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一章
魔王と幼い勇者・1
「ねぇ、ルカ。もういつ死んでも良いかなーと思った途端に意外と死なないもんだねぇ」
魔王はほわっとした笑みを浮かべたまま、のんびりと呟いた。
そろそろ死に戻りの初期の頃なら暗殺されていた頃だ。
別にいつ死んでもいいが積極的に死のうとも思っていないので、的確に回避しているうちに月日が経っていた。あくまで自由に生きるのが目的で、制約をつけたくないだけだ。
微笑む魔王の横ではメイドがブルブルと震えながら魔王の長い髪に櫛を通していて、あたりには髪に擦り込む香油の甘い香りが漂っている。
艶やかな漆黒は今日も絶好調の輝きを見せていて、メイドの細い指が丁寧にその髪を解いていた。
魔王が視線を向けると女も男も下半身を淫水でびしょ濡れにしてへたり込んでしまうので、魔王はルカしか見ないようにしている。
ルカが何故魔王の視線に耐えられるのかは謎だったが、ルカの見立てでは『貴方が無意識に魅了から除外してるんじゃないですか』とのことだった。
あり得ない話ではないが、そうなると魔王も無意識なのでよくはわからなかった。
「はあ。平和が一番ですよ。……それはそうと、魔王様。本日は一件、謁見願いがございます」
「え、誰ぇ?」
「カーティスです」
「カ、カカカカカカーティス!?!?」
裏返った悲鳴のような声を上げた魔王は、うっかりメイドの手を払ってしまった。
しかも、その衝撃でフラリとかしいだ相手の手首を咄嗟に掴んだ。そのままもう片方の手をほっそりとした腰に回し、倒れるのを阻止してしまってから、魔王はハッとして手元を見下ろした。
真っ赤な顔でぷるぷると震えているメイドが白いエプロンの下で股間を膨らませている。喘ごうものなら吐息が魔王に触れると思っているのか、息まで止めていた。
――あれ、メイド服なのに男の子なんだね。
魔王が最初に思ったのはそんな事だった。
その間に、うっかり魔王の腕の中でそのご尊顔を見上げるという僥倖に見舞われたメイドは、顔を真っ赤にしたまま呼吸困難に陥っていた。
はひっ、と小さく喉が音を立てたと同時に、床に崩れ落ちる。
そして魔王から目を逸せないままビクンビクンと大きく震え、下肢を濡らした。白いエプロンにじわりと染みが広がり、あ、あ、と小さくメイドが喘ぐ。そして腰をガクガクと振りながら恍惚とした表情で魔王を見上げていた。
なんとこの魔王、魅了の力だけでなく視線で魔族を絶頂させることができるようになっていた。……全く嬉しくない特技だが。
「想像妊娠でもされると迷惑なので、魔王様の周囲に女は置きませんよ。……おい、連れて行け」
見かねたルカがため息混じりに命令すると、ザザッと仮面を被った侍従が数人現れてメイドを回収していった。
彼らはルカが用意した魔王宮の特別処理係だ。
その仮面には魔王にだけ作用する強力な認識阻害の魔法がかかっている。
仕事は主に、魔王の魅了に引っかかってイキ狂った魔族の回収と床掃除。
いっそ魔王の周辺をこの仮面の侍従で囲んでしまえばいいのだが、そうなると魔王の側にはルカの息の掛った者しかいなくなる。
魔王宮の立場的に、そういうわけにもいかない大人の事情があった。
さて、メイドが回収され残された魔王は、それどころではない。
なんとカーティスが魔王に会いたがっているという。
あの謁見室での再会から一度も会っていないので、直接声をかけるとなると初だった。
つい気になってルカに動向を聞いているから毎日会っているような気がしてしまうが、向こうから見ればほぼ初対面である。
そもそも死に戻りで感覚が違うのだから、余計に気をつけて挙動不審にならないようにしなくては。
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