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〖17〗月蝕
しおりを挟む私と白霜さまの身体が元の容貌に戻っていきます。
何かが起こっている。そう思い、私と白霜さまは、素早く空を見上げました。周りは私達の姿に怖れ慄く人間達の輪の中あるものに出会いました。
──『月蝕』です!
初めての経験でした。身体が無理矢理作り替えられているような感じがしました。
「逃げるぞ、華。走れ!背に乗れ!」
人間から白い狼と白い兎に変わるさまを沢山のひとに見られてしまいました。人間は怖い。一人なら何もできないくせに。集団になって徒党を組むとどんな残酷なことでもする不思議な恐ろしい生き物です。
『こっちさ逃げろ。おらん家でいいなら身を隠せ』
一か八かで私と白霜さまは、この前洞窟に来た猟師の老翁の家に身を隠しました。この老翁は、山の神様の眷属のことを知っていた。もしかしたらこのまま匿い、助けてくれるかもしれない。
「お前ん家に白い狼と白い兎、かくまってるべ!あいつらは化物だ!出せ!」
外では人間が雪崩のように押し掛けてきました。そのうち、野次馬だけではなく、武器や篝火を持った男衆が集まり出しました。
「おらん家は神様しかいねぇ。それに白い兎と白い狼はこの山の神様の使いだべ!眷属だべ!」
「うるせえ!爺!そんなの大昔の迷信だ!たかが猟師のくせに、山の麓にこんな小屋まで建てやがって。開けろ!そこをどけ!」
老翁は空を小さな窓から月を仰いでいました。月蝕は終わり、煌々と月は輝いています。
「ああ、勝手に見ろ!」
「化物めが!退治してやる!」
男衆が見たのは痩せた、肌の色が色がすけるほど白く、染み一つ無い、此の世の者とは思えないほど美しい白霜さまと私。
「ほら言ったべ」
男衆たちは、拍子抜けした様子で去っていきました。中には、こんな男もいて、
「酔いすぎて、幻を見たみてえだ。これ、鼈甲飴。子供だましで悪いけどよ」
…………………………………
私は親切な翁に、
「匿って貰ったお礼に私が死んだら毛皮を差し上げます。少しですが」
「華!」
「最後は貴方が終わらせて。食べて。私は貴方の血と肉となりあなたと生きる。自然の摂理よ。ただ私はどうしようもなくあなたが愛しいから、哀しいの。私がいなくなっても、生きて。貴方を、ずっと愛してる」
私は、涙を流し震える白霜さまの目元を白く痩せ細った頼りない指で優しく拭い、これ以上もなく笑ってみせました。
「泣かないで。不器用で優しい貴方を、いつまでも愛しているわ」
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