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父への思い〖第51話〗──①
しおりを挟む「温まったか?そろそろ、あがるか?」
「うん!」
神泉から上がり服を着る。ザクザクと凍った雪を踏みしめるが、空はくしゃみを繰り返す。
「寒いだろう、冷えてしまう。すぐに着く。乗れ、空」
狗の形になる。空を背に宙を駆けるとすぐに着いた。玄関前で人のかたちに戻り帰宅する。目のはしに提灯が見えた。空を部屋に先に行かせ、立ち尽くす人影を見つめる。
「父上?どうされましたか、そんな薄着で」
「白を……お前の叔父を私の棟の奥の離れに仮蟄居にした。結界が張ってあるのであそこでは術は使えん。お前には謝らないといけない。話を聞いて欲しい」
あまり蒼は父とは長く一緒に居たくない。苛々や圧迫感。負の感情ばかりを受けて帰る破目になることが多いからだ。
まあ、この前の空を前に頬を染める父は面白かったが。
あれよと流され、居間に通される。
「お前は柚子茶が好きだったな。私は焙じ茶が好きだ」
好みの記憶から幻術ではない。術の罠も感じない。なら何だ?回りくどいことが嫌いな父らしくない。
「あと少しだな。結婚前に私に言いたいことはないか?」
「いえ、別に」
「私はお前に謝らなければならないことがある」
珍しいことがあるものだ。父からの謝罪など聞いたことがない。まず、親が子に頭を下げるのを良しとしないひとだ。黙って柚子茶を飲む。甘くて美味しい。
「『このくらいで弱音を吐くようなら、当主は務まらん、鍛練だ』そう言ってきた。けれど、今になって、酷いことを強いてきたと解った。爺に『話しておきたいことがある』と言われ少し前に聴いた。三歳くらいの頃から『穢い色だ』と大人げない『大人に』尾を踏まれ、挙げ句、毒まで盛られて、必死で何十回も解毒して看病してきたと。知らなかった。いつも傷だらけだったのは、子供同士の喧嘩だと、思っていた。年端もいかないお前を『複数人』で殴ったり蹴ったりするとは、思いもしなかった。だが、何故言わなかった?何故頼らなかった?それに、毒を、盛られるとお前は『また鍛練と言われるから父上には言うな』と爺に口止めしたと。鍛練でも何でもない!どうして頼らなかった!」
目頭を押さえ父は頭を俯いた。嘲笑したくなった。今更何を?初めてこの人も『父』の役目をしようとしていることは解った。
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