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19 噛み合わない
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手足を布の切れ端で縛られて、何故かユージーンさんの胡座の上に横向きに座らされた。どういうこと、この体勢。
「全部話せ、俺に隠し事は禁止だ」
普段は人好きのする笑顔がデフォルトのユージーンさんだけど、今は眉間に皺を寄せていて正直言って怖い。
「そもそも、昨日から様子がおかしかったな。何で自分の部屋で寝た?」
……これ、言わないといけないかな。
「イクト?」
端正な顔でにっこりされて、背筋がゾッとした。あ、本気で怒ってるって僕でも分かる笑顔だった。
マジギレされるくらい、僕は嫌われちゃったのかな。だったらもう、全部話してとことん嫌われた方が、下手にドキドキしたり期待しなくて済むかもしれない。
話す覚悟を決めた瞬間だった。
「……ユージーンさんとローランさんが話しているのを、聞いてしまったんです」
「ん? 俺と親父の?」
「その……ユージーンさんがそろそろ冒険に戻るって」
ああ、とユージーンさんが頷く。
「その後、僕の監督者を変えるとかいう話も聞いて」
「あ……あれ、聞かれてたの?」
へへ、と何故か照れくさそうに笑うユージーンさん。
「……だから……僕の気持ちが漏れてしまってそれでみんな居心地が悪くなったのなら、僕がひとりでできるところを見せたらみんな安心して僕と別れられるかなって」
「……は?」
唸り声のような低い声が、ユージーンさんから漏れる。
「いつも一緒に寝てくれてたのは、親を亡くして異世界転移をした僕を気遣ってくれてたんだって思ったら……ならひとりでも大丈夫ってところを見せたら、これ以上ユージーンさんに嫌われずに笑顔でさよならができるかなって」
「……ちょっと待て。待て待て、俺が誰を嫌うって? え、さよならってなに?」
ユージーンさんが驚いた顔で僕の顔を覗き込んだ。――あれ?
「ええと……ユージーンさんは旅に出るんですよね?」
「ああ、そのつもりだけど」
「僕の監督者を変えようとしてるんですよね?」
「ああ、それはそうだけど、」
やっぱりそうじゃないか。なのに何でそんな不思議そうなんだろう。
よく分からないけど、とりあえず話を先に進めよう。
「それで……だから、ひとりでできることを証明しようと思って油屋に行ったんです」
「はあ……?」
「まさか火蜥蜴なんて出てくるとは思ってもなかったんですけど……。僕は中身が空っぽな存在だけど、この世界に来た意味はあの男の子を助けることだったんだって思ったら、怖くなくなりましたよ」
ユージーンさんが「空っぽ……?」と呟いた。
「でもだから、ユージーンさんが助けてくれたのは有難いんですけど、なら僕が異世界転移した意味は結局何なんだろうって今悩んでます」
「嘘だろ……」
ユージーンさんは目を見開くと、僕の肩に顔を埋める。
「……あのさ、俺、ひとりで旅に出るつもりはなかったんだけど?」
「え? あ、もしかしてローランさんも行くんですか?」
そうか、だから僕の監督者から外れようと?
「んな訳ねーだろ。親父は村長だぞ。こっから動かねえよ」
「え? じゃあ……恋人さんとか、ですか?」
「……恋人になれたと思っていたのは俺だけだったみたいだけどな?」
相変わらず肩に埋もれているユージーンさんが、悔しそうな声を出した。
ズキン、と胸が痛む。でも、笑顔だ。僕は無理やり笑顔を作った。ユージーンさんに心配をかけては駄目だから。
「そんな、ユージーンさんに好かれて嫌な人なんていませんよ?」
「……そう?」
「そうですよ! だって僕だってユージーンさんといると嬉しかったし寂しくなかったし、毎日楽しかったし!」
一瞬で好きになってしまったくらい、ユージーンさんは輝いて見えたから。
「でも気付かなかったんだろ?」
「え? 何をですか?」
「……マジかよ」
ん? どうも何か話が噛み合ってない気がする。
「全部話せ、俺に隠し事は禁止だ」
普段は人好きのする笑顔がデフォルトのユージーンさんだけど、今は眉間に皺を寄せていて正直言って怖い。
「そもそも、昨日から様子がおかしかったな。何で自分の部屋で寝た?」
……これ、言わないといけないかな。
「イクト?」
端正な顔でにっこりされて、背筋がゾッとした。あ、本気で怒ってるって僕でも分かる笑顔だった。
マジギレされるくらい、僕は嫌われちゃったのかな。だったらもう、全部話してとことん嫌われた方が、下手にドキドキしたり期待しなくて済むかもしれない。
話す覚悟を決めた瞬間だった。
「……ユージーンさんとローランさんが話しているのを、聞いてしまったんです」
「ん? 俺と親父の?」
「その……ユージーンさんがそろそろ冒険に戻るって」
ああ、とユージーンさんが頷く。
「その後、僕の監督者を変えるとかいう話も聞いて」
「あ……あれ、聞かれてたの?」
へへ、と何故か照れくさそうに笑うユージーンさん。
「……だから……僕の気持ちが漏れてしまってそれでみんな居心地が悪くなったのなら、僕がひとりでできるところを見せたらみんな安心して僕と別れられるかなって」
「……は?」
唸り声のような低い声が、ユージーンさんから漏れる。
「いつも一緒に寝てくれてたのは、親を亡くして異世界転移をした僕を気遣ってくれてたんだって思ったら……ならひとりでも大丈夫ってところを見せたら、これ以上ユージーンさんに嫌われずに笑顔でさよならができるかなって」
「……ちょっと待て。待て待て、俺が誰を嫌うって? え、さよならってなに?」
ユージーンさんが驚いた顔で僕の顔を覗き込んだ。――あれ?
「ええと……ユージーンさんは旅に出るんですよね?」
「ああ、そのつもりだけど」
「僕の監督者を変えようとしてるんですよね?」
「ああ、それはそうだけど、」
やっぱりそうじゃないか。なのに何でそんな不思議そうなんだろう。
よく分からないけど、とりあえず話を先に進めよう。
「それで……だから、ひとりでできることを証明しようと思って油屋に行ったんです」
「はあ……?」
「まさか火蜥蜴なんて出てくるとは思ってもなかったんですけど……。僕は中身が空っぽな存在だけど、この世界に来た意味はあの男の子を助けることだったんだって思ったら、怖くなくなりましたよ」
ユージーンさんが「空っぽ……?」と呟いた。
「でもだから、ユージーンさんが助けてくれたのは有難いんですけど、なら僕が異世界転移した意味は結局何なんだろうって今悩んでます」
「嘘だろ……」
ユージーンさんは目を見開くと、僕の肩に顔を埋める。
「……あのさ、俺、ひとりで旅に出るつもりはなかったんだけど?」
「え? あ、もしかしてローランさんも行くんですか?」
そうか、だから僕の監督者から外れようと?
「んな訳ねーだろ。親父は村長だぞ。こっから動かねえよ」
「え? じゃあ……恋人さんとか、ですか?」
「……恋人になれたと思っていたのは俺だけだったみたいだけどな?」
相変わらず肩に埋もれているユージーンさんが、悔しそうな声を出した。
ズキン、と胸が痛む。でも、笑顔だ。僕は無理やり笑顔を作った。ユージーンさんに心配をかけては駄目だから。
「そんな、ユージーンさんに好かれて嫌な人なんていませんよ?」
「……そう?」
「そうですよ! だって僕だってユージーンさんといると嬉しかったし寂しくなかったし、毎日楽しかったし!」
一瞬で好きになってしまったくらい、ユージーンさんは輝いて見えたから。
「でも気付かなかったんだろ?」
「え? 何をですか?」
「……マジかよ」
ん? どうも何か話が噛み合ってない気がする。
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