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あくる日のメロンソーダ
グリーンランド〖完〗
しおりを挟む『若様は、お前をかってらっしゃるんだ。お前にこれを届けろと。手紙だ。読んで、若様直々のこの氷菓を食べたら支度をし、お前も広間に来い!』
リュウカ。君は残酷な人だ、もう若様か。寄りによってメロンの氷菓とは。もう、綺麗なグラスに盛られて。クリームも添えて。これはもう、『メロンパフェ』と言えば良いのか?
《ユラ。この前たまたま学校で見たよ。どうして、目が合ったのに知らんぷりしたんだい?この家は広すぎて良くない。ユラ、昔のようにはいかなくなるが、私の傍にいて欲しい。君は私の片腕だ。アイスを全部棄てて欲しいと言うのは私の指示だ。父君は全て解ってらっしゃるみたいだ。父君を恨まないで欲しい。だから君にプレゼントを。私は君を愛しても、世間体を気にしなければならず、愛のない婚約をしなければならない。それは、許されない。だとしても君との縁を切りたくない。君にはただ、毎月一日だけど君の日をつくる。君が好きなお菓子を届けよう。勿論、私が作る。君の部屋に運ぶ………本当は何もかも棄てて君と逃げようと思っていた。だがあえなく家の者に捕まり軟禁されてしまった。君が好きだった。さよなら、ユラ。愛してる。君だけだ》
僕は泣きながらパフェを食べた。泣きじゃくりながら服を汚さないように食べた。氷菓のシャリシャリした所と、メロン味のクリーム。高い味のお菓子だ。僕みたいな貧乏人には似合わない。
『好きだった、か。今更、もう………僕を逃がす気もないくせに!何が、何が『一日だけだ』だ!一生僕に優越感と罪悪感を植えつけて………!君は傲慢だ、リュウカ。結局君は僕を支配する!ずるい………こんな、ひどい人だ、ひどい人だ………さすが財閥の若様だ!』
さよなら。小さい頃から、ずっと君が好きだった。
僕もずっとあなたを───
愛していたよ。
焦がれない日はないほど。
ずっとあなたを。
あなただけを。
ずっと………ずっと。
──────────
『いらっしゃい。静かにね』
『今月は、アップルパイだよ。それと、いつものメロンソーダ。ユラは、このカクテル好きだね』
『思い出なんだ。君との』
君は解りながらこの質問をする。柔らかな温かなもの。心の中の小さな生命のようなものが息を吹き返す。今もこの瞬間だけ胸の中に生きて産声をあげる。
可哀想な赤子は、もう可哀想じゃない。柔らかな温かなもの。
それは一ヶ月ごとに変わる甘いお菓子と大人のメロンジュースを糧としと、泡沫の幸せを味わうからだ。
ベッドの後は、メロンジュースではなくなった。気怠く飲ませ合う『グリーン・ランド』と言うカクテルだ。
白ワインとトニックウォーター、そしてメロンリキュールで出来ている。
「また夏が来るね」
「自転車で高原へ行こう。メロンジュースを持って」
─────────FIN
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