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大分しばらくしてから、ユージーンさんが顔を上げた。ゆるりとだけど、彼の腕に包まれたままだ。
「ごめん。……じゃあこっちに来てからは?」
ユージーンさんの声は、少し掠れていた。
「泉で寝ていたら兵隊さんに連れて行かれて、あれこれ聞かれた後はローランさんに引き合わせてもらいました」
初対面のユージーンさんにこうもあっさり深い話をしてしまったのは、ユージーンさんの反応が感情豊かで、かつ年が近くて気安いこともあったのかもしれない。
そう、きっとだからだ。
本音がぽろりと漏れてしまったのは。
「母さんを亡くしてから、正直何を目標に生きていったらいいか分からなくなってたんです」
「イクト……」
青い目が、悲痛そうに揺れる。
「でも、今日ユージーンさんが色んな話をしてくれて……」
しまった、こんなつまらない話は聞きたくないかも。
どうしよう……と言い淀んでいると、ユージーンさんが囁き声で促してきた。
「……うん。聞いてるよ。聞かせて」
ユージーンさんの柔らかい声に、勇気をもらう。腕に包まれた安心感も相まって、続きの言葉がするすると出てきた。
「僕、こっちの世界の色んな味を知りたいなって思ったんです」
「うん」
「それで、お世話になってるローランさんやユージーンさんに美味しいって言って笑ってもらいたいなって……。目標、というにはあれかもしれないですけど……へへ」
老若男女や善人悪人を問わず、どんな人だって美味しいものを食べたらきっと笑顔になる。僕はいまいち覇気も足りないし異世界で偉業を成すような逞しさもきっと持ってないけど、どんな人でも笑顔になれるお手伝いができたら嬉しいなって思ったんだ。
ユージーンさんが、潤んだ瞳で至近距離から僕を見つめる。
「ぐっときた……なにこの尊さ……てゆーかキュンてきた、俺の心臓は今日鷲掴みにされっ放しだ」
小声でぶつぶつ言ってるからよく聞き取れないけど、どうしたんだろうか。
「ユージーンさん?」
すぐ近くにあるユージーンさんの顔を見上げる。ユージーンさんは何だか切羽詰まったような表情をしていた。あ、もしかしてトイレかな。
「……イクト」
これまでにない真剣そのものの声色に、どきりとする。
「は、はい?」
「俺がイクトの願いを叶えてみせるから」
「へ……っ」
「嘘じゃない、本気だ」
「は、はあ……?」
調味料を一緒に探してくれるってことだろうか。それは願ったり叶ったりなので、よく分からないまま曖昧に頷く。
するとそれを見たユージーンさんはパアアッ! と笑顔に変わり、僕のおでこにチュッとキスを落とした。――えええっ!?
「ユ、ユージーンさん!?」
「イクトもイクトの夢も俺が守るから」
「え、あの、」
「こうなったら片時も目を離せないな……よし、このまま寝よう!」
僕の脳みそが状況判断できずにフリーズしている間に、ユージーンさんは僕に腕枕をしてきゅっと抱き寄せ僕の首まで布団をかける。
当たり前のように囁く。
「おやすみイクト」
「へ……っお、おやすみなさい……?」
え、このままここで寝るの? 嘘だろう、心臓がドキドキして痛くて寝られなさそう。
そう、思っていたのに。
ユージーンさんの温かい腕の中は優しくて、なんだかホッとしてしまい。
次に目を開けると、窓の外から朝日が差し込んでいた。
視線を感じ、そちらを何気なく見る。
「純粋だった俺のイクトが、ユージーンに汚されてしまった……!」
部屋の入り口で、ローランさんがムンクのあの有名な絵画みたいなポーズをとっていた。
「ごめん。……じゃあこっちに来てからは?」
ユージーンさんの声は、少し掠れていた。
「泉で寝ていたら兵隊さんに連れて行かれて、あれこれ聞かれた後はローランさんに引き合わせてもらいました」
初対面のユージーンさんにこうもあっさり深い話をしてしまったのは、ユージーンさんの反応が感情豊かで、かつ年が近くて気安いこともあったのかもしれない。
そう、きっとだからだ。
本音がぽろりと漏れてしまったのは。
「母さんを亡くしてから、正直何を目標に生きていったらいいか分からなくなってたんです」
「イクト……」
青い目が、悲痛そうに揺れる。
「でも、今日ユージーンさんが色んな話をしてくれて……」
しまった、こんなつまらない話は聞きたくないかも。
どうしよう……と言い淀んでいると、ユージーンさんが囁き声で促してきた。
「……うん。聞いてるよ。聞かせて」
ユージーンさんの柔らかい声に、勇気をもらう。腕に包まれた安心感も相まって、続きの言葉がするすると出てきた。
「僕、こっちの世界の色んな味を知りたいなって思ったんです」
「うん」
「それで、お世話になってるローランさんやユージーンさんに美味しいって言って笑ってもらいたいなって……。目標、というにはあれかもしれないですけど……へへ」
老若男女や善人悪人を問わず、どんな人だって美味しいものを食べたらきっと笑顔になる。僕はいまいち覇気も足りないし異世界で偉業を成すような逞しさもきっと持ってないけど、どんな人でも笑顔になれるお手伝いができたら嬉しいなって思ったんだ。
ユージーンさんが、潤んだ瞳で至近距離から僕を見つめる。
「ぐっときた……なにこの尊さ……てゆーかキュンてきた、俺の心臓は今日鷲掴みにされっ放しだ」
小声でぶつぶつ言ってるからよく聞き取れないけど、どうしたんだろうか。
「ユージーンさん?」
すぐ近くにあるユージーンさんの顔を見上げる。ユージーンさんは何だか切羽詰まったような表情をしていた。あ、もしかしてトイレかな。
「……イクト」
これまでにない真剣そのものの声色に、どきりとする。
「は、はい?」
「俺がイクトの願いを叶えてみせるから」
「へ……っ」
「嘘じゃない、本気だ」
「は、はあ……?」
調味料を一緒に探してくれるってことだろうか。それは願ったり叶ったりなので、よく分からないまま曖昧に頷く。
するとそれを見たユージーンさんはパアアッ! と笑顔に変わり、僕のおでこにチュッとキスを落とした。――えええっ!?
「ユ、ユージーンさん!?」
「イクトもイクトの夢も俺が守るから」
「え、あの、」
「こうなったら片時も目を離せないな……よし、このまま寝よう!」
僕の脳みそが状況判断できずにフリーズしている間に、ユージーンさんは僕に腕枕をしてきゅっと抱き寄せ僕の首まで布団をかける。
当たり前のように囁く。
「おやすみイクト」
「へ……っお、おやすみなさい……?」
え、このままここで寝るの? 嘘だろう、心臓がドキドキして痛くて寝られなさそう。
そう、思っていたのに。
ユージーンさんの温かい腕の中は優しくて、なんだかホッとしてしまい。
次に目を開けると、窓の外から朝日が差し込んでいた。
視線を感じ、そちらを何気なく見る。
「純粋だった俺のイクトが、ユージーンに汚されてしまった……!」
部屋の入り口で、ローランさんがムンクのあの有名な絵画みたいなポーズをとっていた。
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