僕の宿命の人は黒耳のもふもふ尻尾の狛犬でした!【完結】

カシューナッツ

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宿命の星〖最終話〗*

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「………何考えてたの?そうにいちゃん?難しい顔して。お風呂だけは昔と同じ。二人の決まりごとでしょ?」
 
    そのために二重の内鍵と完全防音にした。
「空に見つめられるだけで、抱きしめられるだけで、どうして疲れがとれるのかなって、それだけだ」

    そう、蒼は言い、空を見る。

「そうにいちゃんが好きだから。元気になって欲しいって、抱きしめるんだよ」

「ここだけの秘密の言葉だな。空に『そうにいちゃん』って呼ばれる度に色んなことを思い出すよ。あいしてる。黒髪が、綺麗だな。何か不安はあるか?」

「ないよ。毎日が怖いくらい幸せ。僕も、あいしてる………」

    深い口づけをした。絡めて味わい尽くすように。奪うような口づけに、苦しそうに空は目をつむる。

「何か、あった?そうにいちゃん」

「解らない。仕事に、色々……モヤモヤして……すまないことをした」

    その言葉に空は微笑み「きて」と首に腕を絡めて空はやさしく触れるだけの口づけをした。

「どうなっても、責任はとれない。滅茶苦茶にしたい」

「好きにして。そうにいちゃんの、好きにして」

    大きな瞳が、自分だけを見つめている。綺麗な瞳が潤んでいる。やさしくなんか、出来そうにない。

「空、空、あいしてる」

    犯すように愛した。それでも空は感じていた。風呂場に反響する空のくぐもった声。蒼しか求めることを知らない甘い声は、蒼の色々なものを溶かしていく。

 どうしようもない感情のまま、空を抱いた。快楽を食みながらも、何度も何度も空は蒼を呼んだ。空は呼吸を乱しながら喘ぎ、ポロポロ泣いていた。それでも抱き合った後、蒼を抱きしめ、

「あいしてる。僕にはずっと、そうにいちゃんだけだから」

 と、空は掠れた声で言った。

「ごめんな………」

    蒼は自らの白の跡を湯で流し、蒼はうなだれた。

「俺は………与えられるだけだな」

「僕はそうにいちゃんから幸せをいつも貰っているよ」

    無理をさせて身体もつらいはずなのに空は笑う。

「どうしてだ?いつも思ってた。空はどうして責めない?恨まない?」

    少し考えた後、空は言った。

「正しいだけの、ひとはいないよ。僕も腹を立てたりするよ。けど、黒い感情は、どんどん育ってしまって、そのひと自身を見えなくさせる。そう言うのは嫌なの。それに、ひとだもの、間違う。山神さま、お父さんも間違うくらいだもの」

    清らかさと美しさ。山神さまの子、か。蒼は、空を抱きしめて言った。

「ごめん。今から子供みたいなこと言う。最近、光は可愛いけど嫉妬する」

「光に焼きもち焼いてたの!?」

    驚いたようにそう言い、空は苦笑いをした。空はそれから蒼をじっと見つめた。段々と表情が、切なげにほどけていく。

「そうにいちゃん……僕はそうにいちゃんだけ。光も勿論可愛いけど、恋とは違うから。そうにいちゃん、あいしてる。何回でもそうにいちゃんが足りるまで言ってあげる。初めて会ったあの日から、僕はずっとそうにいちゃんだけなんだよ?」

    空はポロリと大粒の涙を零し、微笑んだ。

「俺も、空だけだ。ずっと。……ごめんな、無理やり抱いて。苦しかっただろ。それに、初めて会ったあの日、俺は善意じゃなかった。善意の皮を被った悪意だった」

「悲しい顔しないで。穢い傷だらけの泥だらけの僕を見つけてくれて、助けてくれて。そうにいちゃんは『善意じゃない』って言うけれど、僕は救われたの。家族以外にお母さん以外に、誰かを愛することをあのとき知ったんだよ」

「………ありがとう」

    涙を浮かべ、何処か不思議そうな顔をする空を、蒼は力一杯抱きしめる。蒼は潤んだ声で『ありがとう』を繰り返した。

────────────────

    二ヶ月に一度、星影には活躍してもらっている。

『父さん、今日の星の日です。見にいらして下さい。叔父上も一緒に』

    伝書鳥を飛ばす。暫くして父が叔父をつれてやって来た。翠も家族で来てくれる。桃は光にお熱だ。

    父は叔父を伴い嬉しそうな顔で、皆に小さな贈り物を渡す。

「これは光に」

 綺麗な巾着には色とりどりの金平糖が入っていた。

「これは空さんに」

    渡されたのは、沢山の珍しい色が入った刺繍糸だった。

「これはお前に。空さんと食べなさい」
   
 自分の袋には小さな薄荷の飴が沢山入っていた。

「爺にはこれだ。星空を見ながら食べるのも良い。蒼、空さん、光をいつもありがとう」

    最後に渡された爺の弁当箱の中身は蜜柑じゅうすの寒天だった。

    戌の刻、暖かい部屋の中で星空を見る。指輪からひらひらと星影が出でて、舞う。いつの間にか星空に吸い込まれるように眠りについた光を抱きしめながら、

「綺麗だな、空」

「変わらないね、そうにいちゃん」

    小さな声で一番後ろの席で話す。そっと口づけをした。光の手前、皆が集まる部屋で口づけをするのは久し振りだった。でも、この暗闇の中でくらい、いいだろう。薄荷の味がした。いつまでもこの穏やかなこの時間が続けば良いと思った。空の首筋の金の鎖をなぞる。

「憶えているか?」

「うん」

「俺には、空と光がいればいい。何かあったら迷わず呼んでくれ。すぐに行くから」

    空は笑う。変わらない笑顔で、今、傍にいる。何より美しい、蒼の最初の恋、最後の愛。そして、頭上には、蒼と空の歩んできた軌跡の星空。1つ輝く宿命の星。


─────────────《完》
                                   
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