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4 敗戦国の王子x寵姫(2023.6.24)
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貧民街生まれの受け。
その地方で一番偉い領主様の美女狩りに遭って、美味しい食事があると言われて行くことになった。
連れて行かれた屋敷にはたくさんの美男美女がいたけど、綺麗に磨かれた受けは誰よりも綺麗で、領主の寵愛を一身に受ける。
痛くて辛いのを我慢すれば美味しいご飯と綺麗な服が着られる、と頑張った。
領主は武人で格好よかったので、雰囲気が怖いし身体が辛いのを除けば、抱かれるのは嫌いじゃなかった受け。
でも少し経った頃、気を抜くと領主が他の寵姫のところにいっちゃうようになってきたので、自分の見た目を必死で磨いた。
「やっぱり受けが一番きれい」と言われるのが心地よくて、受けはキレイでいようと頑張り続ける。
何年かして、一人の男がやってきた。領主に滅ぼされた隣国の人だとかで、顔には傷があるし目つきも悪くて、全然綺麗じゃない。
なのにそいつは受けを見た瞬間、憐れみの目で「醜いな」と言った。
怒った受けはそいつをギャフンと言わせようとするけど、全部失敗。
そんな中、領主が少しずつそいつの元に通うようになり、受けの所に来なくなる。
なんであんな不細工に! と怒っていた受けだけど、段々と周りが顔だけの受けよりも優しくて賢いそいつを推すように。
このままじゃ自分の立場がまずい! と思った受けは、
「学がないのがいけないのか!」
とそいつに教えを乞う。
ライバルに教えを乞うなんて、常識的に考えてあり得ない。だけど受けは極貧育ちでろくに教育も受けていなかったので、常識なんて知らなかった。
「お前はバカか?」
と言われても粘る受け。あまりにもしつこく粘る為、そいつは少しずついろんな知識を教えてくれるようになった。
受けの真っ直ぐなところに、初めは戸惑っていたそいつも少しずつ気を許すように。
領主は受けのところには全く来なくなったけど、代わりに読み書きの時間ができた。
知識を得る度に、自分の置かれている状況を理解していく受けだった。
そんなある日。いつもの通りそいつに教えてもらっていた受け、そいつがどんよりと沈んでいることに気付く。
するとそいつは受けに小声で言った。
「鳥の鳴き声を聞いたら床下に隠れろ」と。
その頃にはそいつが隣国の王子様だったことも察していた受けは、
「うん、分かったよ」
と明るく答えた。そいつは何故かホッとした表情だった。
でも実は受け、本当は隠れるつもりはない。散々悪事を働いていた領主に囲われていた者として、この場で殉死することを決意していた。
民の命を犠牲にして贅沢させてもらっていた自分は、ここから逃げ出したらきっと殺される。これ見よがしに犯されながら死ぬぐらいなら、潔く死ぬことを選んだのだ。
数日後。鳥の声の合図を聞いた受けは、自室で静かに待つ。
隣国の兵が受けを誰何してきたので、
「領主の寵姫でした」
と正直に答えた。
だけど、顔が美人過ぎるから、殺すのを惜しまれて捕らえられたら敵わない。受けは自ら顔に傷をつけた。
敵兵に剣を振りかぶられたところで死を覚悟し、意識を失う。
目を覚ますと柔らかな布団に寝かされていた受け。顔に包帯が巻かれ、誰かに手を握られているけど分からない。
「どうして隠れなかったんだ……!」
という声を聞いて、隣国の王子がいることに気づく受け。
「俯瞰的に物事を見ろと言ったのはお前だろ。俺は生きていても邪魔なだけだ。だから……」
抱きしめられながら怒られる受け。
「論理的なお前が感情的になるなよ」
と言うともっと怒られてしまった。
王子が絶対死ぬなとしつこいので、
「だったら治ったら仕事くれよ」
と頼む受け。
「お前の仕事は決めてある」
「期待しておくよ」
と決まったところで、治療に専念した。
やがて包帯は取れたけど、顔についた大きな傷は残った。
でもまあこれで前みたいな仕事はしなくて済むな、とさっぱりした受け。
「じゃあそろそろ、俺の仕事くれよ」
と王子に言うと、
「わかった」
と急に跪く王子。
「王配として、これから俺を支えてほしい」
「……は?」
口説きまくる王子。
どんな状況でも真っ直ぐだった受けがいなければ途中でめげていた、この先も自分の隣にいて後ろを向きそうな自分に前を見せてほしいと言う。真っ直ぐな眼差しに、王子が本気なことを悟る。
だったら王子に助けられたこの命を、残りの生涯王子にやろうじゃないかと思えた受け。
「……ただのお飾りにしたら離婚するぞ」
「心得た」
ということで結婚した二人。
言い争いも多いけど、時折闇落ちしそうになる王子を助けながら、二人は国を復興させる。
何年後かに発行された建国記念コインの裏表には、傷の入った二人の肖像が裏表に入ったのでした。
補足
受けは知識を得始めた時点で王子に惹かれてたけど、どうしようもないことももう理解できていたので諦めていた。
その地方で一番偉い領主様の美女狩りに遭って、美味しい食事があると言われて行くことになった。
連れて行かれた屋敷にはたくさんの美男美女がいたけど、綺麗に磨かれた受けは誰よりも綺麗で、領主の寵愛を一身に受ける。
痛くて辛いのを我慢すれば美味しいご飯と綺麗な服が着られる、と頑張った。
領主は武人で格好よかったので、雰囲気が怖いし身体が辛いのを除けば、抱かれるのは嫌いじゃなかった受け。
でも少し経った頃、気を抜くと領主が他の寵姫のところにいっちゃうようになってきたので、自分の見た目を必死で磨いた。
「やっぱり受けが一番きれい」と言われるのが心地よくて、受けはキレイでいようと頑張り続ける。
何年かして、一人の男がやってきた。領主に滅ぼされた隣国の人だとかで、顔には傷があるし目つきも悪くて、全然綺麗じゃない。
なのにそいつは受けを見た瞬間、憐れみの目で「醜いな」と言った。
怒った受けはそいつをギャフンと言わせようとするけど、全部失敗。
そんな中、領主が少しずつそいつの元に通うようになり、受けの所に来なくなる。
なんであんな不細工に! と怒っていた受けだけど、段々と周りが顔だけの受けよりも優しくて賢いそいつを推すように。
このままじゃ自分の立場がまずい! と思った受けは、
「学がないのがいけないのか!」
とそいつに教えを乞う。
ライバルに教えを乞うなんて、常識的に考えてあり得ない。だけど受けは極貧育ちでろくに教育も受けていなかったので、常識なんて知らなかった。
「お前はバカか?」
と言われても粘る受け。あまりにもしつこく粘る為、そいつは少しずついろんな知識を教えてくれるようになった。
受けの真っ直ぐなところに、初めは戸惑っていたそいつも少しずつ気を許すように。
領主は受けのところには全く来なくなったけど、代わりに読み書きの時間ができた。
知識を得る度に、自分の置かれている状況を理解していく受けだった。
そんなある日。いつもの通りそいつに教えてもらっていた受け、そいつがどんよりと沈んでいることに気付く。
するとそいつは受けに小声で言った。
「鳥の鳴き声を聞いたら床下に隠れろ」と。
その頃にはそいつが隣国の王子様だったことも察していた受けは、
「うん、分かったよ」
と明るく答えた。そいつは何故かホッとした表情だった。
でも実は受け、本当は隠れるつもりはない。散々悪事を働いていた領主に囲われていた者として、この場で殉死することを決意していた。
民の命を犠牲にして贅沢させてもらっていた自分は、ここから逃げ出したらきっと殺される。これ見よがしに犯されながら死ぬぐらいなら、潔く死ぬことを選んだのだ。
数日後。鳥の声の合図を聞いた受けは、自室で静かに待つ。
隣国の兵が受けを誰何してきたので、
「領主の寵姫でした」
と正直に答えた。
だけど、顔が美人過ぎるから、殺すのを惜しまれて捕らえられたら敵わない。受けは自ら顔に傷をつけた。
敵兵に剣を振りかぶられたところで死を覚悟し、意識を失う。
目を覚ますと柔らかな布団に寝かされていた受け。顔に包帯が巻かれ、誰かに手を握られているけど分からない。
「どうして隠れなかったんだ……!」
という声を聞いて、隣国の王子がいることに気づく受け。
「俯瞰的に物事を見ろと言ったのはお前だろ。俺は生きていても邪魔なだけだ。だから……」
抱きしめられながら怒られる受け。
「論理的なお前が感情的になるなよ」
と言うともっと怒られてしまった。
王子が絶対死ぬなとしつこいので、
「だったら治ったら仕事くれよ」
と頼む受け。
「お前の仕事は決めてある」
「期待しておくよ」
と決まったところで、治療に専念した。
やがて包帯は取れたけど、顔についた大きな傷は残った。
でもまあこれで前みたいな仕事はしなくて済むな、とさっぱりした受け。
「じゃあそろそろ、俺の仕事くれよ」
と王子に言うと、
「わかった」
と急に跪く王子。
「王配として、これから俺を支えてほしい」
「……は?」
口説きまくる王子。
どんな状況でも真っ直ぐだった受けがいなければ途中でめげていた、この先も自分の隣にいて後ろを向きそうな自分に前を見せてほしいと言う。真っ直ぐな眼差しに、王子が本気なことを悟る。
だったら王子に助けられたこの命を、残りの生涯王子にやろうじゃないかと思えた受け。
「……ただのお飾りにしたら離婚するぞ」
「心得た」
ということで結婚した二人。
言い争いも多いけど、時折闇落ちしそうになる王子を助けながら、二人は国を復興させる。
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