転生者の妹曰く、ここは俺が総攻主人公のBLゲームらしい?

天城

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第十一話-1

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 翌朝、まだ空が白む直前にオーギュスト達のテントを出た。

 フレデリックの待つテントに戻ると、彼は毛布に包まったまま、まだ眠っているようだった。昨夜俺が帰ってきてないことはバレていたはずで、どう説明しようかと悩んでいたところだったので少しホッとした。

 安堵したような、話せなくて少し残念なような、奇妙な気持ちになりながらテント内へ入る。自分の寝床を整えて座ってみたが二度寝をする気分でもなかった。

 それなら別のことを考えようと、肌身離さず身につけている鞄からアデラの資料を取り出した。次元魔法のかかっている鞄には幅も重さも関係ないので、いくらでも資料が入る。

 錬金術で作りだした薬や回復ポーション、とっさに取り出す武器まで全てここに収納してあった。

 アデライードがくれた資料の中には、今回の授業で使われるデリア地方の地図が入っていた。この地域には昔から魔物が多く、討伐依頼がギルドによく出される。
 しかし鬱蒼とした森があり山も川もあり渓谷まであり、と変化に富んだ地形で冒険者を惑わせるためあまり初心者向けの場所ではない。
 昔の俺も冒険者達がいなかったら道に迷っていただろう。討伐隊の主戦力は確かに俺だったが、冒険者達の知識と勘はかなり役に立った。

 ……つまりなにが言いたいかというと、王侯貴族の通う学院の『授業』で使うには不向きとしか言いようのない場所なのだ。
 今回ここを授業の場所に選んだのは、マグナスだろうか。それとも、その裏側にいる王国の重鎮達だろうか。

「……」

 地図にはアデラの筆跡でイベントの起こる場所というのが書きこまれている。4日の日程の中で一番重要そうな場所を通るのは、三日目の今日だ。『結界石のある場所』と書かれている。

 ……結界石、結界石なぁ。扱いが繊細な物だと俺には不向きなんだが。

 アデラは資料を用意してくれたが、すべての結末を俺に話してくれているわけではない。
 あまりゲームのストーリーに詳しくなってしまうと、それはそれで無意識に本筋から離れようとしてしまい、未来が変わる可能性があるそうだ。

 アデラはあくまで自分の知るストーリーから離れすぎず、予想の出来る範囲での最善を選び取ろうとしていた。

 あ、例外が『身内に大量の死人が出るような事件』だ。それは流石に未然に防ぐようにしているらしい。
 ただアデラも救済の範囲を広げすぎると自分の手に負えないからそこは気をつけているとか。

 ちなみに攻略対象のガチムチ達に関しては、先入観があろうとなかろうとイチャイチャして楽しんでくれれば良いと言われている。
 そのための情報提供なら喜んですると。

 アデラの『推し』なせいかオーギュストとエルヴェの豆知識ばかり用意されてくるんだが、これはどうしろというんだ?



「……何を見てるんだ?」

 ぎくりと身体が固まった。
 背後からするっと腕が回ってきて、腹のあたりを強めに抱き締められる。肩口にフレデリックの顎がのせられ、耳元に柔らかな唇の感触がした。

「アデラの筆跡だな」
「このあたりの地図だ」
「……ああ、『予言』か」

 さして興味もなさそうな声を出して、フレデリックが地図の上を指でなぞった。そして先程まで俺が見ていた『結界石』の場所に指先を向けると、ふぅと小さくため息をつく。

「ウォルフはそこに行きたいのか」
「今日通るはずだからついでに見てみるつもりだ」
「そこで何が起こるのか『予言』で知ってるのか?」
「いや、そこまでは知らない」

 ふーん、と相槌を打ちながらフレデリックは俺のシャツの下にごそごそと手を入れてくる。
 うなじにも唇が押し当てられて、ちゅうっと吸われた。なんだか妙に、むずむずする感覚が身体の芯に響く。拒否するほどでもない戯れだが、耐えているのは少しつらい。

 その絶妙な線を外さず、フレデリックは俺にやわやわと触れてくる。

「フレデリック、もう止せ」
「キスしていい?」
「……」

 身体を離そうとしたのに、押し退ける手を掴まれてじいっと見つめられた。

 澄んだ青色の瞳が俺を映し、一瞬たりとも揺らがない。俺はため息をついて地図を鞄に戻した。
 そしてフレデリックと向かい合うように座り直し、彼の首の後ろに腕を回した。


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