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待つしかできないこと〖第31話〗──①
しおりを挟む「俺が一番見られたくない姿を刺繍として残すのか。悪趣味だな。空。………面白い話をしようか。空と再会するまで今年だけで十五回見合いをした。黒い耳と尾を出しただけで、それまでニコニコしていた見合い相手が皆、後退りをして逃げたよ。耳と尾だけでだ!その俺に、空は刺繍としてよりによって黒い神獣の、忌まわしい姿を残すのか?狗の形をした狛犬の刺繍だけでも充分だろう!本当は、俺は白い毛並みが欲しかった!普通に幸せになりたかった!」
翠のような。と言う言葉は飲み込んだ。
翠の真っ白な毛並みに憧れた。大人たちは蒼が子供の頃解らないだろうと好き勝手言った。忌まわしい穢い色だと。耳と尾をだしていると
「穢らわしいからしまえ」
と言われ何度も尾を踏まれた。父が嫡男を自分に正式に決めるまで何度も爺の看病と解毒の世話になった。蒼の嫡子反対派閥、翠を次の当主に望む声は毒に姿を変えた。何もかもがこの黒い毛並みのせいだ。そう思い、まだ上手く耳と尾がしまえない頃、泣いた。
「そ、そんな……だって、
『俺の毛並みと同じ色で、狛犬の刺繍を縫って欲しいって、それで腕飾りを入れる袋を作るから』
って言って微笑ってたじゃない!だから、だから………ねぇ、どうして?皆がそうにいちゃんの色が嫌いだから?僕は好きなのに、それだけじゃだめなの?宵闇に光る蝶々に僕は見える。とても綺麗だよ。僕の『好き』は皆の『嫌い』に負けちゃうの?僕の好きだけじゃ足りないの?」
空の瞳に涙の膜が張る。睫に涙がたまっていくのが解る。
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