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16話 色以外はいかがわしくない
赤いクラゲの粘液の配合率を調整し、立体物にも魔法陣を描けるだけの粘度を得ると、新たな時を遡るポーションは完成した。
赤いクラゲの粘液が赤かったので、それを混ぜると無色透明だったポーションは薄ピンク色に変化する。
(媚薬ポーションと言われても、おかしくない色合いになってしまったわね)
フラスコを底から覗き込みながら、ウェンディはちょっと眉をひそめた。
決していかがわしいポーションではないのに、見た目で損をするタイプになってしまった。
「気を取り直して、作戦を立てるわよ!」
ノートを取り出すと、綿密に計画を書き込んでいく。
ウェンディが奇襲を行うにあたって、作用を抑えるポーションと範囲を絞るポーションは使わない。
これらを事前に使用してしまうと、魔王の核に時を遡るポーションへの警戒心を抱かせてしまう。
作用を抑えるポーションについては、淫魔寄りの思考になるのを防ぐためにデクスターは毎日飲んでいるし、魔王の核が下半身にあることが分かった今、範囲を絞るポーションを省いても問題はない。
だが、夜這いが失敗する可能性も考えて、念のために予備として持っていくつもりだ。
「あとは、魔法陣よね……」
ペンでとんとんとノートの余白を叩く。
ウェンディはデクスターの下半身に、時を遡るポーションで魔法陣を描こうと思っている。
ふつうに塗布するよりも、魔法陣との重ね技によって効果が強化されるのだ。
そのことを発見したウェンディは、詳細なデータを卒論にまとめ、教授陣による満場一致の合格をもらい、飛び級で卒業を果たした。
今こそ腕の見せ所なわけだが――。
「どう見ても、この世界の魔法陣って、R18で御用達の淫紋柄なのよね……」
試しにノートに描いてみたウェンディは、ぱたりとペンを取り落とし、がばっと机に頭を伏せた。
「あ~、今から新しい魔法陣を作るのも時間がかかるし、やっぱりこれをデクスターさまの下腹部に描くしかないの?」
いくつものハートが集まったデザインの魔法陣は、卒論をまとめているときは素直に可愛いと思えたが、ピンク色のポーションで彩られると、まさしく淫紋にしか見えない。
「……仕方ないわね。背に腹は代えられないわ」
ウェンディは新たなポーションの完成を知らせるため、デクスターとホレイショに宛てた手紙を書き始めるのだった。
◇◆◇
【お嬢ちゃん、お待たせ! さあ、行こうか!】
ダニング伯爵経由で手紙を送ってから数日後、ホレイショが瞬間移動でウェンディを迎えに来た。
だが、日が沈んでから、まだ僅かしか時間が経っていない。
「こんなに早くに、デクスターさまは眠ってしまったの?」
【今日は朝からデカい猪と一戦やってさ。そいつを担いで山小屋まで運んで、毛皮を剝いだり肉をばらしたり、とにかくデクスターはクタクタで、風呂に入ったら寝ちまったんだ。あの様子じゃ、朝まで起きそうにない。オレは千載一遇のチャンスだと思うぜ!】
ホレイショが親指を立ててウェンディに見せているが、立てた親指が小さすぎて、ただの可愛い握りこぶしだった。
しかし意気込みは伝わる。
「分かったわ、準備は出来ているの。行きましょう!」
ポーション一式が入った鞄を背負い、ホレイショ同様にウェンディはやる気を漲らせた。
これからデクスターに夜這いをかける。
そのための手順は何度もイメトレしてきたし、万が一のトラブルにも対応できるよう、第二第三の手も考えてある。
(できることならば、今夜、決着をつけてしまいたい)
魔王の核が、デクスターと一体化し始める前へ時を戻す。
まずはそこを目指そう。
核の体外への排出方法を考えるのは、その先の仕事だ。
【飛ぶぜ!】
ホレイショが合図をすると、ウェンディの視界が歪む。
瞬きをし終えると、もうそこは雪山の中の山小屋だった。
ホレイショやデクスターは、人間と違うので暗闇でも困らないようだが、ウェンディはそうではない。
予め、夜目が効くようになるポーションを飲んできて良かった。
飛んだ先は真っ暗なデクスターの寝室で、ベッドにはぐっすりと眠る魔物のデクスターの姿が見えた。
【お嬢ちゃんを迎えに行く前に、突いてみたけど起きなかった。多分、デクスターはそうなるように、体を疲れさせたんだと思う。これでお嬢ちゃんは、ゆっくり実験できるだろう?】
この状況を、わざわざデクスターは作ってくれたのだ。
それをありがたく思って、ウェンディは実験に取り掛かる。
「このピンク色のポーションで、デクスターさまの下腹部に魔法陣を描くの。ホレイショは布団をめくってくれる?」
【よしきた! 魔物のデクスターは全裸で寝るからな、下腹部だってバッチリ露出してるぜ】
言い方! とホレイショを注意をしながら、ウェンディは筆先にポーションをたっぷり染み込ませる。
何度も描いて覚えた魔法陣を、これからデクスターに施すために。
緊張して手が震えないよう、自分を叱咤しながらウェンディは挑む。
褐色の肌の上を筆が滑り、いくつものハートが下腹部に咲き乱れた。
塗布タイプのポーションなら、じんわりと皮膚に浸透して、経口摂取したときよりも、核からの反発はないはずだ。
現に魔法陣を描き終わっても、魔王の核は大人しく、デクスターも眠ったままだった。
【成功したか?】
「ポーションが完全に吸収されれば、この魔法陣が消えるはずよ。それまで見守りましょう」
【その間に、何かすることはないのか?】
「そうねえ……」
ウェンディは隣に置いている鞄の中をゴソゴソと覗く。
塗布タイプのポーションの他にも、試してみたいポーションがいくつかある。
それらを取り出して並べていると、寝ているはずのデクスターの様子がおかしいことに気づく。
はあ、はあ、はあ……
苦しそうな呼吸音と共に、デクスターの額に汗がにじみ出していた。
【そう言えば、今日は疲れ果ててすぐに眠ったから、デクスターはポーションを飲み忘れてるかもしれないなあ。ほら、毎日の黄緑色のアレだよ】
「作用を抑えるポーションね。ということは、これは時を遡るポーションの影響ではなく、淫魔寄りの思考が表出しているせいね。……ちょっと試してみようかしら?」
ウェンディは並べたポーションのうち、黄緑色のものを手に取る。
デクスターが飲み忘れたかもしれない、作用を抑えるポーションと同じものだ。
ただし今夜ここへ持ってきたポーションには、全て王家から譲ってもらった『特殊な素材』が配合されている。
いつもデクスターに飲んでもらっていたポーションよりも、効きがいいはずだ。
【お、なんだ? 口移しで飲ませるつもりか?】
ホレイショが楽しそうに囃し立てるが、そうではない。
むしろ口移しのほうが、まだ恥ずかしくはないだろう。
「口から飲んだときのデータは取れたから、今から試すのは別の方法よ」
口は口でも、下の口だ。
ウェンディはこれから、この黄緑色のポーションをデクスターの男性器にある溝に沿って流し、口以外のルートから体内に入れられないかを試すつもりだった。
しかし、デクスターの下半身をまさぐるが、すべすべとした鱗の感触だけで、目当てのものが見つからない。
「あのときはすぐ見つかったのに、どこにもないわ」
【なんだよ、キノコを探してるのか? それならスリットの中だよ。使うとき以外は出てこないんだ】
「スリット? 切れ目があるの?」
【そうそう、ポケットみたいになってんだよ】
ホレイショに教えられて、ウェンディは慎重に指先を滑らせスリットを探す。
それがくすぐったかったのか、デクスターが身をよじり出した。
起きてしまうかも、とウェンディが手を引っ込めようとしたら、それと同時にぴょこんとキノコが現れる。
「あ、出たわ!」
【やっぱりポーションを飲んでないせいで、淫魔寄りになってるなあ。放っておくと、眠ったまま自慰を始めちゃうぞ】
「それより前に効くといいんだけど」
ウェンディはキノコ目がけて、黄緑色のポーションを滴らせた。
【飲むポーションって、塗っても効くのか?】
「厳密には、発動条件が違うの。飲むポーションは体内に入ったら発動、塗るポーションは対象に触れたら発動って感じね。これは飲む用だから、デクスターさまの体内に入ってくれれば、口からじゃなくてもいいのよ」
デクスターの男性器がぶるんぶるんと暴れているのを、ウェンディは押さえつける。
せっかく垂らしたポーションが、飛び散ってしまったからだ。
今度は溝の位置を確かめて、そこへ流し込むようにポーションを垂らす。
すると、ビクンとデクスターが一瞬だけ硬直し、艶めいた息を吐いてゆっくりと弛緩した。
赤いクラゲの粘液が赤かったので、それを混ぜると無色透明だったポーションは薄ピンク色に変化する。
(媚薬ポーションと言われても、おかしくない色合いになってしまったわね)
フラスコを底から覗き込みながら、ウェンディはちょっと眉をひそめた。
決していかがわしいポーションではないのに、見た目で損をするタイプになってしまった。
「気を取り直して、作戦を立てるわよ!」
ノートを取り出すと、綿密に計画を書き込んでいく。
ウェンディが奇襲を行うにあたって、作用を抑えるポーションと範囲を絞るポーションは使わない。
これらを事前に使用してしまうと、魔王の核に時を遡るポーションへの警戒心を抱かせてしまう。
作用を抑えるポーションについては、淫魔寄りの思考になるのを防ぐためにデクスターは毎日飲んでいるし、魔王の核が下半身にあることが分かった今、範囲を絞るポーションを省いても問題はない。
だが、夜這いが失敗する可能性も考えて、念のために予備として持っていくつもりだ。
「あとは、魔法陣よね……」
ペンでとんとんとノートの余白を叩く。
ウェンディはデクスターの下半身に、時を遡るポーションで魔法陣を描こうと思っている。
ふつうに塗布するよりも、魔法陣との重ね技によって効果が強化されるのだ。
そのことを発見したウェンディは、詳細なデータを卒論にまとめ、教授陣による満場一致の合格をもらい、飛び級で卒業を果たした。
今こそ腕の見せ所なわけだが――。
「どう見ても、この世界の魔法陣って、R18で御用達の淫紋柄なのよね……」
試しにノートに描いてみたウェンディは、ぱたりとペンを取り落とし、がばっと机に頭を伏せた。
「あ~、今から新しい魔法陣を作るのも時間がかかるし、やっぱりこれをデクスターさまの下腹部に描くしかないの?」
いくつものハートが集まったデザインの魔法陣は、卒論をまとめているときは素直に可愛いと思えたが、ピンク色のポーションで彩られると、まさしく淫紋にしか見えない。
「……仕方ないわね。背に腹は代えられないわ」
ウェンディは新たなポーションの完成を知らせるため、デクスターとホレイショに宛てた手紙を書き始めるのだった。
◇◆◇
【お嬢ちゃん、お待たせ! さあ、行こうか!】
ダニング伯爵経由で手紙を送ってから数日後、ホレイショが瞬間移動でウェンディを迎えに来た。
だが、日が沈んでから、まだ僅かしか時間が経っていない。
「こんなに早くに、デクスターさまは眠ってしまったの?」
【今日は朝からデカい猪と一戦やってさ。そいつを担いで山小屋まで運んで、毛皮を剝いだり肉をばらしたり、とにかくデクスターはクタクタで、風呂に入ったら寝ちまったんだ。あの様子じゃ、朝まで起きそうにない。オレは千載一遇のチャンスだと思うぜ!】
ホレイショが親指を立ててウェンディに見せているが、立てた親指が小さすぎて、ただの可愛い握りこぶしだった。
しかし意気込みは伝わる。
「分かったわ、準備は出来ているの。行きましょう!」
ポーション一式が入った鞄を背負い、ホレイショ同様にウェンディはやる気を漲らせた。
これからデクスターに夜這いをかける。
そのための手順は何度もイメトレしてきたし、万が一のトラブルにも対応できるよう、第二第三の手も考えてある。
(できることならば、今夜、決着をつけてしまいたい)
魔王の核が、デクスターと一体化し始める前へ時を戻す。
まずはそこを目指そう。
核の体外への排出方法を考えるのは、その先の仕事だ。
【飛ぶぜ!】
ホレイショが合図をすると、ウェンディの視界が歪む。
瞬きをし終えると、もうそこは雪山の中の山小屋だった。
ホレイショやデクスターは、人間と違うので暗闇でも困らないようだが、ウェンディはそうではない。
予め、夜目が効くようになるポーションを飲んできて良かった。
飛んだ先は真っ暗なデクスターの寝室で、ベッドにはぐっすりと眠る魔物のデクスターの姿が見えた。
【お嬢ちゃんを迎えに行く前に、突いてみたけど起きなかった。多分、デクスターはそうなるように、体を疲れさせたんだと思う。これでお嬢ちゃんは、ゆっくり実験できるだろう?】
この状況を、わざわざデクスターは作ってくれたのだ。
それをありがたく思って、ウェンディは実験に取り掛かる。
「このピンク色のポーションで、デクスターさまの下腹部に魔法陣を描くの。ホレイショは布団をめくってくれる?」
【よしきた! 魔物のデクスターは全裸で寝るからな、下腹部だってバッチリ露出してるぜ】
言い方! とホレイショを注意をしながら、ウェンディは筆先にポーションをたっぷり染み込ませる。
何度も描いて覚えた魔法陣を、これからデクスターに施すために。
緊張して手が震えないよう、自分を叱咤しながらウェンディは挑む。
褐色の肌の上を筆が滑り、いくつものハートが下腹部に咲き乱れた。
塗布タイプのポーションなら、じんわりと皮膚に浸透して、経口摂取したときよりも、核からの反発はないはずだ。
現に魔法陣を描き終わっても、魔王の核は大人しく、デクスターも眠ったままだった。
【成功したか?】
「ポーションが完全に吸収されれば、この魔法陣が消えるはずよ。それまで見守りましょう」
【その間に、何かすることはないのか?】
「そうねえ……」
ウェンディは隣に置いている鞄の中をゴソゴソと覗く。
塗布タイプのポーションの他にも、試してみたいポーションがいくつかある。
それらを取り出して並べていると、寝ているはずのデクスターの様子がおかしいことに気づく。
はあ、はあ、はあ……
苦しそうな呼吸音と共に、デクスターの額に汗がにじみ出していた。
【そう言えば、今日は疲れ果ててすぐに眠ったから、デクスターはポーションを飲み忘れてるかもしれないなあ。ほら、毎日の黄緑色のアレだよ】
「作用を抑えるポーションね。ということは、これは時を遡るポーションの影響ではなく、淫魔寄りの思考が表出しているせいね。……ちょっと試してみようかしら?」
ウェンディは並べたポーションのうち、黄緑色のものを手に取る。
デクスターが飲み忘れたかもしれない、作用を抑えるポーションと同じものだ。
ただし今夜ここへ持ってきたポーションには、全て王家から譲ってもらった『特殊な素材』が配合されている。
いつもデクスターに飲んでもらっていたポーションよりも、効きがいいはずだ。
【お、なんだ? 口移しで飲ませるつもりか?】
ホレイショが楽しそうに囃し立てるが、そうではない。
むしろ口移しのほうが、まだ恥ずかしくはないだろう。
「口から飲んだときのデータは取れたから、今から試すのは別の方法よ」
口は口でも、下の口だ。
ウェンディはこれから、この黄緑色のポーションをデクスターの男性器にある溝に沿って流し、口以外のルートから体内に入れられないかを試すつもりだった。
しかし、デクスターの下半身をまさぐるが、すべすべとした鱗の感触だけで、目当てのものが見つからない。
「あのときはすぐ見つかったのに、どこにもないわ」
【なんだよ、キノコを探してるのか? それならスリットの中だよ。使うとき以外は出てこないんだ】
「スリット? 切れ目があるの?」
【そうそう、ポケットみたいになってんだよ】
ホレイショに教えられて、ウェンディは慎重に指先を滑らせスリットを探す。
それがくすぐったかったのか、デクスターが身をよじり出した。
起きてしまうかも、とウェンディが手を引っ込めようとしたら、それと同時にぴょこんとキノコが現れる。
「あ、出たわ!」
【やっぱりポーションを飲んでないせいで、淫魔寄りになってるなあ。放っておくと、眠ったまま自慰を始めちゃうぞ】
「それより前に効くといいんだけど」
ウェンディはキノコ目がけて、黄緑色のポーションを滴らせた。
【飲むポーションって、塗っても効くのか?】
「厳密には、発動条件が違うの。飲むポーションは体内に入ったら発動、塗るポーションは対象に触れたら発動って感じね。これは飲む用だから、デクスターさまの体内に入ってくれれば、口からじゃなくてもいいのよ」
デクスターの男性器がぶるんぶるんと暴れているのを、ウェンディは押さえつける。
せっかく垂らしたポーションが、飛び散ってしまったからだ。
今度は溝の位置を確かめて、そこへ流し込むようにポーションを垂らす。
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