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神獣の姿〖第19話〗──②
しおりを挟むそれでも、蒼のためには、離れなければならないと舞う紅葉の中で漠然と思ったことも。空の中に色褪せることなく。あの半年があった。幸せがあった。指を折って数えてきた。蒼との再会を夢見て。だから生きてこれた。
蒼が空を覚えていないときは悲しかったけれど、やはり、蒼は蒼のまま。優しくて、変わらない『そうにいちゃん』だった。
でも、いない。空は必死で金の笛を吹いた。傍に居て欲しかった。また、会えなくなるのかと不安だけが空を胸の中をよぎった。
「もう、待つのは嫌だよ。飛んで来てくれるって行ったのに。嘘つき、嘘つき……これ以上待てないよ。十五歳になったのに……」
障子の外でガタンガタンと風が騒いだ。何か大きなものの気配がして、空は身構える。
「……だ、誰?」
「ちゃんと、飛んで来たよ。こんな姿ですまない。答えは、見つけたよ。空を忘れて、怪我をさせて、酷いことをした。五年も、待たせた。本当にすまない」
障子には何か大きな影がある。
「そう、にいちゃん……? 待ってたよ。ずっとずっと、待ってたよ。……でも、もう本当は諦めかけてた。答えも見つからないと思ってた。でも、そうにいちゃんは変わらないね。ずっと、優しいまま。そうにいちゃん。会いたかったよ。ずっと、会いたかったよ」
空の睫毛に涙がたまる。あっという間に溢れて落ちた。
「まだ、障子は開けないでほしい。この姿は……空には見せたくない」
「どうして?そうにいちゃんなんでしょ?どんな姿でも、そうにいちゃんでしょ?」
「………好きにしろ。でも、後悔するぞ」
空が障子を開ける。神獣の姿とはいえ、見た目はただの大型の真っ黒い狗だ。耳や尾だけがあるのとは違う。驚くか、怖がられる。嫌われたくない。空に怯えられたくない。こんな姿……。他の動物の前ですら見られたくない漆黒の毛並み。皆怯えて逃げる。空は自分をどう思うだろう。
怖々盗み見るように空に目をやる。目が合うと空は、まるく微笑んだ。
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