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ぬるくなった柚子茶〖第52話〗──①
しおりを挟む茫然とする父の頬には涙が伝っていた。自責だろうか、過去を悔やんでいるのか、もう、解りたいとも思わない。
自分は絶対父のようにはならない。後悔のある育て方、愛し方はしない。澱んだ濁ったものが渦を巻く。けれど、このひとも家族だ。
「蒼、そ、そう、待ってくれ、許してくれ」
立ち上がろうとする蒼を引き留めるように指輪からひらひらと星影が現れた。父の肩に止まり動かない。パタパタとゆっくり羽根を動かす。空の言葉を感じる。
『少しだけでもいい。許してあげるのは苦しいから。お義父さんの謝罪を信じてあげて。ちょっとでもお義父さんといて幸せはあったんでしょ?』
とでも言われている気がする。
『愛されていないわけじゃない。愛してなかったら過ちを悔いない。確かに、自分が楽になりたいだけのひともいる。でもそうにいちゃんのお父さんは?違うでしょ?謝りたかったんだよ。父親として、これから新しい門出を迎えるそうにいちゃんに。悪いものはこれを機に捨て去って欲しかった。ただ真実は食い違ってた。つらいね。みんなつらい。許せない気持ちは否定しないよ。実際にそうにいちゃんは傷ついた。苦しかったんだね。悔しかったんだね。でも、そうにいちゃん、言葉だけでもいい。許してあげて。後悔する日が来たら嫌でしょう?明日なんて誰にも解らないから』
「ん?蝶々?こんなに寒いのに」
「ほら、離れなさい。父上が困っているだろう」
手をかざすと満足したように、蒼の指にじゃれる。
「よし、いい子だ。星の中にお帰り」
すうっと指輪の中に消えた黒く蒼い光を放つ蝶々。父は訝しむと言うより楽しんでいた。
「綺麗な蝶だ。名前はあるのか?」
「星影と」
「色がお前の毛並みの色と同じだな。綺麗だ。指輪に棲むのか。その指輪は星空だな。その子もその指輪を気に入る理由が解るな」
涙もそのままに父が笑う。
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