたとはいえ、王のいるお城に外から人がくるのだから警戒するのは分かるけど、それにしたってあの視線は異常だ。

「……嫌な視線だね。少なくとも呼んだ相手に向けるものじゃないかな」
「同感だな。俺はともかくルーコにまで不快な視線を向けるのは気に入らん……いっそあいつらをのしてやろうか?」

 警戒ならまだしも、騎士達は明らかに私達を見張っている。

 まるでこれから何かをしでかす危険人物のような扱いに私だけでなく、アライアとレイズも不快感を露わにしていた。

「流石にそれは止めておいた方がいいんじゃ……」
「そうだね。気持ちは分からんでもないけど、今回はルーコちゃんの認定があるからが我慢してよ?」
「……そのくらい分かっている。俺を何だと思っているんだ」
「普段の行いのせいじゃないかしら?貴女なら事情も何もかもを無視して暴れるかもと思われているんでしょ」

 不満そうな顔をするレイズに対してノルンが喧嘩腰に返し、再びいつもの言い合いが始まりかけたその時、扉が開いて、数人の騎士を引き連れた頭皮が薄く、恰幅のいい男が部屋に入ってくる。

「――――謁見の準備ができた。魔術師認定を受けるルルロア・アルラウネ・アークライトとその同行者は私の後についてこい」

 その男は入るなり、高圧的な物言い共に見下すような視線を私達の方へ向け、顎をしゃくった。

 偉そうな……まあ、実際に偉い立場なのかもしれないけど、だとしても、私はともかく、魔女であるアライアやレイズに対してあそこまで高圧的な態度をとれるものなのだろうか。

「……全く、本来なら認定の召喚には当人一人でくるものなのだがな。まあ、世間知らずの小娘……おっと失礼、森の奥地から出てきたエルフの子供には分からないか」

 そんな疑問を抱きながらも、言葉に従い、後に続いて謁見の間へと向かう道中、男は尊大な態度をそのまま、私達に向けて嫌味を吐いてくる。

 途中、私の事を指して悪し様に何かを口にし、言い直しているが、どちらにしてもこちらを見下しているのが透けて見えていた。

「…………俺の弟子に対して随分な物言いだなぁ……その残り少ない希望を毟り取ってやろうか」
「ぷっ……ちょ、気持ちは分かるけど、ここは抑えて」
「……毟るだけじゃ生温いわね、毛根ごと死滅させて一切の希望を残さないようにしないと」
「……ノルンさんも落ち着いてください。あの人達に聞こえちゃいますから」

 男の言葉にかっとなったレイズをアライアが吹き出しつつも止め、普段ならそれを諫めるノルンの同調をどうにか私が言い含める事でどうにか気付かれずにこの場を収める事ができたものの、謁見の間に着くまで二人が暴れ出さないか、気が気ではなかった。

「――――ここが謁見の間だ。ここから先は王の御前……失礼のないように」

 他のものよりも一際大きな扉を前にして男が私達にそう念を押してくる。

 ここでもまあ、世間知らずの田舎者には難しいかもしれんがという余計な一言が付いていたのだが、なんとかレイズとノルンには抑えてもらい、まだ始まってもないのに物凄く疲れた気分のまま、王様との謁見に臨む。

 正直、この先に待ち受けるのがこの男みたいな人ばかりだと思うとすぐにでも帰りたいというのが今の私の本音だった。
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