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しおりを挟む始めの一週間が過ぎてから、この異常な事態に適応してしまったユウリはそこそこ平穏な日々を過ごしていた。己の順応力が憎いと思ったのは初めてだった。
妙なスライムをひっつけているのにも慣れたし、ひたすら変態行為に見える執着を見せる蛇気質のシキにも慣れた。
シュイの甘やかしには時折圧されつつ赤面する程度で済んでいて、タイガは相変わらずの傍若無人だったが猫のようにチラチラとユウリの様子を観察している事が判った。
どれもこれも警戒する程のこともない事象になっていったから、受け入れることが出来たのだ。
そして一ヶ月が経つと、獣人達は曜日関係なくトイレから唐突に現われるようになった。
休日のユウリを独占しているタイガを、不公平だと他の二人が言い始めたからだ。
日曜日のヴァルフレードだけが何も言わず、自分の日にだけ現われた。そしてユウリを膝の上に乗せると散々甘やかして寝かしつけ、いつの間にか帰っている。
しかもヴァルフレードは母の話をよくしてくれた。まるで幼児の寝かしつけのようだが、母が獣人のいる異世界でどんな暮らしをしていたのか聞くのはとても楽しかった。
ただこのまま適応して獣人の存在に慣れたとしても、それだけではいけないんだろう。焦りに似た漠然とした不安の中、ユウリは自分の記憶が欠落している子供の頃のことを調べ始めた。
こういう調べ物の時、身内の言葉はあまり役に立たない。ユウリはネットで行方不明の子供の記事をざっとピックアップし、その時期の新聞を図書館で調べた。自分が小学生低学年の頃から、過去に遡っていく。するとユウリが6才の頃、『神隠し』と噂される子供の行方不明記事が出てきた。
タイガが言うように大規模な捜索がされていたらしく、情報提供を呼びかける張り紙のサンプルも載っていた。それには当時いなくなった時のユウリの服装や特徴などが事細かに書かれている。もちろん、佐倉雄利という本名もだ。
その頃のことを思い出そうとすると、何故か胃の奥がぎゅっと絞られるような恐れが生まれ、それ以上考えるのを止めてしまう。獣人達との関係は決して悪くないようなのに、この震えるような恐怖はなんだろう。
ユウリは鬱々としたものを抱えながらアパートに戻り、休日に合わせて現われたシキに飛びつかれて頬ずりされていた。
「ユウリ様、今日は私を選んで頂き本当にありがとうございます」
「──股間に顔埋めながら言うセリフじゃないだろが」
「もう一時も我慢ができなかったのです。ユウリ様、……ああ、ユウリ様……ッ」
壁に追い詰められてすぐフローリングにペタリと下ろされ、股間にシキの顔が埋まった。高い鼻梁もイケメンな顔も全く見えなくなり、スゥスゥと息をする僅かな音だけがする。
残念ながら今日も一日暑い中出かけていたので、股間は蒸れていた。
出来る事ならシャワーで汗を流してからやってほしかった。
しかしシュイやヴァルフレードとは違い、シキは絶対にソレを許してくれない。
汚いと言うと『では綺麗にいたします!』と謎の使命感を燃やしてあっちこっち舐めてくるからダメだ。何も言わず抵抗もしないのが1番被害が少ないと、最近ようやくわかってきた。
「ユウリ様、今日もたくさんご奉仕します……」
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