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しおりを挟む「っ、――ッ、ぁ、……っレフ、――ッ」
「閣下、声を堪えないでください。唇に傷が……」
唇の傷なんて考えてる余裕ないんだよ。それより俺の性器を絶妙な力加減で扱くのやめてくれませんか!声とか堪えるのが本当に困難。もう堪えなくていいんじゃない?て思うけど無理。羞恥が勝手に跳ね返ってくるから無理矢理に口を閉ざす。
――完全に、完膚なきまで叩きのめされて敗北していた。
有能過ぎるレフの手管をちょっと舐めていた。マッサージとか身の回りの世話とかだけじゃなく、性技までお上手ってこんなことあるんですか?手で擦られてるだけでこんなになっちゃうってどういうことよ。
そもそも同性相手に気持ち良くさせちゃう技なんてどこで覚えてきたんだよ26歳!?あれ、これって男だから上手いの?
オジサンちょっと色々とショックで卒倒しそう。
本当にすみません、謝るから、本気で白旗をあげるからもう許して欲しい。
「ここには、聞く者は私しかおりません」
「――ッ、ん……ぁ、ぁっ……」
耳元で囁かれるレフの声も、柔らかい低音で耳の中から犯してくる。
君に聞かれるからイヤなんだけどね!?そういうところは気が利きませんねレフ?それもしかして判ってて言ってるやつですか?
ルシェールはたぶん、こういうプレイは初めてなんだろう。コマンドとかまともに言えたのは最初くらい。免疫が全然なくて、快楽にめちゃくちゃ弱かった。これは要練習だよね。
DomSub関係に限らず、恋愛経験値もないらしい。格好良くて強い、美貌の大公閣下がまさか童貞処女とかないだろう。……そう思うけど、転生オジサンがルシェールの記憶を探ってみる限りでは、遊びの性行為とかは全然無いみたいだった。真面目なんだね。
まあ貴族の子息だから子作り系の指南は、十代の頃にあったはずだから童貞ではないはずだけど。……はずだけど覚えてないな?
確かに15才の誕生日からルシェールは常に戦場を駆けていて、色恋にうつつを抜かしている暇はなかった。三十代で童貞は魔法使……、ではないけれど、こんなに初心ってあり得る?って驚いてしまう。転生オジサンだって別にモテやしなかったけど、享年45で死ぬまでにはルシェールより大人だったよ。
ちなみに男同士の性行為については腐男子知識が蓄積しているので、ルシェールよりずっと詳しいです。実際にされるんじゃなくて見てる側の気持ちだけどね!
俺、今からでもルシェールの身体から出て天井とか壁になってもいいかな!?
……現実逃避も板に付いてきた。初心なルシェールはもう、大公閣下の威厳も吹っ飛ぶエロエロ仕様で、蕩けさせられてしまっている。
レフのレベルカンストかってくらいの性技の餌食になっていた。
この状態は腐男子オジサン的に言うと、目の中の瞳孔部分がピンクでハート型で『はーっ、はーっ』て赤面してるような感じだ。着てたバスローブみたいなやつも、すっかりはだけてやらしいことになってるし。
うん、これDom様の仕様じゃないよね?ルシェールは180センチくらいあるマッチョな大公閣下ですよ?
「ぁ、ぁっ、……く、……ふ、あっ」
大きな手で性器を扱かれ、亀頭をぐちぐちと親指の腹で捏ねられる。ビクッビクッと腰が跳ねて、足先が空に浮いた。レフは俺の右足にそっと手を添えると、足の甲に口づけてくる。
――先程のコマンドでは、舐めてと言っただけなのに。
レフはフェラチオじゃなくて足責めを始めてしまった。ルシェールがそれに弱いって判っているはずなのに、あまりに鬼畜では!?
最初、いきなりパクッと足の親指を口に含まれた時には驚き過ぎて『へっ?』と声が出てしまった。風呂に入った直後で良かった。
それからフェラと同じやり方で指を一本一本舐められて、足の甲にもレフの舌が這った。分厚い舌がちろちろと俺の肌の上を這っていくのは、もの凄くいやらしい感じがしてつい興奮してしまった。しかもマッサージの要領で足の裏や踵を揉みほぐされて気持ち良くなっちゃったし。
即落ち2コマみたいで申し訳ないけど、今回は本当にレフが何枚もうわてだった。
だっっって、顔がいいんだよレフの。え、容姿は関係ない?いやいや、それが関係するんだって。
顔面はハリウッドスターだって言ってたでしょ。腐男子オジサンでなくても見惚れるくらいいい顔なんだよ。それがいきなり、あの、こんなプレイに入った途端に色気ダダ漏れでくるとか。
欲情した青い瞳とか、濡れて光る唇とか、少し汗ばんで張り付く前髪とかがね。もう、目に毒です。もしかして俺の息の根を止めようとしてますか?
真面目にDomSubの関係を模索しようと思ってたのに!
「ぁ、……足、やめっ……」
「はい。ではこちらに集中します」
「んっ、……っちが、ぁっ、……ぁ、ぁあっ」
ふくらはぎの柔いところをやんわり食んでいたレフは、息も絶え絶えな俺の訴えに目を細めて応えた。そしておもむろに、俺の股間に顔を埋めてきたのだった。
ルシェールの性器はそこそこ立派なんだけれど、巨漢のレフの口にはすっぽり収まってしまった。手淫でガチガチになるまで育てられていたからもう準備万端って感じだ。亀頭から透明な液体をとろとろ零していて、それがレフの手で塗り広げられて全体的にぐしゅぐしゅに濡れていた。
それをさらに、唾液を溜めたレフの口腔に突っ込まれたわけです。
じゅぷぷ、じゅる、ってえっちで濡れた音が響いた。ウワァ、てなるくらい恥ずかしくて赤面した俺をチラと見上げて、レフはもっと大胆に頭を上下させていく。
「ぁ、んっ、んっ、ぁぅっ……」
口内は、熱くて、濡れていて、柔らかい舌がぬるぬると刺激してくる天国だった。きゅうっと軽く吸引されるだけでビクンッと大きく腰が跳ねる。逃げようともがいても、太い腕に掴まえられていて身動きもとれなかった。レフの緩急つけた快感への追い込みは、本当に容赦がない。
こんなの、耐えられるわけなかった。すぐイッちゃう気がする。ルシェールごめん、大公閣下の威厳みたいなものは地に落ちました!他言しないから許して欲しい!
「ひ、ぅ、……ぁ、レフ、……レフ、あ、ぁっ」
股間に張り付くレフの頭を、両手で掴んで腹いせに髪をくしゃくしゃにしてやった。いつもきっちりまとめられている髪がボサってして、額に降りてくる。
レフの手管に翻弄されているばかりだけど、一つ仕返しは達成した。
しかし髪の降りたレフはやっぱり若いな。26歳か、確かにそれくらいに見える気がする。
「なぜ、髪を」
「こうしたほうが幼い……あ、いや。髪上げると、老けて見えるから」
「……」
唾液まみれになった俺の性器を片手で扱き上げながら、レフが青い瞳を俺に向けた。無口なレフが物言いたげにするのは珍しい。
「そう、見られたいんです」
「ん?」
「……」
首を傾げる俺に気付いていただろうに、レフは再び口淫に戻ってしまった。先程よりも性急に追い上げてくる。喉奥までのディープスロートがはじまり、敏感な亀頭がざらついた喉の壁に擦りつけられて快感が弾けた。
もう、気持ち良すぎて目の前がチカチカする。シーツに爪を立てても衝動を逃す場所がない。
声を我慢するとか、考える余裕もなかった。
「――ッ、ふ、……ッ!――ッ!!」
一つ幸いだったのは、快感が深すぎるとむしろ色っぽい声は出なくて、息が漏れるみたいな掠れた音しか出なくなることだった。
俺は仰け反るようにシーツの上で腰を上げ、レフの口の中に精液をぶちまけてしまった。
射精と同時に、レフがじゅるっと性器を強く吸ってきた。めちゃくちゃ下品な音がしたけど、本人は全然気にしてない。
勿論俺には逃れる術もなく、尿道が空っぽになるまで尻をガッチリ掴まれたまま吸引されてしまった。もう泣きそう。
しかもレフの喉仏が動いて精液を飲み込んでいるところまで、見えてしまった。つらい。そんなもの飲むんじゃありません、て言いたい。腐男子オジサンは衛生管理にも敏感なんです。
でも頑張って飲んだんだから、こういうのは『褒め』の対象だ。俺はレフの頭をよしよしと撫でて『いいこ』と掠れた声で囁いた。
すると急にパッとレフが顔を上げて俺を見つめてきた。深い青の瞳の中に、明らかな喜色が滲んでいくのが見える。さわさわと不穏な手が俺の太腿のあたりに移動した。
「……?」
「溜めるのは身体によくありません、閣下」
「う、ん?でも俺、イッたばっか……で」
手の平に少し垂らした俺の精液を見て、何故か健康管理モードに入ってしまったレフはキラリと目を光らせた。待て待て、本気でちょっと待って。
「……今日は、空になるまで出してしまいましょう」
無意識に『ひぇっ』て声が出たけどレフは構わず、再び俺の性器を口に含んだ。イッたばかりで萎えていたはずの性器は、敏感になってるところをさらに刺激されてすぐ勃起してしまう。悲しいかな、男の身体というのはこういう時、即物的で快感に弱いんだ。
ダメだったらコマンドで拒否すればいいことなんだろうけど、俺はそうしたくなかった。レフが望んでこうしているなら、俺は受け止めるのも必要かなと思ってしまったからだ。
だけどその結果、出なくなるまで執拗に性器を弄られ一度気絶した。ついでに疲れて撃沈してたところを、レフのお得意な全身マッサージでさらにとろっとろにされてしまった。
痛いほど勃起しても出すモノもないのに、マッサージで喘がされまくり、天国のような地獄を味わった。なにがどうしてこうなったの。翌朝喉がカッスカスになって、目覚めの紅茶には蜂蜜を入れてもらった。
これだけ好き勝手やられまくったのに、翌朝の俺は喉以外すべてが絶好調で、全く納得がいかなかった。
プレイで性欲の解消をして、溜め込んだ欲を出し切って、さらには凝りほぐしのマッサージ後なので……ああ、まあ絶好調でも仕方ないか。
レフが有能過ぎてため息しかでない。最初の憂いはこうではなかったはずなのに。
「閣下、お客様がお見えです」
「ああ。……レフ、北の応接に案内しておいてくれ」
「かしこまりました」
執事が来客を告げて執務室に入ってくると、レフはすれ違いに出て行った。俺は手元にあった書類をまとめて決裁済の箱に入れると、今必要な資料を手に取って席を立つ。
「……抑制剤の乱用が落ち着いて、ようございました」
「抑制剤?」
執事はシャンと伸ばした背をそのままに、俺が通り過ぎる寸前に言葉を発した。
なんだろう、もの凄く企みが深いみたいな黒幕に見えるよこの執事。アーノルドさん、60歳。雇用契約書に書いてあった。
「レフの使用している丸薬です。Subの欲求を鎮める効果のある、現存するSubの抑制剤の中では一番強いものですので、一日一粒と言われています。……それをレフは一日中、菓子のようにかみ砕いて一瓶飲み続けていたものですから」
「……――は?」
「ちなみに一瓶には十日分の丸薬が入っております。それを一日で」
「じゅっ、十倍……」
「はい、左様です。簡単に言いますと十倍の薬を飲んでおりました」
「……お、……」
――お、お、オーバードーズってヤツじゃないですかそれは!?
これは俺が現代オジサンだから主張するんじゃないんだけど!お薬は!用法用量を守って正しくお使いください!!
レフ!仕事が終わったら覚悟しといて!
「……閣下も安定されて、ようごさいました」
執事のアーノルドは穏やかな声音でそう言って、眼鏡の奥の目を笑みに和らげていた。そんな場合じゃない俺はバタバタと執務室を出てしまったから、その時一瞬感じた違和感を、そのまま忘れてしまった。
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