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〖第21話〗
しおりを挟む今、俺を見て、正一が俺ではない誰かを重ねているから悲しい、悔しい。俺を見て欲しい。俺は確かにここにいるのに。どうして俺を見てくれないんだろう。俺は正一の何なんだろう。こう思ってしまうのは正一を、好きだったから。
今更になって、気づかされる。母さんも、苦しんだのだろうか。両替商のあのやさしいおじさん。母さんはおじさんの話を、胸が痛むような切なそうな顔をして話していた。俺も今、胸が痛い。怪我をするよりずっと痛い。
「頼むから、食べてくれ」
絶望的なやさしい言葉が棘のように刺さる。今までかけられたやさしい言葉は全部、俺に向けられたものではなかったんだと思えた。あまりにやるせない、どうしようもない苦しさと切なさに襲われる。
俺の横顔を泣きそうな顔で俺を見ているのも、目があったとき、浮かべるやわらかな微笑みも、俺に誰かを見ていたから。それは、銀杏に見せてもらった正一の過去の咽ぶように呼んでいた女性……。
温かな眼差しも、
柔らかな声音も。
全て、俺は、必要なかった。
これ以上ここにいたくない。あまりにも、惨めすぎる。何で気づかなかったんだろう。こんなにも単純なことなのに。
可哀想だから、
寂しいから、
そんなことで、人間は子供を拾ったりしない。人間は理由を必要とする。
「……ご飯、今まで、あり、がとう。でも、俺、もう、たく、さん」
「雪、どうした。そんなにご飯、美味しくないか?『たくさん』って、足りるわけない」
俺は首を横に振る。
「正一、と、一緒いる、苦しい。悲しい。どうすれば、いい?でも、どう、しようも、ないの、解ってる。だから、出てく。一緒に、いられない。もう、たくさん!」
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