宝珠の神子は優しい狼とスローライフを送りたい

緑虫

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4 質問タイム

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 グイードって結構冷たいことも言ったりするけど、実は物凄く面倒見がよくて優しいんだよね。

 たった数日だけど、一緒に過ごしてみて凄く実感した。俺に口うるさく注意するのも、俺が怪我をしたりしないか心配してるだけみたいだし。現に今も、何だかんだ言いながら俺を守るように毛皮で包んでくれている。

 これをされちゃうと、気持ち良すぎてすぐ寝ちゃうから恐ろしいんだよな。

 だけど、今日の俺は負けない! 何故なら、ついうっかり爆睡したりもふもふに耽るあまり、グイードについてほぼ何も知らないままなことにようやく今朝になって気付いたからだ。

 こちらに落ちてきてからというもの、ワイルドなスローライフのひとつひとつが新鮮過ぎて、何にでも「おー! すげえ!」と目を輝かせて興奮していた。

 興奮した後に腹一杯食べたらさ、まあ当然眠くなるだろ? 俺はもふもふの誘惑にあっさり負け、毎晩それはもう健やかに爆睡していた。朝の目覚めが最高にスッキリしてるのなんて何年ぶりだろう。

 だけどさ、一緒に過ごしている相手のことをありのまま受け入れるのも大事だけど、ちょっとは知っておきたいじゃん。全然聞いてなかったって気付いたのが今朝だから、許容範囲ゆるゆるとかお気楽とか神様っぽい奴に言われたのをちょっぴり思い出したけど、今は一旦横に置いておくことにする。

 よーし、質問タイムスタートだ。

「なあ、グイードって今いくつなの?」

 俺の質問に、グイードが呆れたような眼差しで見てきた。

 グイードってよく俺のことをこういう目で見るんだよね。畜生、悔しいから後で腹を一杯もふもふしてやる!

「……ヨウタはいつも唐突だな」
「グイードのこと、まだ殆ど何も知らないなって気付いたんだよ。それにグイードも、ちっとも俺のこと聞かないじゃん。もう少し興味持ってくれたってよくない?」

 そう。俺がグイードのことを知らない原因のひとつに、グイードが俺に質問してこないということもあった。細々と俺の面倒を見てくれるんだけど、全然聞かないんだよね。そこで俺は気付いた。

 俺は太郎に、根掘り葉掘り聞く必要は感じていなかった。とりあえず可愛いからいいやって思ってたんだけど、もしかして――グイードって俺をそんな感じで見てない? ってさ。

 なんせ変種の猿だと聞いてきたくらいだ。俺を半ばペット扱いにしている可能性は否めない。

 グイードが、鼻をフンと鳴らした。

「お前が忙しないから聞けないだけだ」
「俺に興味ないの? 俺、年齢も聞かれてないよ」
「お前がいくつだろうがお前はお前だろうが。何が不満だ」

 あっさりと返され、言葉に詰まる俺。俺より口達者な狼とはこれいかに。

 うう、と唸った俺を見て、グイードが口の端を小さく上げる。

「……俺はな、俺を恐れも馬鹿にもしないお前が俺の周りをチョロチョロしていればいいんだ」
「チョロチョロ」

 言い方ってあると思うなあ。

「俺はもう何年も、ここにひとりで暮らしていた。誰とも会わずに一生を終えるものだと思っていた」
「……グイード?」

 なんでそんな淋しいことを言うんだろう。切なくなってしまって、グイードの頬に手を伸ばして撫でる。

「そんな時、森が急にざわついてな。感じたことのない気配の元に向かうと、お前が地面で寝ていた」
「感じたことのない気配? 俺って何か気配するの?」

 俺の問いかけに、グイードは小さく笑った。

「ああ。お前の名前の通り、明るい太陽のような温かい気配を感じた。それは今も感じられる」
「温かい気配……」

 ぺた、と自分の身体のあちこちに触れてみたけど、特に熱い場所はないみたいだ。首を傾げると、グイードがまた呆れたような視線を寄越す。

「そういうことを言ってるんじゃない……全くお前は」
「いや、どこか熱持ってるのかなーって」
「気配だと言っただろう」

 ふ、と小さく笑うと、グイードは俺の頭の上に顎を乗せた。ふは、もふもふ。

「……お前はあまりにも当たり前のことを知らなさすぎる。白い場所から勝手に喋る奴に落とされたと聞いて、お前はオレの知らない場所から来たのだろうと考えた」

 さりげなく常識知らずって言われたけど、実際俺はこちらのことを何も知らなくてグイードに頼りっ放しだから反論はできない。

「うん」

 他に何と言っていいかも分からなくて、それだけ答えた。グイードの、いつになく遠慮がちな言葉が続く。

「オレは……お前が他所に興味を持つのが嫌だった」
「ん? 他所って?」

 問い返すと、グイードが呆れたように返してきた。

「他所は他所だ。お前はここ以外の場所に他の者がいるとは思わなかったのか?」
「ええと……ごめん、ちょろっとは思ったけど、毎日が楽しくて」

 てへ、と笑うと、グイードの鼻から「……ふー」と長い息が吐かれて俺の顔に拭きかかる。あ、呆れてるな、これ。

「ちょっとは思ったのか?」
「まあちょっとは、そりゃあね。でもさ、俺がいた所で俺ってずっとひとりで過ごしてきてたから、こうして優しくて何でもできて且つもふもふのグイードとのんびり過ごせるのが幸せすぎて……ま、その内分かるだろうしいっかって思ってたりして」

 あははと笑うと、グイードが心底呆れたような声色で言った。

「なんというか……能天気だな」
「あは、よく言われる」

 なんせ神様みたいな奴のお墨付きだからな。でも、俺にとって生活に追われなくて「この先やっていけるんだろうか」って考えなくてよくなったのは、かなり大きなことだったんだ。

「そりゃまあ、服が一着しかないし、ボロボロになったらどうしようとかは思ってるけど。あとパンツの換えがないからノーパン生活はちょっと違和感あるけどさ」

 ノーパンと聞いて、グイードが訝しげな顔をした。
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