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ユージーンさんがゆっくりと顔を上げて、僕を上目遣いで見つめた。
「……俺、イクトと恋人になれたと思ってたんだけど?」
「――えっ?」
え、え、どういうこと!? 言われている意味が分からなくてぽかんとしていると、ユージーンさんが僕にぎゅっと抱きつく。
「旅は、イクトと行こうと思って親父に調べてもらってたんだ。監督者から三日以上離れちゃいけないって聞いたから、監督者を親父から俺に変更できないかって思ってさ」
「……嘘だ……」
にわかには信じられなかった。
「嘘じゃない、色んな土地の調味料や料理をイクトに味わせてあげたかったから」
「だってそんな話は、僕はユージーンさんからもローランさんからも一度も……」
ユージーンさんが、バツが悪そうな顔になる。
「……驚かせてやろうと思って」
「へ……っ」
「驚いて喜ぶかなって思ったから……」
言葉が尻すぼみになっていった。
僕にはユージーンさんが言っていることがよく理解できていなかった。だって、まるでこれじゃ、ユージーンさんが僕のことを好きみたいじゃないか。
さすがにこれは確認すべきじゃないか。勇気を振り絞り、尋ねる。
「あの……僕はユージーンさんの何なんでしょう?」
「俺的には恋人、なんだけど」
「え、だってそんなことひと言も」
目線を落としたユージーンさんが、ぼそりと返す。
「イクトもイクトの夢も俺が守るからって言ったら嬉しそうだったし、おでこやほっぺにキスしても嫌がらないし、毎晩一緒に寝てたし……」
「……あれ、まさか告白だったんですか?」
「そのつもりだったんだけど……通じてなかったって知って、今かなり驚いてる」
いやいや、そこは僕が驚く方だろう。
「なあイクト」
切なそうな息が、首に吹きかかる。
「俺はイクトに出会ったその日から、イクトの可愛らしい見た目や健気なところや俺の胃袋をがっつり掴んでいったところに惚れてる」
「う、嘘だ……っ」
可愛い? 健気? 一体どこのイクトの話をしているんだろうと思っても仕方ないと思う。
「僕、可愛くないし、」
「え、滅茶苦茶モテ顔なの気付いてないのか? 異国情緒っていうの? 凄く雰囲気あっていいよ」
そうだったのか? 東洋人ののっぺり顔が一部の欧米人に人気とかそういう類なのか? でも――それなら嬉しい。
「……逆に聞きたいんだけど」
「は、はい」
「イクトは俺のこと好き?」
直球だった。
「は、はい……」
「よし……! 恋人になりたい?」
「は、はい」
ユージーンさんの温かい手が、僕のうなじに触れる。じんわりとした熱と共に、嬉しさが込み上げてきた。
「俺と冒険に行く?」
「い、行きたいです」
「監督者の変更、していい?」
「え? でも手がないって……」
頬を赤らめて微笑むユージーンさんが、僕の頬にそっと唇を触れる。
「……泣いてる。嬉し泣き? かわいー」
「え……っ」
いつの間に涙が? と慌てると、ユージーンさんがもう片方の手で僕の顎を摘んだ。
「いいか、イクト。お前がこの世界に来た意味は、俺と幸せに暮らすことだぞ」
「へ……っ」
ゆっくりと、ユージーンさんの端正な顔が近付いてくる。え、これってまさか、キ……!
「俺とあちこち旅をして、色んな物を見て知って笑って、そんで俺にお前の手料理を作り続けてよ」
「ユージーンさん……!」
ぼたぼたと、涙が溢れた。
ユージーンさんが、ふ、と笑う。
「――という訳で、異世界人の監督者変更で認められているのは、監督者死亡以外は……婚姻だ」
「婚姻……?」
婚姻、てなんだっけ。首を傾げようにも、ユージーンさんに顔を持たれて動かせない。今にも触れそうな位置にある唇が、動いた。
「イクト。俺の伴侶になって。俺と結婚しよう?」
「……え」
「一生イクトもイクトの夢も俺が守るから、ずっと隣にいてほしいんだ」
――嘘。これは何かの夢なんじゃないか? だって僕はこの世界の人間じゃないし、いつまで経ってもよそ者で――。
ユージーンさんが、囁く。
「イクト、うんって言って。俺にイクトの隣にいる権利を頂戴?」
「夢……じゃない?」
「夢にしたくはないなあ」
ふふ、と小さく笑うユージーンさんは、今日もとても格好よくて。
頑なに叩き続けて蓋をして封じ込めていた想いが、願いが、空気を伝って溢れ出した。
「ユージーンさん……! 好きです、好きなんです……!」
「うん」
「僕、ずっとユージーンさんの隣にいたいで――んんっ」
言葉が終わる前に、ユージーンさんの唇によって僕の口が塞がれる。ぎゅっと包まれるように抱き締められて、角度を変えて何度も何度もキスを繰り返し。
火照った僕がユージーンさんの腕の中でくたりとすると、ユージーンさんは照れくさそうに笑い、「幸せになろうな!」と言ってくれたのだった。
「……俺、イクトと恋人になれたと思ってたんだけど?」
「――えっ?」
え、え、どういうこと!? 言われている意味が分からなくてぽかんとしていると、ユージーンさんが僕にぎゅっと抱きつく。
「旅は、イクトと行こうと思って親父に調べてもらってたんだ。監督者から三日以上離れちゃいけないって聞いたから、監督者を親父から俺に変更できないかって思ってさ」
「……嘘だ……」
にわかには信じられなかった。
「嘘じゃない、色んな土地の調味料や料理をイクトに味わせてあげたかったから」
「だってそんな話は、僕はユージーンさんからもローランさんからも一度も……」
ユージーンさんが、バツが悪そうな顔になる。
「……驚かせてやろうと思って」
「へ……っ」
「驚いて喜ぶかなって思ったから……」
言葉が尻すぼみになっていった。
僕にはユージーンさんが言っていることがよく理解できていなかった。だって、まるでこれじゃ、ユージーンさんが僕のことを好きみたいじゃないか。
さすがにこれは確認すべきじゃないか。勇気を振り絞り、尋ねる。
「あの……僕はユージーンさんの何なんでしょう?」
「俺的には恋人、なんだけど」
「え、だってそんなことひと言も」
目線を落としたユージーンさんが、ぼそりと返す。
「イクトもイクトの夢も俺が守るからって言ったら嬉しそうだったし、おでこやほっぺにキスしても嫌がらないし、毎晩一緒に寝てたし……」
「……あれ、まさか告白だったんですか?」
「そのつもりだったんだけど……通じてなかったって知って、今かなり驚いてる」
いやいや、そこは僕が驚く方だろう。
「なあイクト」
切なそうな息が、首に吹きかかる。
「俺はイクトに出会ったその日から、イクトの可愛らしい見た目や健気なところや俺の胃袋をがっつり掴んでいったところに惚れてる」
「う、嘘だ……っ」
可愛い? 健気? 一体どこのイクトの話をしているんだろうと思っても仕方ないと思う。
「僕、可愛くないし、」
「え、滅茶苦茶モテ顔なの気付いてないのか? 異国情緒っていうの? 凄く雰囲気あっていいよ」
そうだったのか? 東洋人ののっぺり顔が一部の欧米人に人気とかそういう類なのか? でも――それなら嬉しい。
「……逆に聞きたいんだけど」
「は、はい」
「イクトは俺のこと好き?」
直球だった。
「は、はい……」
「よし……! 恋人になりたい?」
「は、はい」
ユージーンさんの温かい手が、僕のうなじに触れる。じんわりとした熱と共に、嬉しさが込み上げてきた。
「俺と冒険に行く?」
「い、行きたいです」
「監督者の変更、していい?」
「え? でも手がないって……」
頬を赤らめて微笑むユージーンさんが、僕の頬にそっと唇を触れる。
「……泣いてる。嬉し泣き? かわいー」
「え……っ」
いつの間に涙が? と慌てると、ユージーンさんがもう片方の手で僕の顎を摘んだ。
「いいか、イクト。お前がこの世界に来た意味は、俺と幸せに暮らすことだぞ」
「へ……っ」
ゆっくりと、ユージーンさんの端正な顔が近付いてくる。え、これってまさか、キ……!
「俺とあちこち旅をして、色んな物を見て知って笑って、そんで俺にお前の手料理を作り続けてよ」
「ユージーンさん……!」
ぼたぼたと、涙が溢れた。
ユージーンさんが、ふ、と笑う。
「――という訳で、異世界人の監督者変更で認められているのは、監督者死亡以外は……婚姻だ」
「婚姻……?」
婚姻、てなんだっけ。首を傾げようにも、ユージーンさんに顔を持たれて動かせない。今にも触れそうな位置にある唇が、動いた。
「イクト。俺の伴侶になって。俺と結婚しよう?」
「……え」
「一生イクトもイクトの夢も俺が守るから、ずっと隣にいてほしいんだ」
――嘘。これは何かの夢なんじゃないか? だって僕はこの世界の人間じゃないし、いつまで経ってもよそ者で――。
ユージーンさんが、囁く。
「イクト、うんって言って。俺にイクトの隣にいる権利を頂戴?」
「夢……じゃない?」
「夢にしたくはないなあ」
ふふ、と小さく笑うユージーンさんは、今日もとても格好よくて。
頑なに叩き続けて蓋をして封じ込めていた想いが、願いが、空気を伝って溢れ出した。
「ユージーンさん……! 好きです、好きなんです……!」
「うん」
「僕、ずっとユージーンさんの隣にいたいで――んんっ」
言葉が終わる前に、ユージーンさんの唇によって僕の口が塞がれる。ぎゅっと包まれるように抱き締められて、角度を変えて何度も何度もキスを繰り返し。
火照った僕がユージーンさんの腕の中でくたりとすると、ユージーンさんは照れくさそうに笑い、「幸せになろうな!」と言ってくれたのだった。
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