【短編まとめ】おっさん+男前+逞しい受詰め合わせ

天城

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騎士団のエースに捕縛された盗賊の頭領ですが尋問も拷問もなく囲われて溺愛されています。

十六話

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「ルーファス様!」

 恐らくこれが宰相の娘、マリーという名の令嬢なんだろう。彼女が鋭くルーファスの名を呼ぶと、人形のように動かなかったエメラルドの瞳がぴくりと反応した。
 
「ルーファス様、こちらへ!」

 ふい、と顔を上げたルーファスはのろのろと身体を起こすと俺の腕から抜け出て行こうとする。咄嗟に引き留めようとしたが、その手は簡単に払われてしまった。

「!」

 そして俺を振り向きもせずに、マリーの方へフラフラと歩いて行く。
 ……一瞬、俺は凍り付いたように動けなかった。

 ルーファスは最初から不可解な男で、そのお綺麗な顔で笑顔の大安売りをし、俺が手を伸ばさなくてもがっちりと勝手に拘束してくるようなヤツだった。
 一緒にいるようになって数週間、俺は伸ばした手を拒まれたことがなかったと今更になって気がついた。

「ルーファス様。マリーと行きましょう」
「ああ 私は マリーと 行く」
「結婚式の準備は急がせている最中ですのよ。ルーファス様、私と結婚して下さいますわね?」
「私は マリーと 結婚 する」

 どう見ても茶番だった。ルーファスの棒読みの言葉は『言わされている』以外の解釈のしようがない。しかしマリーは満足げに頷くとルーファスの腕に掴まって身体を寄せた。
 
「オイ、隻眼の。呆けてる場合じゃないだろう」
「……は?」

 不意に、俺の腕をとってソファから立たせたのは騎士団長だった。立ち上がると、団長の身長は俺とそう変わらない。こんだけ上背があって、しかも服の下の筋肉もかなり立派だ。俺と同等かそれ以上……いや毎日の栄養の差かも知れないなこのへんは。

「ルーファス!お前はコレが欲しくて無茶をしたのではなかったか!」
「……はっ!?」

 ぐいっ、と引き寄せられて騎士団長の身体にぶつかる。いや、そこまでくっつかなくてもよくねえか?なんか腰にぶっとい腕が回ってきてるんだが?

 疑問符を頭に浮かべつつ眉を寄せて不信感をあらわにすると、身体を密着させた相手は俺だけに聞こえるように小声で『少し我慢しろ』と言った。……うん、なんか考えがあるんだろう。まあ乗ってやらなくもないが。

「特注の魔道具まで作らせただろう。……コレを置いて結婚するだと?」

 オイオイこの騎士団長どこまで知ってんだ。話したのかルーファス!お前に羞恥心はないのか!
 まあそれよりも、ずっと『コレ』扱いが地味に気になってるんだが。

 騎士団長はルーファスを挑発するようにそう言うと、同時に服の上から俺の胸を鷲掴みにした。

「……!」

 ぴくりとルーファスの表情が動いた。
 その間も騎士団長のデカい手が服の上から胸元を這い回る。どこにどういう風に下着の紐が走っているか判っているとでも言うように、つつっと指先が滑った。

 まあ正直男に胸を揉まれるなんざ気分のいいもんじゃないが、なんか策があるようなので動かないでおく。

 ――刹那。チリッ、と空気が緊張感を帯びたように感じられた。

 見ると、マリーの腕を振り払ったルーファスが、バチバチと細かな稲妻を部屋中に走らせていた。
 白銀に近い冴えた色をした稲妻が、俺達の前のテーブルに出ていたティーカップを粉々に吹き飛ばした。


 帯電したルーファスの銀髪がふわりと浮き上がる。そして爛々と光るエメラルド色の瞳がこちらを睨み付けていた。

「私のものに、触るなッ!」

 
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