45 / 76
第8章
オオカミの願い
しおりを挟む
「取り敢えず、飲み物作ってくる」
谷崎の話した突然の祥介の話に、
秋彦は動揺しているようだった。
階段だと、お茶が運びづらいと思い、
階下に降りた。
奥の方でガサゴソしている。
「なにしてるんすか?」
「あのね、この前買ったのが、取れなくて」
「この瓶すね。っと。レモンですか?」
「ううん。柚子茶。韓国ではメジャーらしいけど。外国の食料品店で買ったんだ」
透明な耐熱カップ。
柚子のいい香り。
谷崎は秋彦との出逢いを思い出す。
「俺、持っていきます。熱いのは、階段じゃ危ない。一人分は良いですが、
二人分はきついですよ」
来客用のトレイを持ち、
谷崎はスイスイ歩く。
秋彦はそれでも、ゆっくり歩いてくれる谷崎の優しさが嬉しい反面、切ない。
意識しないと決めたはずなのに。谷崎は何も言わないけれど、谷崎の気遣い、優しさ、笑顔に癒される。
「柚子茶美味しいっす。クラッカーとかに塗って食べても。食パンでもいけそうですね。美味しいっすね。身体の芯が暖まりますね」
「あと、これ…柚子茶じゃ合わないけど、この前谷崎くんにレシピのプリントアウトしてもらったの見ながら、
プリン作ったんだ。ごめん、冷たいの。
折角柚子茶で暖まってもらったのにごめんね。僕、やっぱりドジだね」
苦笑する秋彦の谷崎は背中にポンポンと優しく叩き、
「俺、このやり方で冷やしたことないんです。食べましょ!」
と笑った。冷えても口当たりは良く、つるっ、ふわっとしていた。
「んま!」
「そう?『す』とか入ってなかった?」 「いえ。これ、茶こしとかで裏ごししてありますね?」
「うん。良く解ったね。すごいや」
「優しい味。先輩の作るものは気遣いが入ってる。…ご馳走さまでした!さて、問題の手紙を見ますか」
深呼吸をして、秋彦は封を切った。
谷崎の話した突然の祥介の話に、
秋彦は動揺しているようだった。
階段だと、お茶が運びづらいと思い、
階下に降りた。
奥の方でガサゴソしている。
「なにしてるんすか?」
「あのね、この前買ったのが、取れなくて」
「この瓶すね。っと。レモンですか?」
「ううん。柚子茶。韓国ではメジャーらしいけど。外国の食料品店で買ったんだ」
透明な耐熱カップ。
柚子のいい香り。
谷崎は秋彦との出逢いを思い出す。
「俺、持っていきます。熱いのは、階段じゃ危ない。一人分は良いですが、
二人分はきついですよ」
来客用のトレイを持ち、
谷崎はスイスイ歩く。
秋彦はそれでも、ゆっくり歩いてくれる谷崎の優しさが嬉しい反面、切ない。
意識しないと決めたはずなのに。谷崎は何も言わないけれど、谷崎の気遣い、優しさ、笑顔に癒される。
「柚子茶美味しいっす。クラッカーとかに塗って食べても。食パンでもいけそうですね。美味しいっすね。身体の芯が暖まりますね」
「あと、これ…柚子茶じゃ合わないけど、この前谷崎くんにレシピのプリントアウトしてもらったの見ながら、
プリン作ったんだ。ごめん、冷たいの。
折角柚子茶で暖まってもらったのにごめんね。僕、やっぱりドジだね」
苦笑する秋彦の谷崎は背中にポンポンと優しく叩き、
「俺、このやり方で冷やしたことないんです。食べましょ!」
と笑った。冷えても口当たりは良く、つるっ、ふわっとしていた。
「んま!」
「そう?『す』とか入ってなかった?」 「いえ。これ、茶こしとかで裏ごししてありますね?」
「うん。良く解ったね。すごいや」
「優しい味。先輩の作るものは気遣いが入ってる。…ご馳走さまでした!さて、問題の手紙を見ますか」
深呼吸をして、秋彦は封を切った。
0
あなたにおすすめの小説
両片思いの幼馴染
kouta
BL
密かに恋をしていた幼馴染から自分が嫌われていることを知って距離を取ろうとする受けと受けの突然の変化に気づいて苛々が止まらない攻めの両片思いから始まる物語。
くっついた後も色々とすれ違いながら最終的にはいつもイチャイチャしています。
めちゃくちゃハッピーエンドです。
【完結】大学で再会した幼馴染(初恋相手)に恋人のふりをしてほしいと頼まれた件について
kouta
BL
大学で再会した幼馴染から『ストーカーに悩まされている。半年間だけ恋人のふりをしてほしい』と頼まれた夏樹。『焼き肉奢ってくれるなら』と承諾したものの次第に意識してしまうようになって……
※ムーンライトノベルズでも投稿しています
《完結》僕が天使になるまで
MITARASI_
BL
命が尽きると知った遥は、恋人・翔太には秘密を抱えたまま「別れ」を選ぶ。
それは翔太の未来を守るため――。
料理のレシピ、小さなメモ、親友に託した願い。
遥が残した“天使の贈り物”の数々は、翔太の心を深く揺さぶり、やがて彼を未来へと導いていく。
涙と希望が交差する、切なくも温かい愛の物語。
異世界から戻ったら再会した幼馴染から溺愛される話〜君の想いが届くまで〜
一優璃 /Ninomae Yuuri
BL
異世界での記憶を胸に、元の世界へ戻った真白。
けれど、彼を待っていたのは
あの日とはまるで違う姿の幼馴染・朔(さく)だった。
「よかった。真白……ずっと待ってた」
――なんで僕をいじめていた奴が、こんなに泣いているんだ?
失われた時間。
言葉にできなかった想い。
不器用にすれ違ってきたふたりの心が、再び重なり始める。
「真白が生きてるなら、それだけでいい」
異世界で強くなった真白と、不器用に愛を抱えた朔の物語。
※第二章…異世界での成長編
※第三章…真白と朔、再会と恋の物語
【完結】ままならぬ僕らのアオハルは。~嫌われていると思っていた幼馴染の不器用な執着愛は、ほんのり苦くて極上に甘い~
Tubling@書籍化&コミカライズ決定
BL
主人公の高嶺 亮(たかみね りょう)は、中学生時代の痛い経験からサラサラな前髪を目深に切り揃え、分厚いびんぞこ眼鏡をかけ、できるだけ素顔をさらさないように細心の注意を払いながら高校生活デビューを果たした。
幼馴染の久楽 結人(くらく ゆいと)が同じ高校に入学しているのを知り、小学校卒業以来の再会を楽しみにするも、再会した幼馴染は金髪ヤンキーになっていて…不良仲間とつるみ、自分を知らない人間だと突き放す。
『ずっとそばにいるから。大丈夫だから』
僕があの時の約束を破ったから?
でも確かに突き放されたはずなのに…
なぜか結人は事あるごとに自分を助けてくれる。どういうこと?
そんな結人が亮と再会して、とある悩みを抱えていた。それは――
「再会した幼馴染(亮)が可愛すぎる件」
本当は優しくしたいのにとある理由から素直になれず、亮に対して拗れに拗れた想いを抱く結人。
幼馴染の素顔を守りたい。独占したい。でも今更素直になれない――
無自覚な亮に次々と魅了されていく周りの男子を振り切り、亮からの「好き」をゲット出来るのか?
「俺を好きになれ」
拗れた結人の想いの行方は……体格も性格も正反対の2人の恋は一筋縄ではいかない模様です!!
不器用な2人が周りを巻き込みながら、少しずつ距離を縮めていく、苦くて甘い高校生BLです。
アルファポリスさんでは初のBL作品となりますので、完結までがんばります。
第13回BL大賞にエントリーしている作品です。応援していただけると泣いて喜びます!!
※完結したので感想欄開いてます~~^^
●高校生時代はピュアloveです。キスはあります。
●物語は全て一人称で進んでいきます。
●基本的に攻めの愛が重いです。
●最初はサクサク更新します。両想いになるまではだいたい10万字程度になります。
【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている
キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。
今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。
魔法と剣が支配するリオセルト大陸。
平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。
過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。
すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。
――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。
切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。
全8話
お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c
勇者様への片思いを拗らせていた僕は勇者様から溺愛される
八朔バニラ
BL
蓮とリアムは共に孤児院育ちの幼馴染。
蓮とリアムは切磋琢磨しながら成長し、リアムは村の勇者として祭り上げられた。
リアムは勇者として村に入ってくる魔物退治をしていたが、だんだんと疲れが見えてきた。
ある日、蓮は何者かに誘拐されてしまい……
スパダリ勇者×ツンデレ陰陽師(忘却の術熟練者)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる