12 / 22
人魚の口づけ《6─2》
しおりを挟む抱きしめて、触れて愛して囁いて、快楽に落として、喘がして、泣きながら『やめて』というまで攻め立てて、二人でぐちゃぐちゃになるまで溶け合うくらい欲の坩堝に熱されて、消えてしまいたいのに。
「アイラは、何でおこんねぇの?引き留めて欲しかったよ、俺は。じゃなきゃ………」
「その香水の人のところには行かなかった?本当はね、はしたないけど僕は君と口づけをしたかったよ。でも、君には好きな人がいたんじゃないか。僕はその人の練習台は嫌だ!」
アイラは潤んだ瞳で俺を睨む。アイラは俺のことを勘違いしている。アイラの辞書は関係を持ったらもう、それは恋人。
身体の関係や、もちろんキスをすることも絶対的な恋人条件だ。躊躇う理由もそこにあるのかもしれない。
「ショウの好きな人なんでしょ?香水の人。僕は口を挟めない………なんて、格好つけようと思っても無理。未練がましく徹夜して、泣いて。嫌いになっちゃったよね。キスもまともに出来なくて。僕、はじめてで、怖くて……。でも、君は嘘つきだね。本当に好きな人が、やっぱりいたんじゃないか。その好きな人のところへ行けば良い。だから今度こそ、手を離すよ。ごめんね……でも、君が好きだったよ。臆病でごめん。君を嫌いなわけじゃないんだ。許して。お願い。今日は満月だ。海に帰る。君も、もう僕を必要としなくなった。僕に地上にいる意味はない」
俺はアイラの腕を引き、そっと触れるだけの口づけをした。座り込み、驚いた顔が泣き顔に変わり、ひっくひっくと懐に収まったアイラの泣き声が部屋に響く。
「だって、だって、ショウは………」
「アイラを見てから、時間が流れた。でも、忘れたことはなかったよ。高校に入って、誘われて女の人を抱いた。軽い気持ちだった。アイラの考える『愛情を確かめあう行為』じゃなかった。俺にとって誰かを抱くことは『快楽を得るための運動』くらいしかなかった。でも、初めての経験から、全部アイラと重ねてしまうんだよ。相手の声も眼差しも、誰を抱いてもアイラなんだ。そして俺はそれを望んで誰かを抱く」
「そう………だったんだ」
「アイラ、目を瞑って。力を抜いて」
アイラは深く呼吸をした。そっとまた、触れるだけの口づけをした。
「まだ、怖い?」
アイラは首を振った。
「ショウ、好き………大好き、あいしてる」
甘い口づけを交わした。本当に甘い。涙の跡に口唇を寄せると、とても甘かった。
何度も何度も飽きることもなく口づける。
「抱きしめて、いい?」
「いいよ」
アイラは柑橘のような清々しい香りがした。
「抱いて、いい?」
「今日はダメ。君は女の子を抱いたから、僕らからペナルティー」
意地悪で、綺麗な笑みを浮かべるその口唇。甘く深い、吐息が喘ぎに変わりそうなキスをする。何度も何度も、好きだと言いながらシャツのボタンに手を掛ける。
「ダメだよ、今日はダメ。お願い。できちゃったら………大変だから。我慢して」
「何が?」
「僕と君の子供」
「え、………えぇっ!?」
0
あなたにおすすめの小説
2度目の恋 ~忘れられない1度目の恋~
青ムギ
BL
「俺は、生涯お前しか愛さない。」
その言葉を言われたのが社会人2年目の春。
あの時は、確かに俺達には愛が存在していた。
だが、今はー
「仕事が忙しいから先に寝ててくれ。」
「今忙しいんだ。お前に構ってられない。」
冷たく突き放すような言葉ばかりを言って家を空ける日が多くなる。
貴方の視界に、俺は映らないー。
2人の記念日もずっと1人で祝っている。
あの人を想う一方通行の「愛」は苦しく、俺の心を蝕んでいく。
そんなある日、体の不調で病院を受診した際医者から余命宣告を受ける。
あの人の電話はいつも着信拒否。診断結果を伝えようにも伝えられない。
ーもういっそ秘密にしたまま、過ごそうかな。ー
※主人公が悲しい目にあいます。素敵な人に出会わせたいです。
表紙のイラストは、Picrew様の[君の世界メーカー]マサキ様からお借りしました。
【完】君に届かない声
未希かずは(Miki)
BL
内気で友達の少ない高校生・花森眞琴は、優しくて完璧な幼なじみの長谷川匠海に密かな恋心を抱いていた。
ある日、匠海が誰かを「そばで守りたい」と話すのを耳にした眞琴。匠海の幸せのために身を引こうと、クラスの人気者・和馬に偽の恋人役を頼むが…。
すれ違う高校生二人の不器用な恋のお話です。
執着囲い込み☓健気。ハピエンです。
先輩のことが好きなのに、
未希かずは(Miki)
BL
生徒会長・鷹取要(たかとりかなめ)に憧れる上川陽汰(かみかわはるた)。密かに募る想いが通じて無事、恋人に。二人だけの秘密の恋は甘くて幸せ。だけど、少しずつ要との距離が開いていく。
何で? 先輩は僕のこと嫌いになったの?
切なさと純粋さが交錯する、青春の恋物語。
《美形✕平凡》のすれ違いの恋になります。
要(高3)生徒会長。スパダリだけど……。
陽汰(高2)書記。泣き虫だけど一生懸命。
夏目秋良(高2)副会長。陽汰の幼馴染。
5/30日に少しだけ順番を変えたりしました。内容は変わっていませんが、読み途中の方にはご迷惑をおかけしました。
執着
紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。
インフルエンサー
うた
BL
イケメン同級生の大衡は、なぜか俺にだけ異様なほど塩対応をする。修学旅行でも大衡と同じ班になってしまって憂鬱な俺だったが、大衡の正体がSNSフォロワー5万人超えの憧れのインフルエンサーだと気づいてしまい……。
※pixivにも投稿しています
【完結】恋した君は別の誰かが好きだから
海月 ぴけ
BL
本編は完結しました。後日、おまけ&アフターストーリー随筆予定。
青春BLカップ31位。
BETありがとうございました。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
俺が好きになった人は、別の誰かが好きだからーー。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
二つの視点から見た、片思い恋愛模様。
じれきゅん
ギャップ攻め
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる