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33 迎賓館
ディーウィットがざっと説明を終えた時のキーニの表情は、なんとも形容し難いものだった。
「……本当にディトと血が繋がっているのか? 信じられん」
呆れと嫌悪の表情と表すのが一番近いのかもしれない。
「周りから溺愛された結果なのだと思いますが、デアーグの自己肯定感はかなり高いのです」
「分不相応という言葉を分からせたいが、あえて近付きたくもないな」
ディーウィットは、キーニに関する部分は濁して話していた。あんな酷い内容は、できれば本人に伝えたくないままで終わりたい。だがキーニに顔を間近まで近付けられながら言われてしまったのだ。
「あの小うるさいのは俺の顔を見て馬鹿にしたような顔をしていただろう。何を言っていた? 素直に言ってくれ」
「うう……っ、聞いても気分のいいものでは」
「だからこそ聞きたいんだ。俺を侮辱するのはお前を侮辱するのと同義だからな」
そんな風に説得され、結局は喋ってしまった。
ほぼほぼ侮辱だった内容を聞いたキーニは、くは、と愉快そうに笑う。
「性欲が強そうか、そうか。ジュ・アルズの男にとっては最高の褒め言葉なんだがな」
キーニによれば、性欲の強さは子孫繁栄に繋がり、太陽神ジュ・アルズの力がより多く与えられているという証拠になるのだとか。確かに集落では子どもが沢山いたかもしれない。
「だからといって! キーニがアーベライン語が分からないからといって、言いたい放題でさすがに腹が立ちましたよ!」
思い返せば返すほど腹を立てるディーウィットに、キーニが幸せそうに微笑み目尻にキスを落とす。
「ディトは自分が貶されても怒らないのに、俺が貶されると怒ってくれるのだな。さすがは俺の『ムウェ・ラデ』だ」
「……咄嗟に言い返せなかったのが悔しいです」
「今度は俺の為に凹むのか。可愛いにもほどがあるぞ」
今度は軽く唇を重ねると、すぐに顔を離してニカッと歯を見せ笑った。
「では迎賓館に向かおうか」
「はい……! お願いします!」
しかと頷くと、キーニはディーウィットの手を取り颯爽と歩き出したのだった。
◇
迎賓館は、王宮からほど近い場所にあった。
白い壁に蔦が伝う赴きのある館で、警備も物々しいものがある。門に近付くと、アルフォンスが門番と揉めている姿が見えた。
「このお方はアーベライン王国第三王子デアーグ・アーベライン殿下です! どうしてこんなに長い間外で待たせるのですか!」
「現在照合しているのです。自己申告だけでは不十分なのですよ。中に不審者を入れる訳にはいきませんのでご承知おき下さい」
『くそ……!』
あのアルフォンスが悪態を吐いている。以前はあそこまで感情を表に出していなかったのに、何が彼を変えてしまったのだろう。
「中に入るのには照合が必要なんですか? 僕たちもになると、僕は何も持っていないんですが……」
不安に思いキーニに尋ねると、キーニは目元を緩ませて「問題ない」と即答した。
「俺の『ムウェ・ラデ』だからな」
「ですからその『ムウェ・ラデ』とは一体」
皇都に着いたら説明すると言われていたが、未だに教えてもらえていない。下船してすぐにあんな騒動があったので当然と言えば当然だが、そろそろいい加減教えてもらいたかった。
だがキーニは首を横に振る。
「もう少し後になってから伝えよう。そうだな――姉の伴侶に会った後に言う」
「……絶対ですよ」
「分かっている。――さあ、行こうか」
キーニに手を引かれながら、相変わらずアルフォンスたちが揉めている門の出入り口に向かった。二人がやってくることに気付いたデアーグが、片眉を上げる。
『えっ、なんでお前たちがここに来る訳』
キーニが問いかけてきた。
「あの小うるさいのはなんと?」
「……何故ここにいるのかと」
すっかり「あの小うるさい」が定着してしまっている。どこか愉快な気持ちを覚えながらも、キーニはどうやって入るつもりかと不安も感じていた。
するとキーニの姿を見た門番の衛兵が、慌てた様子で直立し、敬礼する。
「これはキーニ様!」
「久しぶりだな。元気か?」
「はい、お陰様で! ――中へご案内しろ!」
「はっ!」
衛兵が部下らしき若い衛兵に指示を下すと、キーニとディーウィットが門を潜り敷地内に入るのを最上級の敬礼で見送ってくれた。
本当に入れてしまった。驚きでキーニに促されるままになっていると、後ろからデアーグの男にしては高めの声が響いてくる。
『ちょっと! どうしてあっちは入れて僕たちが入れないの!? アルフォンス、帝国語が間違ってるんじゃないの!?』
『えっ!? いえ、そんなことはないかと……!』
『じゃあどうしてだよ! もう足が疲れちゃったあ!』
『すみませんデアーグ様、なるべく早くなんとかして差し上げたいのはやまやまなのですが……』
困り果てたアルフォンスの声を聞いてしまえば、どうしたって気になる。気もそぞろになっているのがキーニには丸わかりだったのだろう。はあー、と溜息を吐いた後、キーニは振り返り衛兵に伝えてくれた。
「その小うるさい赤髪は確かにアーベライン王国の第三王子だ。俺が保証するから中へ入れてやってくれ」
「はっ、畏まりました!」
直後、「入って問題ありません」と門を潜ることを許されたアーベライン一行は、アルフォンス以外は訳が分かっていないらしく、不思議そうな顔をしている。
アルフォンスは苛立ちを隠さないまま、キーニの元へ駆け寄ってきた。
「……感謝致します。ですがあなたは一体何者ですか」
「睨まれながら聞かれて答えると思うか?」
「……!」
アルフォンスは唇を噛み締めると、すぐさま背中を向ける。ディーウィットは今しかないと、あえて帝国語でアルフォンスに話しかけた。デアーグに聞く気がないなら、デアーグの恋人に昇格したらしいアルフォンスを説得したらいいのではと思ったのだ。その為には、デアーグに分からないよう事を進めたい。
「アルフォンス、話があるんだ! あとで、少しでいい! 話をする時間をもらえないだろうか!」
アルフォンスが、顔だけで振り返る。
「……その隣の男に免じて、少しだけなら」
「……! うん、ありがとう!」
笑顔に変わったディーウィットがアルフォンスの方に一歩踏み出そうとした瞬間、キーニの腕が伸びてきてディーウィットを掬い上げ横抱きにしてしまった。
ディーウィットには一度も見せたことのない冷たい目でアルフォンスを見ると、事務的に告げる。
「後で使いを寄越す。話は俺の立会の元だ。その小うるさいのは置いてこい。絶対だ」
「……はい」
アルフォンスはキーニに向かって一礼すると、今度こそデアーグの元に戻っていった。
「キーニ……」
ムスッとした表情のキーニの首に、手を這わす。キーニは唇を少しだけ尖らせていた。
「最大限の譲歩だ」
面倒なことには関わり合いになりたくないだろう。だがディーウィットが望んでいるから、叶えようとしてくれた。その気持ちが、何よりも有り難い。
「はい。ありがとうございます」
微笑みを浮かべると、キーニの胸にこめかみをつけた。
「……本当にディトと血が繋がっているのか? 信じられん」
呆れと嫌悪の表情と表すのが一番近いのかもしれない。
「周りから溺愛された結果なのだと思いますが、デアーグの自己肯定感はかなり高いのです」
「分不相応という言葉を分からせたいが、あえて近付きたくもないな」
ディーウィットは、キーニに関する部分は濁して話していた。あんな酷い内容は、できれば本人に伝えたくないままで終わりたい。だがキーニに顔を間近まで近付けられながら言われてしまったのだ。
「あの小うるさいのは俺の顔を見て馬鹿にしたような顔をしていただろう。何を言っていた? 素直に言ってくれ」
「うう……っ、聞いても気分のいいものでは」
「だからこそ聞きたいんだ。俺を侮辱するのはお前を侮辱するのと同義だからな」
そんな風に説得され、結局は喋ってしまった。
ほぼほぼ侮辱だった内容を聞いたキーニは、くは、と愉快そうに笑う。
「性欲が強そうか、そうか。ジュ・アルズの男にとっては最高の褒め言葉なんだがな」
キーニによれば、性欲の強さは子孫繁栄に繋がり、太陽神ジュ・アルズの力がより多く与えられているという証拠になるのだとか。確かに集落では子どもが沢山いたかもしれない。
「だからといって! キーニがアーベライン語が分からないからといって、言いたい放題でさすがに腹が立ちましたよ!」
思い返せば返すほど腹を立てるディーウィットに、キーニが幸せそうに微笑み目尻にキスを落とす。
「ディトは自分が貶されても怒らないのに、俺が貶されると怒ってくれるのだな。さすがは俺の『ムウェ・ラデ』だ」
「……咄嗟に言い返せなかったのが悔しいです」
「今度は俺の為に凹むのか。可愛いにもほどがあるぞ」
今度は軽く唇を重ねると、すぐに顔を離してニカッと歯を見せ笑った。
「では迎賓館に向かおうか」
「はい……! お願いします!」
しかと頷くと、キーニはディーウィットの手を取り颯爽と歩き出したのだった。
◇
迎賓館は、王宮からほど近い場所にあった。
白い壁に蔦が伝う赴きのある館で、警備も物々しいものがある。門に近付くと、アルフォンスが門番と揉めている姿が見えた。
「このお方はアーベライン王国第三王子デアーグ・アーベライン殿下です! どうしてこんなに長い間外で待たせるのですか!」
「現在照合しているのです。自己申告だけでは不十分なのですよ。中に不審者を入れる訳にはいきませんのでご承知おき下さい」
『くそ……!』
あのアルフォンスが悪態を吐いている。以前はあそこまで感情を表に出していなかったのに、何が彼を変えてしまったのだろう。
「中に入るのには照合が必要なんですか? 僕たちもになると、僕は何も持っていないんですが……」
不安に思いキーニに尋ねると、キーニは目元を緩ませて「問題ない」と即答した。
「俺の『ムウェ・ラデ』だからな」
「ですからその『ムウェ・ラデ』とは一体」
皇都に着いたら説明すると言われていたが、未だに教えてもらえていない。下船してすぐにあんな騒動があったので当然と言えば当然だが、そろそろいい加減教えてもらいたかった。
だがキーニは首を横に振る。
「もう少し後になってから伝えよう。そうだな――姉の伴侶に会った後に言う」
「……絶対ですよ」
「分かっている。――さあ、行こうか」
キーニに手を引かれながら、相変わらずアルフォンスたちが揉めている門の出入り口に向かった。二人がやってくることに気付いたデアーグが、片眉を上げる。
『えっ、なんでお前たちがここに来る訳』
キーニが問いかけてきた。
「あの小うるさいのはなんと?」
「……何故ここにいるのかと」
すっかり「あの小うるさい」が定着してしまっている。どこか愉快な気持ちを覚えながらも、キーニはどうやって入るつもりかと不安も感じていた。
するとキーニの姿を見た門番の衛兵が、慌てた様子で直立し、敬礼する。
「これはキーニ様!」
「久しぶりだな。元気か?」
「はい、お陰様で! ――中へご案内しろ!」
「はっ!」
衛兵が部下らしき若い衛兵に指示を下すと、キーニとディーウィットが門を潜り敷地内に入るのを最上級の敬礼で見送ってくれた。
本当に入れてしまった。驚きでキーニに促されるままになっていると、後ろからデアーグの男にしては高めの声が響いてくる。
『ちょっと! どうしてあっちは入れて僕たちが入れないの!? アルフォンス、帝国語が間違ってるんじゃないの!?』
『えっ!? いえ、そんなことはないかと……!』
『じゃあどうしてだよ! もう足が疲れちゃったあ!』
『すみませんデアーグ様、なるべく早くなんとかして差し上げたいのはやまやまなのですが……』
困り果てたアルフォンスの声を聞いてしまえば、どうしたって気になる。気もそぞろになっているのがキーニには丸わかりだったのだろう。はあー、と溜息を吐いた後、キーニは振り返り衛兵に伝えてくれた。
「その小うるさい赤髪は確かにアーベライン王国の第三王子だ。俺が保証するから中へ入れてやってくれ」
「はっ、畏まりました!」
直後、「入って問題ありません」と門を潜ることを許されたアーベライン一行は、アルフォンス以外は訳が分かっていないらしく、不思議そうな顔をしている。
アルフォンスは苛立ちを隠さないまま、キーニの元へ駆け寄ってきた。
「……感謝致します。ですがあなたは一体何者ですか」
「睨まれながら聞かれて答えると思うか?」
「……!」
アルフォンスは唇を噛み締めると、すぐさま背中を向ける。ディーウィットは今しかないと、あえて帝国語でアルフォンスに話しかけた。デアーグに聞く気がないなら、デアーグの恋人に昇格したらしいアルフォンスを説得したらいいのではと思ったのだ。その為には、デアーグに分からないよう事を進めたい。
「アルフォンス、話があるんだ! あとで、少しでいい! 話をする時間をもらえないだろうか!」
アルフォンスが、顔だけで振り返る。
「……その隣の男に免じて、少しだけなら」
「……! うん、ありがとう!」
笑顔に変わったディーウィットがアルフォンスの方に一歩踏み出そうとした瞬間、キーニの腕が伸びてきてディーウィットを掬い上げ横抱きにしてしまった。
ディーウィットには一度も見せたことのない冷たい目でアルフォンスを見ると、事務的に告げる。
「後で使いを寄越す。話は俺の立会の元だ。その小うるさいのは置いてこい。絶対だ」
「……はい」
アルフォンスはキーニに向かって一礼すると、今度こそデアーグの元に戻っていった。
「キーニ……」
ムスッとした表情のキーニの首に、手を這わす。キーニは唇を少しだけ尖らせていた。
「最大限の譲歩だ」
面倒なことには関わり合いになりたくないだろう。だがディーウィットが望んでいるから、叶えようとしてくれた。その気持ちが、何よりも有り難い。
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