氷雨と猫と君〖完結〗

カシューナッツ

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〖第42話〗

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 始まったばかりなのに終わりを考えておくのは私が臆病で卑怯だから。『そう』なった時のための、傷つかないための予防線を張る。私は夜中、真波を起こさないようにベッドを抜け出し、キッチンで冷たいカルキ臭い夜中の水を飲んだ。
「もう、誰も置いていきたくない………。置いて行かれるのも、嫌よ」

──────────

 真波と暮らしてから、世界が明るくなった。それと同じくして前々から街に灯された街の明かりがクリスマスに日に日に近づいているせいか、更に彩りを増した。会社帰りのイルミネーションが冷えた透明な空気に綺麗に映る。息が白い。

 細かい闇に浮かぶ霧のようだ。冬だなと思い、帰りに食べきりサイズの焼き芋や、鯛焼きを少しだけ買っていったりする。仕事は、家に仕事を持ち帰りたくもないし残業も嫌なので、会社で仕事を片付けてしまいたいと、だいふくとおはぎと真波の『おかえり』の顔が浮かび、作業効率が飛躍的にアップした。

 彼を毎日好きになる。時間は過ぎていくのに、私の想いはまるで恋に不馴れな、拙い少女の恋愛のそれのようだと思う。勿論、自分のルーティンは崩さない。おはぎとだいふくと遊ぶのも変わらない。そこに真波も加わり、二匹もそれを歓迎している。

 その他の時間は全部真波だ。眠る時、真波は私を守るように抱きしめて、腕を絡めて眠る。私は子供の頃に戻ったように、暖かで安心する。

「美雨さん、髪長いね。いい匂い。いつも上げてるから解らないけど、さらさらで指に絡めると安心する。長毛種の猫みたいだ」

「猫? ありがと。嬉しいよ」

 真波の懐から顔を出すと、彼は穏やかな眼差しで私を見つめる。彼のいつもの顔。私を見つめる目差しは、穏やかで温かい。

「ん? どうしたの、真波」

「『真波くん』から、卒業できたなって。最初は美雨さんが感情的になった時だけ『くん』がとれるくらいだった」

「そうね。名前を訊いたきっかけは真波を強姦魔扱いした時だったわね」

 私がそう言うと、『うん、憶えてる』と真波は苦笑した。
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