兎と桜と狼と~満月の約束~〖完結〗

カシューナッツ

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〖4〗もう一つの眷属

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 そう首を軽く傾げて笑う白い兎の無力な華が、数ある動物の中から、この山の神様のもう一つの眷属だと解る気がした。
 それくらい華は、神々しく、慈しみ深い眼差しで私のことを見ていた。私は自分の『死』でさえ私の為に許容する華に、涙が止まらなかった。

………………………………………………………………
 ──白霜の思い・続──【今】
………………………………………………………………

 華──私は君を食べたくない。絶対にだ。もし君を食べようと、空腹に負け、誇りに負け、君への気持ちに負け、君を手にかけるくらいなら──本能に負けるくらいなら、私は死を選ぶ。
 私は君を絶対に食べたりしない。そう思い、自分を弱い奴だと思われたくなくて、理性を失った自分が怖くて、君を手にかける浅い夢を何度も見た。その度に私はボロボロ泣いていて、そんな自分を君に気づかれないように、君に見つからないように、私は毎日夢の続きに怯えて声を殺して泣いている。
 それでも、君はきっと気づいている。君は聡く賢いから。そして、誰よりもやさしく、あたたかいから。こんな弱い私を知らないふりをしてくれる。
 
 本能を律してこそ、理性で本能を捩じ伏せられてこそ、眷属の名に相応しい。君とずっと一緒にいたい。君と一緒に居たいのに。
 華、それは許されないことなのか?私には眷属の資格がないのか?いつの間に君の方が暖かくなった。私が弱ってきて体温が下がったから、君が私を暖めてくれる。だから毎日寝た私と、寝た君と話す。

「寝ていますか?白霜さま」
「ああ。………眠っているよ」
「私のこれからの夢の話を聞いていただけますか?」
 
 華の声は穏やかだった。
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