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3.『俺のじゃないから』
②
しおりを挟む「リーリ、何か難しいこと考えてるね」
黒崎さんの部屋のバスルームで、大きなバスタブに二人で浸かりながら、後ろからギュッと抱き締められる。黒崎さんの大きな身体を椅子みたいにして、乗っかって寄りかかって、オレは王様みたいな入浴を楽しんでいた。
オレが乗っかってても黒崎さんのとてつもなくデカい巨根はぴくりともしてないから、本当にこの人はオレに性的興味がないんだなと実感する。グルーミングの途中でも反応してるの見た事ないし。
「兎獣人って、独身つらぬいて老人になるヒトほとんどいないんだよね」
難しい事、と言われてふと思い出したのはソレだった。
肩越しに振り返って見ると、黒崎さんは穏やかな笑顔でオレを見つめ、話の続きを待っている。
「これは兎獣人の中でしか知られてない常識なんだけど、伴侶を持たずに長いこと独り身でいると精神状態がどんどん悪くなって最悪死ぬんだって」
「……それは、また」
「大げさだと思う? でも、本当。独り身の兎は早死になの。だから二十歳になる頃にはみーんな、親の勧めで結婚してる。だからオレも今度実家に恋人紹介にいくつもりだったんだけど……。別れちゃったしこのままだと見合いかな」
はあ、とため息をついてオレは身体の向きを変えた。黒崎さんの太い首に腕を回して、ギュッと抱きつく。
メンヘラっぽさが加速するから愚痴はあんまり言いたくないんだけど、黒崎さんが聞き上手過ぎていつの間にか話してた。
初体験に続きセックスの失敗談とか恋人への不平不満までたくさん聞いて貰ってる。
相槌も多すぎず少なすぎず、口は挟まないけどちゃんと聞いてるよって顔で見ててくれるんだ。つい口が滑って話し過ぎちゃう。
このところ話題が兎獣人の家族の方面へシフトしてるところだった。
理由は、最近実家から連絡があって今度の休みには一度帰ってこいって言われてるから。
たぶんこれ、見合いだなーってすぐ判る。
恋人と別れたってのはどうやら弟から伝わったらしくて、ホント余計な事しやがってあいつ。オレが弟にすぐ愚痴るからいけないんだけど。
ちなみに弟に黒崎さんの事は内緒にしていた。
話したらきっと、『初対面の大型獣人アルファについてって家に上がるとか何してんの。
危機感仕事してる? 本当に馬鹿なの?』って叱られる。
弟は身持ちが堅くてしっかりした真面目な兎獣人で、楽天家の両親とはまったく気質が違う。
オレの恋人関係とか、結婚についてもかなり真剣に悩んでくれてるみたいだった。弟に結婚の世話される兄ってちょっとどうなんだろうね。
「気持ち良くして、黒崎さん」
「リリは気持ち良いの好きだね」
「うん。大好き。あとキスも好き」
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