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三話
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しおりを挟む特に声と、何となく雰囲気が、とかなんとか。腹が立つことこの上ない。俺は俺であって、じいさんとか知らんわ。
若かった俺はイライラしながらも街の人に『ヴィノード』の死因について聞いて回った。貴族に睨まれるなんて、何やらかしたんだまったく。
ヴィノードを知っている年寄りたち曰く、
『貴族の坊ちゃんと駆け落ちしたって聞いたんだけどな』
『相手だけ連れ戻されて殺されたってやつか?』
『そもそもどこで知り合うんだよ貴族』
『ヴィノードは結構ランクの高い依頼も受けてただろう?』
『そういや指名で依頼が入った後、達成もなしに消えたって話だったな』
『ああ、未達成で消えたから、後からその貴族がギルドに難癖つけにきたって大事件』
『え? その貴族はどいつだって? そりゃあお前、ギルドへの依頼は召使いがお忍びで来るんだろうから名前なんて俺らは知らねえよ。一応ギルドの資料には残ってるんじゃねーか』
ここまできたらいけるところまで調べなきゃ気が済まない。俺はギルド長にせっついてぐらぐら揺らして、死んだじいさんへの同情とかを上手く使いつつ、閲覧禁止の資料をこっそり見せてもらった。
ヴィノードに指名依頼をしてきたのは、ウィトリー家というらしい。
王都にある屋敷の他に、北の国境と雪山に近いあたりの辺境を治めている古くからの貴族だった。指名依頼は本人を呼びつけて直接交渉をするタイプだったらしく、細かな内容は書かれていない。
ただ、任務内容は『護衛』。行く先は『西の森』となっていた。
――西の森、だってよ。あのテンタクルボールのいた森に、ヴィノードが足を踏み入れていて、しかもそこから連れてきた苗床の寝言にヴィノードの名前が出てくるって?そんなんもう、確定だろう。ドンピシャだ。ふざけんなオイ。ここでも出て来るのはあのじじいなのか。
もう十代の若造でもないのに、イライラとした気持ちがわき上がってくる。
アレン・バーツィーの依頼をうけた時には、西の森なんて大して変わった依頼じゃないから気に掛けてもいなかった。まさか何十年も後にヴィノードと同じような依頼を受けて俺が西の森に踏み入るなんて、誰も思わなかっただろう。こういうの、数奇な運命とか言うんだろうか。
真夜中、ギルドに駆け込んだ俺は、あの時ギルドで見た資料をもう一度見せてくれと現ギルド長に頼み込んだ。拝み倒して土下座する勢いの俺に呆れたギルド長が折れてくれたのは、空も白み始めるような時間帯だった。
‡
「おいコラ、人が必死に情報探してるのを笑ってたなお前?」
アレンの研究室に入るなりドスの効いた声でそう言うと、ルーペ片手に何かを観察していたアレンはぱちりと青い目を瞬かせた。ズカズカと部屋に入り、勝手に椅子を引っ張ってどっかりとアレンの前に座る。
散らかった机の上には、シャーレや金属の器具や、水槽やら土塊やら、色んなものでいっぱいだった。少しは片付けようぜ、なにをするにも効率悪いだろうが。何のためにゴミ袋用意してやってると……って俺はオカンか。
「え~? もう判ったの? なんで? どこから?」
「……コノヤロウ否定もしやがらねぇ」
「アーーーっ! 待って待ってそれ凄く大事なやつ! 持ってかないで~!」
ゴミっぽい物と大事そうなものを勘でより分けて、俺は勝手に机を整頓していた。しかしアレンの態度に腹が立ったので凄く重要そうなシャーレを摘まみ上げてやる。もちろん持ち上げただけだが、ゴミに捨てられると思ったのかアレンが珍しく狼狽えたように俺の腕に飛びついてきた。
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