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二十九話 一緒にお風呂※

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 三体目の巨人が倒され、闘技場の安全が確保された。

 逃げ遅れていた国民たちは、護り神であるカルロスと勇敢に戦った戦士たちを讃え、新たな救世主となったアドリアナを崇拝した。

 事後処理を部下に指示し終えたカルロスが、アドリアナのもとへやってくる。



「見事だった。強くなったな」



 もう泣き止んでいたアドリアナだったが、薄汚れた顔の目の下だけが、筋を描いてきれいなので、涙を流したのだとカルロスは気がついた。

 そしてその涙の原因が、隣にいるバーナビーの怪我のせいであることも予想がついた。

 

「舐めてやればいい。それくらいの傷なら、跡形もなく治るだろう。早ければ早いほどいい」



 カルロスから言われたことに、首をかしげるアドリアナ。



「忘れてしまったか? 俺たちの唾液には、傷を治す力がある。昔に教えたはずだが」

「小さい頃は傷を舐めていた。だが、院長先生に傷を舐めてはいけないと言われて、それからは薬を塗るようになった」

「そうか。あまり知られてはいないことだからな。舐めたほうが傷の治りが早かっただろう?」

「私の体が丈夫なせいだと思っていた」



 ははっとカルロスが珍しく声をあげて笑った。

 きっとまだ、巨人と戦って高揚した気分が残っているのだろう。



「丈夫なことは確かだ。俺も滅多に怪我をしないから、忘れることがある。たっぷり唾液をつけてやることだ。キレイな顔も元通りになる」

「こんなに抉れているのに?」

「ダイナソーの血が濃ければ濃いほど、癒しの力は強まる。オニキスが舐めて駄目だったら、俺が舐めてやろう」

 

 横でバーナビーが少し仰け反ったのが、アドリアナの体に振動として伝わった。



「大丈夫だ、バーニーは私が治す」

「きっと良くなる」



 カルロスがそれで立ち去ろうとしたので、バーナビーは慌てて呼び止めた。

 デリオのことを伝えなくてはならない。



「おそらく首謀者はデリオです。最初に闘技場に入り込んだ巨人が、私たちに向かって手のひらの中に握っていたものを投げつけてきました。それがデリオでした。何らかの方法を用いて巨人をここまで誘導し、そして巨人に捕まってしまったのだと思います」

「なるほど、巨人たちの様子がおかしかったのも、そのせいか」

 

 カルロスは、バーナビーが指さした方に転がるデリオを見た。

 ボロボロになっていたデリオは、息をしているかどうかも怪しい。

 

「事情聴取は厳しいだろうな。ブランカを締め上げるか」



 恐ろしいことをボソリと呟き、カルロスはさらに奥にエステラが倒れているのを見つける。

 ハッとしたように駆け寄り、抱き上げると体の隅々を調べて無事を確かめる。



「また詳しい話を聞かせてもらうかもしれない。今はゆっくり休むといい」



 そう言い残して、カルロスはエステラと共に去った。



「お義父さんは、かなりエステラを大事にしているようですね?」

「実は、あの二人は、両想いではないかと思っている」

「年の差がネックになっているのでしょうか?」

「私に名案がある」



 そして教えてもらったアドリアナの考えに、バーナビーは笑って賛成するのだった。



 ◇◆◇



 まだ混乱の残る闘技場を後にして、バーナビーとアドリアナは客室に戻ってきた。

 まずは体についた土埃を落とさなければならない。

 寝室に隣接している浴室は半露天で広く、さすが水浴びが好きな爬虫類獣人の国だとバーナビーは感心したものだ。

 四角に掘り下げられた浴槽へたっぷりの湯を貯めている間、シャワーで体中の汚れを流してしまう。

 これまでアドリアナと一緒に風呂へ入ったことがなかったので、バーナビーはそれだけでドキドキしていた。

 なにしろ新婚旅行に行く直前、プールでいろいろアドリアナと遊びたいと思っていたバーナビーだ。

 それが今から実現するかもしれない期待をこらえきれない。

 そんなバーナビーの欲望を、下半身は如実に表していた。

 

「怪我をしている自覚はあるか?」



 アドリアナが呆れた目をしている。

 シャワーで流したおかげで、バーナビーの顔は血みどろではなくなったが、まだ血の塊が髪にこびりついている。

 それをお湯でふやかして、洗い流していくアドリアナ。

 優しく扱われている自分の髪にすら、嫉妬してしまうバーナビーは、はっきり言って心が狭い。

 

「これで血は落ちたかな。バーニー、体が冷えないように湯につかろう。傷を舐めるのはそれからだ」



 バーナビーの瞳がキラキラと輝きだす。

 これからアドリアナに、怪我をしたところを舐めてもらえる。

 それはバーナビーにとって、極上のご褒美だった。

 ニコニコとアドリアナの手を引いて、こんなところでも王子らしく完璧にエスコートしてみせるバーナビー。

 ただし下半身が全てを台無しにしていた。

 連れ立って浴槽に歩く間も、バーナビーのバーナビーは鼻歌でも歌っているかのようにブルンブルンとご機嫌に揺れて、先走りをぴゅっぴゅと嬉し気に飛ばしている。

 前に進んでいるので、時折べちんと腹に当たるのだが、全く気にしない。

 浴槽の中へ続くスロープを下り、ちょうどいい深さのところにくると、アドリアナはバーナビーを座らせる。

 壁が背もたれになるように、少しでも怪我に影響がないように。

 アドリアナが細心の注意を払っているというのに、いたずらなバーナビーの手はアドリアナのたわわな胸の先にある蕾をつまもうとしている。



「まったく、どうしようもないな。少しは大人しくしていろ」



 アドリアナはそう言うと、バーナビーの肉棒をぎゅっと握りしめる。



「あ……っ、いけません。今にもイッてしまいそうです」



 顔を赤く染め、色気のあるオーラをまき散らし出すバーナビーに、アドリアナはこれではお仕置きにならなかったと反省する。

 そして握っていた手を放し、今度はバーナビーの肉棒の根元だけを、輪にした人差し指と親指できゅうと締め付けた。



「ん、それは……けっこう、クるものがあります」



 ビクビクと震え、やっと大人しくなったバーナビーに、よしよしとご満悦なアドリアナ。

 これでようやく傷の手当をすることが出来る。



「バーニー、自分で髪をかき上げられるか? 私の左手は今、やんちゃ坊主を押さえるのに忙しい」

「……これで、いいですか?」



 恥ずかし気に瞼を伏せ、濡れた髪を左手でかき上げるバーナビーの艶冶は、アドリアナでなければ耐えられなかっただろう。

 まるで辺りに、ダイヤモンドでもばら撒かれたかのような眩しさだった。

 しかしその持ち上げられた金髪の下からは、生々しい肉色をした抉り傷が現れる。

 こめかみから頭部へ、子どもの手のひらほどの皮膚が、削り取られていた。

 シャワーで洗い流したせいか、固まっていた血が落ちて、新たな血がじんわりとにじみ出ている。

 アドリアナは、座るバーナビーの左半身に身を寄せ、そっと傷に舌を這わせた。

 ピクリと肩を動かしたバーナビー。

 それが痛みからではなく、快感によるものだと、アドリアナの左手は察知している。

 大きくなろうとするそれを、しっかり戒め直すと、アドリアナはより大胆に舐め始めた。



「アナ……私も舐めていいですか? 目の前に、美味しそうな天上の果実が……」



 バーナビーは、たわわなアドリアナの胸が自分の顔の前でゆらゆらしているのを、堪えきれないように見ていた。

 少しだけ舌先を出して、今にも舐めたげにチロチロ動かしている。

 

「駄目だ、じっとしていろ。いつまでたっても、舐め終わらないだろう」



 ぐんぐん大きくなる左手の中の物に、少しはご褒美をあげないと可哀そうだなと思うくらいには、アドリアナはバーナビーを愛している。

 だからなるべく急いで傷を舐めているのに、バーナビーが邪魔ばかりしてくるので、アドリアナは親指と人差し指で男性器の根元を締めるだけでなく、中指と薬指と小指でもって、その下にある睾丸も同じ目に合わせた。

 

「ひゃ……アナ、それは逆効果です」



 嬉しそうな顔をしたバーナビーに、アドリアナは躾の難しさを学ぶのだった。
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