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18 忠誠の誓い先
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エリンが、必死で俺に伝える。
「勿論神子様の味方です! 帝国騎士団に所属してはおりますが、騎士が忠誠を誓うのは帝国に対してであり獅子族にではございませんから!」
「本当? 信じて大丈夫?」
「本当です!」
こくこくと繰り返し頷くエリン。すぐに信じるのはどうかなとは思うけど、確かに神子の子供が獣王になるルールなら、過去の獣王やその一族に忠誠を誓ってはおかしな話になるもんな。じゃなきゃ、百年が過ぎてもずっと前の獣王を崇めることになる。だから忠誠を誓う先はあくまで国に対してであって人じゃないってことか。奥が深い。
獣王になるルールははっきりしていて、多種族が下剋上したりする余地はない。したければ次の神子が降りてきた時に頑張りなさいよ、てことだ。百年に一度の機会ではあるけれど、チャンスは平等にある。ただし、人化できている種族に限っては、という条件が付くけど。
もしかしたら、神様なりに少しでも世界から争いをなくそうと考え出した答えなのかもな、とふと思った。随分とノリの軽い神様だったけど。
「どうでしょうか……?」
こちらを窺うように上目遣いで見てくるエリン。
帝国騎士団や獣王がグイードと接触しなかったことは、俺にとって朗報だった。少なくとも、グイードが怪我を負っている可能性はなくなったんだから。俺を匿っていたせいでグイードにもしものことがあったら、俺は絶対自分を許せないしな。
そして次のステップは――何とか結婚を回避して、グイードの元に帰ることだ。まだ結婚する気もさらさらないのに、強要されてするなんて冗談じゃなかった。そりゃあ、想像してたのとは大分違ったよ? 動物は性欲の対象にならないって思ってたけど、こっちの世界の女の子がエリンみたいにほぼ人間だって分かったから、無理ではないなとは確かに思った。
だからいつかはこの世界の獣人と結婚して子供を作ってってことも将来的にはあるかもしれないし、俺を死ぬ直前で拾い上げてくれた神様の思惑だってそうなんだろう。つまりいずれはってことなら、俺だってこんなにごねないよ。
だけど、間違っても連れ去られてさあこの中から今すぐ選べっていうのは違うと思う。実際、俺がこの世界に来てからは気候は穏やかになっていたという証言が複数ある。ということは、俺が誰かと恋に落ちて自然にそういうことになるまで、神様だってこの世界だって待ってくれるってことなんじゃないのか。
俺、何か間違ってる? 神子降臨、さあ選べ番え子供を作れじゃ、それこそただの種馬じゃん、俺。
そもそも、恋愛って人に強要されてするもんじゃないだろ。元の世界で草臥れきっていた心身をグイードとのワイルドなスローライフともふもふでゆっくり癒やしているところだったんだよ。要は俺の心情としては、急かさないでもーちょい自然体でいきません? てことだ。
だけど、どうも獣王はさっさと片を付けたい感じがプンプンする。会ったことはないけど宰相もなんかすり寄ってきそうだし、あわよくば獅子族がまた選ばれないかなあなんて思ってそうなのがなあ。
だけどこのまま逃げても、あの獣王の強引さだとまたあっさり捕まる可能性の方が高そうだ。だったら何とかこっちの人たちを説得して俺がここを出ていくことを納得させるしかないと思うんだけど、その方法がさっぱり思いつかない。うーん、単細胞が頭を使うともくもく煙が出そうだよ。
とにかくまず大前提として、何がなんでもグイードには俺が無事でいるよってことを教えてあげたい。だけど、早々に手詰まりになっているんだよなあ。
で、エリンのお兄さんは帝国騎士団に所属しているなんかすごそうな人。帝都の外のことも知ってそうだし、なんならグイードが住んでいた最果ての森まで実際に来ている。
結論。味方につけよう! 方法は――分からない! それこそ説得するしかないと思うけど、なんてったって俺、神子だし! 神子がやだやだ言ったら結構聞いてくれるんじゃね? なんてあくどい考えを持ち始めていたりして。
とにかく、ここでうだうだしてたって状況は何ひとつ好転しない。むしろ時間が経てば経つほど悪化する一方だと、俺のなんちゃってな勘が告げている!
「分かった。エリンを信じるからね」
「神子様……!」
エリンは感激したように胸の前で手を組むと、「至急兄に伝えて参ります!」と駆け足で部屋を出て行った。
エリンのお兄さんがどんな人かは分からない。だけど、何とか言い包めて協力してもらう以外、今の俺にやれそうなことはないから。
窓の外の、景色がぼんやりとしか見えないほどの大雨を眺める。
「グイード……」
この雨は、俺に裏切られたんじゃないかと悲しんでいるグイードの涙なんじゃないか。ふとそんなことを考えてしまって、また俺の目に涙が滲んだ。
「勿論神子様の味方です! 帝国騎士団に所属してはおりますが、騎士が忠誠を誓うのは帝国に対してであり獅子族にではございませんから!」
「本当? 信じて大丈夫?」
「本当です!」
こくこくと繰り返し頷くエリン。すぐに信じるのはどうかなとは思うけど、確かに神子の子供が獣王になるルールなら、過去の獣王やその一族に忠誠を誓ってはおかしな話になるもんな。じゃなきゃ、百年が過ぎてもずっと前の獣王を崇めることになる。だから忠誠を誓う先はあくまで国に対してであって人じゃないってことか。奥が深い。
獣王になるルールははっきりしていて、多種族が下剋上したりする余地はない。したければ次の神子が降りてきた時に頑張りなさいよ、てことだ。百年に一度の機会ではあるけれど、チャンスは平等にある。ただし、人化できている種族に限っては、という条件が付くけど。
もしかしたら、神様なりに少しでも世界から争いをなくそうと考え出した答えなのかもな、とふと思った。随分とノリの軽い神様だったけど。
「どうでしょうか……?」
こちらを窺うように上目遣いで見てくるエリン。
帝国騎士団や獣王がグイードと接触しなかったことは、俺にとって朗報だった。少なくとも、グイードが怪我を負っている可能性はなくなったんだから。俺を匿っていたせいでグイードにもしものことがあったら、俺は絶対自分を許せないしな。
そして次のステップは――何とか結婚を回避して、グイードの元に帰ることだ。まだ結婚する気もさらさらないのに、強要されてするなんて冗談じゃなかった。そりゃあ、想像してたのとは大分違ったよ? 動物は性欲の対象にならないって思ってたけど、こっちの世界の女の子がエリンみたいにほぼ人間だって分かったから、無理ではないなとは確かに思った。
だからいつかはこの世界の獣人と結婚して子供を作ってってことも将来的にはあるかもしれないし、俺を死ぬ直前で拾い上げてくれた神様の思惑だってそうなんだろう。つまりいずれはってことなら、俺だってこんなにごねないよ。
だけど、間違っても連れ去られてさあこの中から今すぐ選べっていうのは違うと思う。実際、俺がこの世界に来てからは気候は穏やかになっていたという証言が複数ある。ということは、俺が誰かと恋に落ちて自然にそういうことになるまで、神様だってこの世界だって待ってくれるってことなんじゃないのか。
俺、何か間違ってる? 神子降臨、さあ選べ番え子供を作れじゃ、それこそただの種馬じゃん、俺。
そもそも、恋愛って人に強要されてするもんじゃないだろ。元の世界で草臥れきっていた心身をグイードとのワイルドなスローライフともふもふでゆっくり癒やしているところだったんだよ。要は俺の心情としては、急かさないでもーちょい自然体でいきません? てことだ。
だけど、どうも獣王はさっさと片を付けたい感じがプンプンする。会ったことはないけど宰相もなんかすり寄ってきそうだし、あわよくば獅子族がまた選ばれないかなあなんて思ってそうなのがなあ。
だけどこのまま逃げても、あの獣王の強引さだとまたあっさり捕まる可能性の方が高そうだ。だったら何とかこっちの人たちを説得して俺がここを出ていくことを納得させるしかないと思うんだけど、その方法がさっぱり思いつかない。うーん、単細胞が頭を使うともくもく煙が出そうだよ。
とにかくまず大前提として、何がなんでもグイードには俺が無事でいるよってことを教えてあげたい。だけど、早々に手詰まりになっているんだよなあ。
で、エリンのお兄さんは帝国騎士団に所属しているなんかすごそうな人。帝都の外のことも知ってそうだし、なんならグイードが住んでいた最果ての森まで実際に来ている。
結論。味方につけよう! 方法は――分からない! それこそ説得するしかないと思うけど、なんてったって俺、神子だし! 神子がやだやだ言ったら結構聞いてくれるんじゃね? なんてあくどい考えを持ち始めていたりして。
とにかく、ここでうだうだしてたって状況は何ひとつ好転しない。むしろ時間が経てば経つほど悪化する一方だと、俺のなんちゃってな勘が告げている!
「分かった。エリンを信じるからね」
「神子様……!」
エリンは感激したように胸の前で手を組むと、「至急兄に伝えて参ります!」と駆け足で部屋を出て行った。
エリンのお兄さんがどんな人かは分からない。だけど、何とか言い包めて協力してもらう以外、今の俺にやれそうなことはないから。
窓の外の、景色がぼんやりとしか見えないほどの大雨を眺める。
「グイード……」
この雨は、俺に裏切られたんじゃないかと悲しんでいるグイードの涙なんじゃないか。ふとそんなことを考えてしまって、また俺の目に涙が滲んだ。
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