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騎士団のエースに捕縛された盗賊の頭領ですが尋問も拷問もなく囲われて溺愛されています。
十三話
しおりを挟むジョシュアも馬を操れるというので、道を聞きながら目的地へと向かった。
出発したのがもう夕食後の夜中だったので、そこから二時間くらい暗闇のなか、馬を走らせた。俺は夜目が効くからいいが、ジョシュアは大丈夫なのか?こいつ何者なんだ?
さっきは奪うなんて豪語してみせたが、そもそも俺のいた盗賊団は誘拐とかは専門外だ。先代の頃からそういうのには手を染めなくなっていた。
拾ったガキ達には簡単な計算と、文字の読み書きなんかを教えてた。街で小銭を稼ぐくらいは出来るようになってから、盗賊団に残るか出て行くか決めるように言われる。
俺は、当然出て行かない方を選んだ。
何人か同時期に拾われたガキ共が、大人になって出て行ったのを見送った。そういう奴らが街に根を張り、情報操作をして隠れ里の場所を分かり難くしてくれているのも知っている。
街には、盗賊団を頼りにする変わった人々もいた。昔……そう、大昔だが。俺が若い頃は貴族なんかも、先代の手を借りにきていたんだ。それくらい、先代の力ってのは絶大だった。
俺はどれだけそこに近付けただろう。いや、解散しちまった今ではもう、考える意味もないか。
「ザザ様、あちらの屋敷でございます」
「……おお。ってか、あれで別荘か?」
「はい。避暑のために年に数ヶ月滞在する屋敷だそうです」
「うへぇ……」
田舎のだだっ広い敷地に、でんと大きな建物が一つ鎮座ましている。他には何もない。何もっつーか、緑だけだな。あと、屋敷の向こうには小川が流れているらしい音がする。
なるほど、水も豊富で緑豊か、ってやつか。じゃあこんな土地に家なんて建てないで、田園風景にでもしちまえばよかったのに。穀物の収穫、大事だぞ。
「しかしザザ様、一体これからどうやって……」
「ん。貴族の屋敷ってのはな、ほとんど決まった造りをしてんだろ。『お決まり』が大好きな輩だからよ」
「……はあ」
「ルーファスくらいの相手を一等貴賓室に入れてねえはずがないだろ?なら、狙うはそこだ」
外から見るだけで、一番日当たり良く眺めも良いだろうなって部屋が判った。馬は逃走の時のために水辺に繋いで、休憩させておく。ジョシュアにも待つように言って、俺は屋敷の裏手に回った。
「……オイ、なんでついてきてる」
「決してお邪魔にはなりません」
「見つかったらお前まで担いで逃げらんねぇぞ」
「お気遣いありがとうございます。一人で逃げ切れます」
スン、とした顔で言い切るジョシュアになんと言っていいか判らず、『まあ勝手にしろ』と言って俺は庭木に手を掛けた。目的の部屋の窓近くまで枝を伸ばした大木だ。
しかしここで問題がある。……俺は木登りがそんなに上手くない。
「っとなれば、相棒の出番だなァ」
「……は?」
俺は思いっきり振りかぶった斧を、その重みに任せて大木の幹に振り下ろした。ガッ、と重い音がしたが一撃ではびくともしない。そうだろうな、と思いながら二撃、三撃と斧を振り下ろす。そして片側がだいぶえぐれたところで、俺は屋敷側へと押すようにその木の幹を蹴りつけた。
ガッ、ゴッ、ガシャァァァン!
「ヒッ……」
倒れた木がそのままテラスのある大窓に突き刺さる。頭を抱えてガラスを避けたジョシュアは、小さめの悲鳴を上げていたが、無視して倒れた木の幹に足を掛けた。
倒れかかった木の幹は、多少勾配のキツイ坂みたいになっている。
そこを足先に力を込めて、一気に駆け上がった。屋敷の方も何の騒ぎだとざわめきが広がっていた。ぽつぽつと明かりが灯りはじめている。
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