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三章 最強の魔術師
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「……一丁前に勃つのか」
「な、な、……だって師匠が!」
「俺のせいか?」
「そうだよ! 酷いよ! 師匠のせいでしょ!」
外気に晒されて少し勢いの萎えた俺の性器を見下ろして、師匠は「ふぅん」と呟くと大きな手の中にそれを包み込んだ。そのままゆっくり、押し上げるみたいにして揉まれて先端を指でくすぐられる。ビクンッと全身が震えた。
下半身を重たく感じるような、こんな快感は初めてで、頭の中がパニックを起こしていた。
「なんで、なにしてるの、師匠……」
「俺のせいなんだろ? 抜いてやるよ」
先走りの液体で濡れた師匠の指が、ぐりゅっと俺の性器を擦り上げる。
「あっ、ぁっ……ひ、ぁっ……ッ」
ビクビクッとシーツから身体を跳ねさせて俺は悶えた。顔が熱いのと、ぼろぼろ勝手にあふれる涙で顔がぐちゃぐちゃな気がするけど、師匠は止めてくれない。
「ひでー顔……」
目尻に師匠の舌が這って、涙をすくい取っていく。低く笑う振動が伝わってきてカアッと顔も身体も熱くなった。
性器を根元から形を確かめるように扱き上げられて、先端からとぷりと透明な液体があふれる。だんだんとこみ上げる快感が頭の中までぐちゃぐちゃにしていって、混乱した俺は「こわい」と泣き続けた。
「大丈夫だから。……ほら、イけ」
師匠は低く艶のある声で俺を宥めながら、追い上げていく。
「――ッ!」
快感に耐性のない俺はそれからすぐに師匠の手のひらに射精してしまって、グスグスと泣きながら「ごめんなさい」と謝った。
「なんで謝ってんだ?」
「手を汚したし、師匠の手で気持ち良くなっちゃったし、キスも……」
話している間に、ふと見たら師匠の股間も隆起していた。思わずそれをジッと見つめていたら顎を持ち上げられてキスされる。もう一度見ようとすると、ぐっと顎を掴まれて動けなかった。
これって、師匠も欲情してるってことでいいのかな? 俺も手で師匠のソレを擦った方が良い?
「あ、あの……俺も同じように……?」
恐る恐る問いかけると、師匠は深いため息をついてから身体を起こした。
「お前はしなくていい」
「でも、俺……」
「ルイス。俺がこんな風に触れるのはお前だけだ。……今はその返事だけじゃ駄目か?」
「……」
師匠の目は嘘をついていないように見えた。きっと、親友のルキアーノスにこんな風に触れたことはないんだろう。
でも今俺に触れてくる手には紛れもなく押し込めた激情と熱と、欲情が混じっていた。
それって、前世の俺には好きでも触れられなかったってことじゃない? 俺は、その延長でキスしてもらったのかな。代用品……ってことかな。
そう思ったら、なんだかまたモヤモヤとした気持ちがわき上がってきた。
「でも、じゃあ俺は師匠になにしてあげたら……」
つい対抗するようにそんな風に言ってしまったら、師匠は一瞬沈黙した後にぽつりと言った。
「一回でいい。望みを聞いてくれるなら、――呼んでくれ。『ゲニウス』と」
「えっ……えっと」
戸惑う俺が言い慣れずにもごもごするのを、師匠はずっと急かさず待ってくれた。俺は必死になって、頭の中の言葉を声に出す。
「――ゲニウス」
ふ、と師匠の唇が笑みに綻んだ。いつもの皮肉げな笑い方ではなくて、懐かしむように笑うその表情に俺の心臓はギュッと縮み上がる。
一度飛んだ拍動が忙しなく走り出して、息が苦しい。
……どうしたって、師匠にそんな顔をさせるルキアーノスに、俺は敵わないよ。
俺だって師匠を好きなんだ。でも師匠の中には、俺よりずっと深くルキアーノスが刻みつけられている。だって親友が生まれ変わるまで、三百年も苦しい思いをしながら待ってたなんて、相当だ。その年月分の想いの強さを考えたら、それを俺が上回ることは、不可能な気がした。
やっぱり俺は代わり……なんだろうか? 師匠が見ているのは俺の背後にある、前世なのかな。
生きている時間が違ったら、わかり合うのは難しいって言ってたエレンの言葉がまたぐさりと突き刺さる。
「師匠は、ルキアーノスのこと、愛してた?」
「は、なんだそれ。友だって言っただろ」
俺に向けるいつもの笑い方で師匠が言った。そっちのほうが好きだなって思う。意地悪でもちょっと怖くても俺だけに向ける顔だから、その師匠が好き。
「俺は師匠のこと、死ぬまでずっと……好きでいていい?」
吐息が触れるほど近くで師匠の唇が笑みにつり上げる。もう一度、キスして欲しくてその唇をジッと見つめた。
「――お前の好きにしろ」
うん、と頷いた俺の額に柔らかな唇が触れる。
その夜俺は、初めて師匠の腕に抱かれて眠りに落ちた。
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